ダンジョンの持つ役割が描かれる第4話
アニメ『ダンジョン飯』は劇場にて3話分が先行上映され、そこではキャストやスタッフが登壇するなど話題を呼んだ展開がなされた。そして、2024年1月25日に放送と配信がされる第4話「キャベツ煮/オーク」は先行上映されたエピソードの次を描くことになる。そのため、第4話にはより一層注目が集まり、期待が高まる。
本記事ではそのような注目の集まるアニメ『ダンジョン飯』第4話「キャベツ煮/オーク」の解説と考察、感想を述べていこう。なお、本記事には『ダンジョン飯』第4話「キャベツ煮/オーク」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
ダンジョンの構造に注目
動く畑
ライオスの持つ「足音で魔物か否かを聞き分けることができる」能力は、ライオスの魔物好きが高じたものであり、原作の『ダンジョン飯』ではマルシルから不気味がられてはいるが、便利なものとして解説されている。そのような魔物好きで、動く鎧でも食べようとするライオスが食べずに避けようとするのがゴーレムだ。
ゴーレムとはユダヤ教の伝承に登場する存在で、ヘブライ語で胎児を意味する。律法学者ラビによって生み出され、召使いのように扱われる存在である。作り方も伝承の中で解説されている。そこではがラビが断食や祈祷などの神聖な儀式を行った後、土をこねて人形を作り、呪文を唱えてヘブライ語で「真実」と書かれた羊皮紙を額につけることで完成すると言われている。
ゴーレムを壊すときはこのコアとなる羊皮紙を切り、ヘブライ語の「真実」という単語からヘブライ語で「死」を意味する単語に書き換えれば良いと解説されている。これは旧約聖書における最初の人類アダムが土から創り上げられたものを模しているとも考察されている。16世紀後半のプラハではイェフダ・レーヴ・ベン・ベザレルがユダヤ人を守るためにゴーレムを創り出したとも言われている。
そのようなゴーレムだが、人間がアダムの創造に似た神のまねごとをしているということから、人間の傲慢さの象徴ともされる。ゴーレムを壊そうとするときに、崩れたゴーレムに巻き込まれて死ぬという伝承も残されている。そのような戒めは『ダンジョン飯』にも残されており、センシがゴーレムから掘り出したコアがその例だと考察できる。
『ダンジョン飯』の世界において、ゴーレムはかつて日常的に使われていたが、今では使用は禁止されている。その理由はセンシが埋め直していたコアにあり、ゴーレムの行動すべてを記したコアの文字がエルフ語とノーム語が混じり、暴走したことがあったと「モンスターよもやま話」で解説されている。このようなITエンジニアの苦しみのようなものが魔法使いたちにもあり、ゴーレムの使用は禁止された。
センシの役割
ゴーレムの肥料のためにセンシはダンジョンのトイレを掃除し、その糞便を肥壷に移していた。センシ曰く、ゴーレムは最初こそ10体ほどいたが、いまでは太郎、次郎、三郎の3体にまで減ってしまったという。
ゴーレムがいなくなれば下層のより強力な魔物が現われ、ダンジョンは混乱に陥る。それ以外にも便所に落ちたゾンビを掃除し、倒れたゴーレムを立ち上がらせるなどセンシがこのダンジョンを管理する上で重要な役割を担っていることがわかる。また、ここでダンジョン内の宝箱の金貨は勝手に湧いたものではなく、センシの無人販売所だったことも明らかになる。
物々交換
センシが物々交換していた相手とは地上で暮らせない種族であるオークだった。深層で暮らしているはずのオークが浅い階層まで上がって来た理由は、オークの集落の付近に炎竜〈レッドドラゴン〉が出現したせいだった。炎竜〈レッドドラゴン〉のせいでピリつくオークたちの野営地までセンシが向かった理由はパン作りだ。
エルフや人間、オークの間には埋めがたい溝と戦争の歴史があることが解説される。オークたちからすれば、冒険者たちは侵略者であり、冒険者たちからすればオークはかつての敵対者であった。エルフとオークでは美醜の感覚にも差があり、マルシルのことを野蛮な顔立ちと評している。
しかし、ライオス曰く鼻筋、歯並び、乳房、尻の形など部分ごとの感覚では人間と同じとのことだ。ライオスのこの考察は結果としてコミック巻末の「モンスターよもやま話」でオークの長を怒らせることに繋がったが、オークと地上の人々の溝を埋める一歩にはなった。この奇天烈な手法で他者と距離を詰めるのがライオスの特徴だ。
また、アニメ版『ダンジョン飯』ではマルシルが最後にオークの子供に話しかける場面が追加されており、調理と料理を通して対立していた種族同士に和睦の兆しが見える結末となっていると考察できる。
第4話の感想と他のパーティーにスポットライトが当たる第5話
センシのダンジョン内での役割、そして『ダンジョン飯』の世界における種族間の対立など、『ダンジョン飯』におけるダンジョンが持つ意義が掘り下げられた第4話『キャベツ煮/オーク』。『ダンジョン飯』では珍しく魔物の食材がバジリスクのベーコンしかなく、実在のレシピがクローズアップされている。このテンポで物語が進むとしたら、第5話はカブルーたちのパーティーにスポットライトが当たると考察できる。
ライオスたちとは違い、オークの語るような「別の目的」をもってダンジョンに潜るカブルーたち。そのようなカブルーたちとすれ違うことで、ライオスたちの置かれた境遇やダンジョン全体がもたらす街への影響などが描かれることになると考察できる。第5話にも期待していきたい。
アニメ『ダンジョン飯』第4話「キャベツ煮/オーク」は2024年1月25日(木)22:30より放送と配信が開始。
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