冒険者たちの目的とは?
第4話「キャベツ煮/オーク」で、地底で暮らすオークと地上で暮らす人々の確執を描き、世界観を掘り下げたアニメ『ダンジョン飯』。第5話「おやつ/ソルベ」ではデザートだけではなく、ライオスとは異なる目的を持つパーティーを描き、冒険者たちの目的とは冒険者とは何者なのかが掘り下げられる。
劇場先行公開の先にある『ダンジョン飯』の世界観の奥深さを描いたアニメ『ダンジョン飯』第5話「おやつ/ソルベ」。本記事ではそのようなアニメ『ダンジョン飯』第5話「おやつ/ソルベ」の考察と解説、感想を述べていこう。なお、本記事ではアニメ『ダンジョン飯』第5話「おやつ/ソルベ」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
以下の内容は、アニメ『ダンジョン飯』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
カブルー一行とライオス一行
宝虫とケン助
妹であるファリン・トーデンを救うためにダンジョンに潜っているライオス一行とは異なり、カブルー一行は狂乱の魔術師シスルを倒すという明確な目的を持っていた。カブルーは故郷の周辺にダンジョンが発生したことで故郷の村が滅んだ経験があり、金剥ぎや金銭目当ての冒険者とは異なる境遇の持ち主だ。ある意味ではライオス一行よりも主人公らしいパーティーだと考察できる。
そんなカブルー一行とライオス一行が出会ったのは、カブルー一行が宝虫によって全滅したところだった。宝虫は昆虫類の魔物で、宝に目がくらんだ人間の欲深さを試す魔物だ。コイン虫やネックレスに擬態する真珠ムカデなどが存在しており、現実の蝶と同じく、コレクターがいる。コレクターの間で宝虫は高値で取引されることがある。食文化においても現実の昆虫食と同じ扱いがされており、マルシルの反応は現実めいたものだと考察できる。
また、ここで動く鎧の一部であったケン助が宝虫に威嚇行動を示しているとライオスは考察している。魔物たちは皆、狂乱の魔術師シスルの配下にあるが、ライオスが第1話「水炊き/タルト」でも解説した通り、狂乱の魔術師シスルの命令以前に魔物たちは生態系に基づいて行動している。
コミック巻末の「モンスターよもやま話」で宝虫はミミックなど他の擬態系の魔物を捕食し、そして宝に目がくらんだ人間によって新天地に運ばれる習性があると解説されている。そのため、動く鎧も捕食対象だった可能性があり、それでケン助が威嚇行動を示したとも考察できる。
心霊現象
幽霊たちに襲撃されるライオス一行。幽霊が冷気を発するというのは現実でも伝承として多く残っている現象だ。ここでファリンがかつて幽霊に対して非常に高度な魔法で対処していたことが解説される。ファリンは他の冒険者と異なり、幽霊に対して敬意を持って対処していたことが考察できる。その優しさはかつて共にライオスと冒険していたドワーフの戦士ナマリから一種の甘さだと指摘されている。
幽霊は肉体という器を持たない魂だけの存在であり、新鮮でまだ温かい死体に取り憑く。そして、その死体はグールとなり、肉も腐り落ちるとスケルトンになる。そして骨も朽ち果てると幽霊に戻り、また肉体という器を求めて彷徨い続ける魔物だ。このことからもわかる通り、他の魔物とは異なり本来は人間である。この過程をモンスターよもやま話でライオスは発酵に似ていると考察している。
死体回収屋と蘇生屋が存在する『ダンジョン飯』の世界では忘れがちだが、センシも解説した通り、人間は死から逃れることはできない。幽霊の大量発生は狂乱の魔術師シスルによって死が禁じられたダンジョンならではの現象だと考察できる。
一部、ダンジョンの外でも幽霊は発生するようだが、それも稀で司祭や墓守がそれを防ぐと『ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル』で解説されている。しかし、ライオスの故郷では墓守は蔑まれており、ライオスが故郷に息苦しさを感じて冒険者になった理由の一端にもなっている。
万国共通の魔除け
マルシルが解説した通り、幽霊を祓う霊術は高等技術である。そこに加え、世界各地の文化によって魔除けとなる聖なるものはことなる。除霊とは素人がどうにかできるものではない。そこでセンシが考え付いたのが、世界各地で聖なるものとして扱われているものを集めて、一つにしてしまおうという作戦だった。
黄金の甲虫(スカラベ)を崇めるのは古代エジプト文明などで多く見られた信仰だ。古代の人々は甲虫(スカラベ)やフンコロガシが動物の糞を転がす様子を太陽の動きに見立て、再生の象徴として信仰した。その信仰心から頭が甲虫(スカラベ)の太陽神ケプリも存在している。センシはその代用品として宝虫のジャムを用いている。
酒が神聖なものなのは日本でも馴染み深いと考察できる。神酒という概念が日本には存在している他、イエス・キリストの奇跡の1つに水をワインに変えたというものがある。酒は発酵の過程でアルコールが発生するため、綺麗な水が手に入らなかった時代では真水より安全な飲み物として重宝された。それが神聖さに繋がっていると考察できる。
塩は東西問わず魔除けの品として扱われているが、足りないので砂糖を代用品としているあたりがセンシの料理以外に興味のない性格を感じさせる。また、この魔除けの使い方もセンシお手製の聖水を瓶に詰め、振り回すというものだ。そのやり方もセンシの豪快な性格を感じさせてくれる。
本日のレシピ
真珠ムカデの串焼き
1. 触感が悪いので足をもぎ取る。
2. 串に巻き付かせるように通す。
3. 火にかける。
コイン虫のせんべい
1. フライパンで油を熱する。
2. コイン虫の腹側を下にして加熱する。
3. 塩を適量加え、かき回して油を回す。
4. 焼きあがったら背中を上側にして並べる。
宝虫の巣のジャム
1. 宝虫の巣であるティアラから卵と幼虫を取り除く。
2. 他の宝石に擬態する宝虫を鍋に入れ、水を少し加える。
3. 巣のティアラを砕いて一緒に煮詰め、味をみて、砂糖を加えて調整する。
厄除け祈願! 除霊ソルベ
1. 水に宝虫の巣のジャムを入れる。
2. リキュールを少し加える。
3. 塩を一つまみ加え、砂糖を気持ち多めに入れる。
4. ミントを入れる。
5. 干しスライムを削っていれる。
6. 火にかけて煮詰める。
7. 瓶に詰めてしっかりと栓をして縄を結び、幽霊にぶつける。
第5話と狂乱の魔術師シスルにせまる第6話
豪快な性格のセンシですら引かせてしまうほど言葉足らずなライオスの姿を、人間関係の構築がうまいカブルーと対照的に描いた第5話「おやつ/ソルベ」。第6話ではこのダンジョンを生み出した元凶である狂乱の魔術師シスルの実像に迫る「動く絵画」や、チルチャックの人生が垣間見える「ミミック」がアニメ化されると考察できる。
ダンジョンの深層に潜るにつれ、世界観だけではなく、各人物像も掘り下げられていくのが『ダンジョン飯』の魅力の1つだ。特に「動く絵画」では冒険者たちがダンジョンに潜る理由である黄金の都とその王国の秘密の断片が解説される。第6話にも期待していきたい。
アニメ『ダンジョン飯』第5話「おやつ/ソルベ」は2024年2月1日22:30より放送と配信が開始。
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