【ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第10話 民族浄化に抗い、社会に抗う【あらすじ・レビュー・感想】VG+ (バゴプラ) | VG+ (バゴプラ)

【ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第10話 民族浄化に抗い、社会に抗う【あらすじ・レビュー・感想】

©️2020 TRIGGER

残り3話に迫った『BNA』

TRIGGERが製作し、フジテレビ「+Ultra」枠で放送されているアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』。Netflixでは全12話が先行配信されており、社会性の高いテーマ、音楽、作画、声優など、様々な面で人気を集めている。

獣人たちが住むアニマシティを舞台に展開されてきた『BNA』、いよいよ話数も二桁になる第10話目を迎える。第9話「Human Scapegoat」では、遂にみちるとなずなの物語に大きな進展が見られたが、第10話「Rabid Wolf」では衝撃の展開が待っている。今回は第10話「Rabid Wolf」のあらすじを紹介し、ネタバレありで解説しよう。

第10話「Rabid Wolf」のあらすじ

明らかになる“歴史”

アニマシティでは、些細なことで凶暴化する獣人が増えつつあった。みちると士郎は協力して獣人たちの暴走を抑え込んでいたが、暴走獣人に薬品を注入する兵器が登場。瞬く間に暴走獣人を回収してしまう。みちると士郎は兵器を追いかけ、その拠点がメディセンであることを知る。ロボットたちは、シルヴァスタ製薬の会長・アランが送り込んだ獣人保護マシン ”エンゲルマシーネ”だったのだ。

士郎はその臭いから、メディセンの研究所には人間しかいないということに気づく。アランから弁明を受けたみちると士郎だったが、士郎はエンゲルマシーネがみちるをも狙っていたこと、発射されたのが実弾だったことを指摘する。アランは部下のミスだったとして謝罪するが、士郎はアランがアニマシティで何を企んでいるのかを問い詰める。そして、アランの口から語られたのは、思わぬ“歴史”だった。

アラン曰く、アニマシティはこのままではニルヴァジールと同じように滅びてしまうという。ニルヴァジールとは士郎の出身地であり、第8話では人間によって獣人のホロコーストが行われた場所として語られていた。士郎は虐殺を指揮した将軍を探し続けたが見つけ出すことはできなかった。だが、アランはその将軍の名が“レイモンド・シルヴァスタ”だということを告げる。その将軍は、アラン・シルヴァスタの先祖だったのだ。

“ニルヴァジールシンドローム”と民族浄化

怒りを燃え上がらせる士郎に対し、アランは、ニルヴァジールで人間は獣人を襲ったわけではなく、獣人から身を守っただけだったと話す。人間の軍隊が到着した時にはすでに獣人同士が殺し合っており、人間はトドメを刺しただけだったと。アランは士郎が銀狼だということを知っており、士郎に語りかけて、獣人が獣人を襲っていた当時の記憶を呼び起こす。曰く、獣人は多種族が集まって生活するとその生存領域を侵されるストレスによって暴走するのだという。

アランはこの症状を“獣因子暴走症候群”=“ニルヴァジールシンドローム”と呼ぶ。アランの目的は獣因子を分析し、アニマシティでニルヴァジールシンドロームが発生するのを防ぐことだったと主張する。ロゼ市長はアランからこの計画についても知らされていた。獣人の権利と平穏のために作り上げたアニマシティが獣人たちの暴走を生むかもしれないという事実に、無念さをあらわにしていた。

アランはニルヴァジールシンドロームのワクチンを作ろうとしているというが、それは獣人を人間にする薬のことだった。獣因子消滅ワクチン——民族浄化というわけだ。そう、そのワクチンはみちるとなずなの獣人病を“治す”薬でもある。

この話を聞いた士郎は「獣人が獣人であることを捨てろというのか!」と激怒する。アランに襲い掛かった士郎は麻酔弾を撃たれながらも獣人たちの運命を「人間に決められる筋合いはない」と研究所を破壊し始める。みちるはそれを止めようとするが、士郎は獣人たちが人間の手によって人間にされるということに強く抗議する。

皆が生き延びる道を見つけ出そうとするみちると士郎は口論になり、みちるは士郎に「1000年間で恨みが凝り固まっただけ」と強い言葉を投げかける。警察が到着し、器物破損の現行犯で逮捕されそうになる士郎だったが、窓ガラスを突き破りメディセンを逃げ出す。

士郎、ロゼ、なずな、各々の動き

残されたみちるは、アランからなずなの手助けをしてほしいと頼まれる。家に帰ったみちるは待っていたなずなと話し合う。なずなはみちる同様「生きていれば人間とか獣人とか関係なくない?」と楽観的だが、みちるは士郎がそう思えないということを理解していた。

そしてなずなはアランから獣人たちのストレスを和らげるためにライブを開催するよう頼まれていた。なずなは、みちるにアニマシティの全地域に配信されるこのライブのセットリストを一緒に考えてほしかったのだ。「本物のアイドルになる」と心を踊らせるなずなは、ライブを成功させることでアニマシティを救うと意気込む。

士郎は指名手配されるもロゼ市長に呼び出され、秘密裏に会談を持っていた。ロゼは「獣人のままなら死んでもかまわない」と言える獣人ばかりではないと、アランの計画への理解を示す。だが、非獣人化計画の代替案として、アニマシティの解体を考えていた。アニマシティに寄り集まってきた獣人たちを再び日本各地に分散して受け入れてもらおうというのだ。

この計画が完遂される前にニルヴァジールシンドロームが暴走を始めた場合、獣因子消滅薬の使用を認めるという。食い下がろうとする士郎だったが、その表情から、ロゼが苦渋の決断を下していることを悟る。士郎は自分のやり方でこの事態を解決することを決意する。そして、ギャングのボス・フリップが士郎の前に現れ、士郎はギャングに合流する。

次の日、ロゼは日本の白水総理と面会していた。現段階で人間と獣人の相互理解は不十分であるため、秘密裏に獣人たちを日本各地に分散させることを依頼するロゼ。だが、白水は「アニマシティから獣人を出すわけにはいかない」、ニルヴァジールシンドロームについては既に手を打ったと告げ、ロゼを「保護依頼が来ている」として包囲する。

一方、電話を受け、総理へ感謝の言葉を告げたのはアランだった。

第10話「Rabid Wolf」の解説

民族浄化に抗う士郎

『BNA』もいよいよ残り3話となったところで獣人に関する衝撃の情報が明らかになった。アランの言う通りであれば、獣人たちには多種族が密集すると発症するニルヴァジールシンドロームという疾病が生まれつき備わっているという。第8話「The Mole Rat Speaks」で明らかになった“ニルヴァジールの虐殺”も元はと言えば暴走を起こした獣人同士が殺し合いを始めたことが原因だと、アランは主張する。

一方で、ニルヴァジールシンドロームをなくすために獣人たちの獣因子を消して人間にしてしまおうというアランの計画はあまりにも暴力的だ。人類が歴史的にマイノリティに対して行ってきた民族浄化を想起させる。民族浄化は、自分たちの社会にとって民族的少数者が少しでも危険があると判断した場合には、数や権力、資本の力でその存在をなかったことにしてしまおうとする人間の病でもある。

また、人口の密集が起きた時にそれを避けようとする機能は決してネガティブなものではないだろう。種として生存できる確率が上がる機能だとも言える (現に私たちは“密”を避けて生活することになった) 。例えそれが短所になり得る一面を持っていたとしても、その存在ごと失くしてしまうという考え方はあまりにも横暴だ。

それに、隠れて生活してきた獣人が人間の世界に出て来ざるを得なくなった理由は、元はといえば人類が自然を切り開いたことが原因だ。更に同意もなく他者のアイデンティティを奪うということもあってはならない。アランの邪悪な発想に対し、士郎は激怒する。

一人でも抗う

政治家として次善策に取り組むロゼは、アランの企みに翻弄され、人類の代表である白水総理に裏切られてしまう。士郎は法に則って闘うことを諦め、指名手配を受けながら獣人社会のためにこの状況を打開しようと単独行動を始める。

常に社会や法律が正しいというわけではなく、キング牧師や多くの社会運動家がそうであったように、時には法を犯してでも守るべきものがある。その姿勢は、現在アメリカで起きている人種差別への抗議運動とも重なる。時代とともに権力者が移り変わっていく中で、士郎は1000年以上生き延びてきた。何が正義であるかは自分の頭で考えて決めてきたはずだ。

そんな士郎に対して、みちるは「1000年で恨みが凝り固まっただけ」と強い言葉を投げかけた。1000年で恨みが凝り固まることは相当な歴史の積み重ねであり、「だけ」ということはないはずだ。なずなも「生きてれば関係なくない」と、その認識は軽い。だが、みちるはその“軽さ”を客観的に受け止めた時に「士郎さんはそう思えないんだよ」と、ようやく他者性 (=自分と他者は違う考えや感覚を持っているという認識) を獲得する。1000年の歴史を生きてきた士郎だから見える世界も存在するのだ。

アランの民族浄化計画を前に、士郎はどのような行動に出るのか。そして再び亀裂が入ったみちると士郎は再び手を結ぶことはできるだろうか。『BNA』の物語はいよいよクライマックスに突入する。

アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』はフジテレビ「+Ultra」他で放送中。

『BNA ビーエヌエー』(Netflix)

Netflixでは全12話を先行配信している。

『BNA ビーエヌエー』(Netflix)

『BNA』第11話のあらすじは以下の記事から。

『BNA』全体のあらすじについては以下の記事に詳しい。

『BNA』で使用されている音楽については以下の記事から。

『BNA』に出演している声優陣については、以下の記事から。

齋藤 隼飛

1991年生まれ。
社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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