【ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第7話 ピンガが求める権利の正体【あらすじ・レビュー・感想】 | VG+ (バゴプラ)

【ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第7話 ピンガが求める権利の正体【あらすじ・レビュー・感想】

©️2020 TRIGGER

後半戦に突入する『BNA ビー・エヌ・エー』

フジテレビ「+Ultra」で放送されているアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』は、『SSSS. GRIDMAN』(2019) などで知られるスタジオ・TRIGGERの最新作。同作では、各話ごとに社会性の高いテーマを据えた物語を展開してきたが、テレビ放送ではいよいよ第7話が放映され、後半戦に突入する。


バゴプラでは、第5話の「貧困」や第6話の「宗教とアイドル」など、各話のあらすじと共にそのテーマに迫ってきた。急展開を見せた第6話「Fox Waltz」の解説は以下のリンク先からご覧いただける。

今回は、第6話「Fox Waltz」に続いて、またもや重要な新キャラが登場する第7話「Easy Albatross」のあらすじとテーマを見てみよう。

第7話「Easy Albatross」のあらすじ

アホウドリ獣人ピンガ登場

大空を優雅に飛ぶアホウドリ獣人のピンガ。航空自衛隊から領空侵犯で警告を受ける。国際渡り鳥条約は、獣人には適応されないらしい。その頃、主人公のみちるは、前回なずなが見せた態度に腹を立てていた。と、そこに嵐に巻き込まれたピンガが墜落する。

みちるに介抱されたピンガは回復し、ジェムに獣民登録を勧められるが、自分は渡り鳥だからという理由でこれを断る。みちるは、空を飛べるピンガを羨ましがり、ピンガの背中に乗って大空を飛ばせてもらうことになる。

一方、市長のロゼは銀狼教団について調査を続けていた。銀狼教団は元はおとなしい宗教団体だったが、クリフ・ボリスの加入後、急速に拡大したのだという。銀狼教団の定住を許可したロゼだが、そこに現れたシルヴァスタ製薬の会長・アランが教団の定住許可を覆してしまう。

その理由は、「反獣人派を刺激する」というもの。この頃、獣人の人権活動に取り組んできた議員や活動家、ジャーナリストたちが各地で襲撃を受けているのだという。アランは、未確認飛行獣人がアニマシティに侵入したことにも言及し、アニマシティへの支援打ち切りをチラつかせて銀狼教団の定住許可を破棄するよう脅しをかける。今後メディカルシティを自身が直接管理することを告げ、その場を去るのだった。

渡り鳥獣人問題

その頃、みちるはピンガの背中に乗って大空を飛び回っていた。風の捕まえ方は「獣人なら身体で覚える」と語るピンガ。先祖代々渡り鳥として“渡り”をやって生きてきたというが、獣人達に人権が認められると、渡りが禁止されたのだという。鳥の獣人たちも国境を越えるためにはパスポートを取って出入国の手続きを取らなければいけないのだ。

渡りのルートは渡り鳥獣人たちの身体に染み込んだ。だが、ルールを無視して渡りをしようとした仲間達は人間たちに撃ち落とされてしまった。「獣人に人権」と言っても、実際には人間が作ったルールに獣人が合わせるという話なのだ。ピンガは「それほど偉いのかね、人間ってのは」と吐き捨てる。

遊覧飛行を終えたピンガは、みちるに礼をして再び大空に帰る。反獣人権運動のテロリスト鳥獣人がアニマシティに侵入したという情報を得た士郎は、みちるにその懸念を伝える。だが、みちるは、「獣人が人権を持っても幸せになるとは限らない」という事実を知ったことで、ピンガに同情的だ。二人はピンガに対する嫌疑の真偽を確認するべくピンガを捜す。

バーで封筒と引き換えに何かを受け取ったピンガは、ロゼ市長が銀狼教団の受け入れを拒否したというニュースを目にしていた。銀狼ことなずなはこの決定に対して信者を率いてデモンストレーションを行う。

ピンガの目的は

そしてピンガは、ロゼ市長のいる市庁舎めがけて空から突撃しようとする。その動きを察知していた士郎はピンガの飛び乗りこれを阻止する。それでも、ピンガは士郎を振り落とすことに成功。これを助けようとしたみちるは火事場の返信能力を発揮し、飛行能力を獲得、士郎を助け出す。なんとかピンガを抑え込んだ二人は、ピンガがかつては獣人の人権活動に取り組み、結果渡りができなくなってしまったという過去を聞く。

だが実は、ピンガの持っていた爆弾は偽物。話を聞かせるためのハッタリだった。士郎は「お前はまだ何もやってない」とピンガを見逃すことを告げる。ピンガは、みちるに戦争や人間との権利闘争に巻き込まれて死んでいった戦友たちのドッグタグを渡し、この獣人たちの墓を作るようロゼ市長に伝えることを依頼する。

そして、ピンガはもう一人、鳥の獣人がアニマシティに紛れ込んでいることを告げる。金をもらえばなんでもすると言うその獣人の名はメテオール。ドリンク屋でアランにドリンクを売っていた獣人だ。メテオールは銀狼教団と面会しようとしていたアランを上空から連れ去る。

と、ここでなずながその姿を“翼ある銀狼”に変え、アランを救い出す。クリフ・ボリスが銀狼を讃える中、ピンガと士郎は享禄してメテオールを捕獲する。市民の歓声に包まれ、「この声を無視できるのか」とボリスに詰め寄られたアランは「参ったな」と呟くが、その顔は涼しげだ。

そしてみちるはなずなの活躍に心を打たれていた。

第7話「Easy Albatross」の解説

一歩踏み込んだ“権利”の話

以上が、第7話「Easy Albatross」のあらすじだ。これまで、獣人に対する差別や獣人社会の中の抑圧、貧困といったテーマが語られてきたが、第7話では更に踏み込んだ“権利”の話が中心に据えられている。ピンガというワタリアホウドリ獣人の生き様を通して、マイノリティにとっての本当の幸せは何か、というところまで射程に入れた議論が展開されている。

権利を認められていない頃の獣人からすれば、「獣人に人権を」というのは至極当然の要求だったはずだ。だが、渡り鳥の獣人たちのように、種族によっては人間界のルールに適さないグループも存在する。それでも“獣人”という括りでルールを強制された渡り鳥獣人たちは、銃を向けられ続けてきたのだ。

ワンイシューで排除される存在

この問題は、士郎が「渡り鳥獣人問題か」とつぶやいていたように、獣人たちの中では共有されている問題だ。なんとか権利を獲得してきた獣人の中のマジョリティたちは、残されたこの問題に対処しきれていない。獣人とて一枚岩ではないのだ。

だから、ピンガは人間ではなくアニマシティの市長に訴えかける。「全ての獣人に人権を」というワンイシュー (多くの人に共通の一つの問題を掲げて連帯すること)、均一の要求では排除される獣人も存在する。その姿を捨象するなというのが、ピンガの要求だ。だからピンガは、戦ってきた仲間たちが忘れ去られないために、アニマシティに墓を作ることを要求する。

それぞれの生き方を尊重すること

“マイノリティ”とは言うものの、特定の属性で全ての人を一括りにできることはない。人々を「アジア人」や「女性」といった言葉で分類することはできても、それらの人々を属性によって一括りに語ることは決してできない。そして、『BNA』という作品は、「マイノリティだから強い」とか「マイノリティだから美しい」といった、一見肯定的に見える偏見も含めて、獣人たちを一括りにして語ることを繰り返し否定してきた。

種族もバラバラの個性豊かな獣人たちが、それぞれに大事にしている文化や信条を含めて尊重されること。ようやく紙の上での人権を獲得しつつも、いまだに人間からの差別に晒される獣人たちの次のステップは、そこにあるのだろう。

そして、現実世界に生きる私たち人間も、杓子定規な価値観で“権利”という言葉を捉えていないか、今一度向き合う必要がある。真剣に向き合うことができれば、権利の議論において「平等にするなら〇〇も我慢しなきゃいけないんだぞ!」などという主張はできなくなるだろう。

誰かにとっての本当の幸せは何か、一人一人の声に耳を傾けてることの必要性を、『BNA』は教えてくれている。

アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』はフジテレビ「+Ultra」にて放送中。

Netflixでは第12話までを先行配信している。

『BNA ビーエヌエー』(Netflix)

『BNA』第8話のあらすじと解説は以下の記事から。

『BNA』全体のあらすじについては以下の記事に詳しい。

『BNA』で使用されている音楽については以下の記事から。

『BNA』に出演している声優陣については、以下の記事から。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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