【神回 ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第5話 貧困、ジャッキー、野球賭博【あらすじ・レビュー・感想】VG+ (バゴプラ) | VG+ (バゴプラ)

【神回 ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第5話 貧困、ジャッキー、野球賭博【あらすじ・レビュー・感想】

©️2020 TRIGGER

TRIGGER最新作『BNA ビー・エヌ・エー』

フジテレビ「+Ultra」で放送されている『BNA ビー・エヌ・エー』は、『キルラキル』(2013-2014)、『SSSS. GRIDMAN』(2019)で知られるアニメスタジオTRIGGERによる最新作。各話ごとに、女性差別や組織の腐敗、人種差別など様々なテーマを扱い話題を呼んでいる。


第4話「Dolphin Daydream」では、初めて人類側が抱える問題に焦点が当てられた一方で、”内地”への眼差しと“内地”からの眼差しがテーマになった。詳しくは以下の記事をご覧いただきたい。

第5話「Greedy Bears」は、うえのきみこ による脚本と すしお による作画が冴え渡る“神回”。今回は貧困がテーマになった第5話のあらすじと解説をご紹介しよう。

第5話「Greedy Bears」のあらすじ

アニマシティの“賭博野球界”

第4話「Dolphin Daydream」のラストでは、主人公・みちるは獣人達のことを「もっと知りたい。知らなきゃいけないと思う」と語り、アニマシティの獣人社会へと戻っていった。みちるは今では獣人の姿を楽しむようになっている。人間の姿でいることは「ずっとヒール履いてるみたいな感じ」らしい。

バスケ好きだったみちるは、アニマシティでバスケができる場所を探すが、面倒を見てくれているメリッサに連れてこられたのは野球場。そこで行われていたのはルール無視の死闘が繰り広げられる賭博試合だった。観客は荒れ狂い、実況は女性の獣人選手たちを「お姉ちゃん」呼びするなど、セクシズムもはびこる。殺してでも勝つ、勝つか負けるか、生きるか死ぬか、それがアニマシティの野球なのだ。

連敗記録を更新している “ぽんこつ貧乏ぼんくらベアーズ” のキャッチャー ジャッキー (声:潘めぐみ) は、変身能力を使ったみちるの投球を目の当たりにし、怪我をした投手の代わりにみちるをマウンドに立てる。フラミンゴ獣人のルッキズム丸出しの罵声に対して、みちるは「生まれ持った容姿や 自分じゃどうにもできないことを嘲笑って、他人にレッテル貼って、勝った気になってんじゃないってえの!」と言い放ち、変身能力を使ってチームを勝利に導く。

アニマシティの貧困とダンテの過去

一方、アニマシティの市長であるロゼは、野球賭博の試合によってドードー獣人が絶滅したことから、野球賭博の証拠をつかむよう士郎に依頼していた。そんな政治のお話は知る由もないベアーズのメンバーは、初めての勝利に酔いしれ、「金はないけど夢もない、だけど欲なら人一倍あるさ」と歌いながら、アニマシティのスラム街に凱旋帰郷していた。

水道は止められているため、公園でくんだ水をみちるに差し出すジャッキー。ベアーズのチーム全員でみちるにチームに加わってもらうよう頼み込む。一度はこの誘いを断ったみちるだったが、帰り際に、ロクに屋根もない家が立ち並ぶスラムの現状を目にする。ジャッキーの「ここに生まれたら一生泥水すする人生なんだ」という声にも押され、結局みちるはベアーズに加わることに。ベアーズのメンバーと、「誰一人殺さない、怪我もさせない」という約束を交わす。

みちるの活躍によって重量級の選手が集まるバファローズを倒したベアーズだったが、実況には「誰も得しない勝利」と言われてしまう。その裏には、賭博野球界にはびこる八百長の存在があった。

ベアーズのダンテ監督は、ギャングの早乙女に試合で負けるよう指示を受けていたのだ。「次は必ず負けます」と土下座して早乙女から許しを得たダンテは、士郎から野球賭博の証言をしないかともちかけられる。だが、「俺たち獣人は野球で食ってくにはこの道しかねえんだよ」と吐き捨てる。ダンテもまた、苦い過去を背負っていたのだ。

実はダンテはかつて、獣人初の野球選手として人間界の野球チームに所属していた。チーム内においても、グラウンド上においても、チームメイトや観客から酷い差別を受け続けたダンテは、その差別への報復として暴力事件を起こしてしまった。それでも野球が好きだったのだろう。ダンテもまた、アニマシティの賭博野球界で懸命に生き延びようとしていたのだ。

試合に負けるためにわざとむちゃくちゃなオーダーを組んだダンテ監督だったが、みちるの活躍によってベアーズはまたも勝利してしまう。みちるは、「みんなバカで如何しようもないけど野球が好きで……そんな獣人に初めて会った」「この街に来て今初めて楽しい」と、ベアーズと出会えたことの喜びを噛み締めていた。

ジャッキーにとっての「地獄」

八百長に失敗したダンテだったが、ベアーズ人気が上昇したことで延命を許されていた。アニマシティ野球リーグの決勝戦での敗戦を約束し、いよいよ決勝戦当日を迎える。ベアーズは「元ぼんくら今じゃ貧民街の星」と呼ばれるようになったベアーズは、「皆殺し害獣軍団」のキラーアニマルズと対戦する。

キラーアニマルズのラフプレーも想像を絶していたが、それ以上にベアーズ選手たちの無気力試合が続く。みちるに問い詰められたベアーズメンバーは、試合に負ければ大金を渡すというオファーを受けていたことを明かす。目先のお金に釣られていることに、みちるは「どこまでバカなの!?」と正論で詰め寄るが、ジャッキーは「どうせバカだよ!」と反論する。

生まれた時から貧民街で育ったジャッキーらにとっては、貧困という名の地獄から抜け出すためには、目の前のチャンスに手を伸ばすしかないのだ。「地獄から抜け出すために金を掴んで何が悪い」というもう一つの正論に、みちるは返答に窮する。

それでも、みちるは誰に詰め寄るでもなく、「まだ勝負は終わってない」「死ぬ気で正々堂々と戦って生きてみろ」と壁にボールを投げつけてメッセージを発する。貧困街の出身ではないみちるが上から目線でベアーズのメンバーを直接説得することはできない。みちるが誰に向かって言うでもなく突きつけたこのメッセージは、ベアーズだけでなく、野球賭博に興じるあらゆる獣人たちに向けられたものだ。

ジャッキーをはじめとするベアーズのメンバーは、このメッセージに説得されたわけではなく、共感することで再びグラウンドに立つことを決める。そんな中、ダンテは金庫から賭博の金を盗み出していた。

金を持って逃げるダンテの前に現れた士郎は、ダンテにラジオを聴かせ、正々堂々と戦うベアーズの姿を知らせる。幼少の頃に観客席から見た野球場の風景を思い出したダンテは涙する。金を返し、ベンチに戻ったダンテは、みちるに「試合はここからだ」と勝ちにいくよう指示を出す。

簡単には解決できない問題

21-20の僅差で敗れたベアーズは金を手に入れるが、ジャッキーは「負けることがこんなに悔しいなんて思わなかった」と大粒の涙を流す。一方で、観客からは大きな歓声が送られる。

監督のダンテは、「賭博じゃなくて野球がしたいんでね」八百長の報酬を受け取ることを拒否する。複雑な現実と事情を知った士郎は、市長のロゼに野球賭博の証拠は掴めなかったと報告する。ロゼもまた「時間がかかりそうね、この街を変えるには」と、貧困と賭博が一筋縄では解決できない構造的な問題であることを認識していた。

その頃、ベアーズのメンバーは「一生リボ払い」で“野球が上手くなる道具”を購入、みちるに報告に来ていた。「もうバカ!」とジャッキーたちを叱るみちるだったが、その顔には笑みが浮かんでいた。構造的な問題はたった1話で解決できるものではないが、この出会いと一所懸命に野球に取り組んだ楽しさは、確かなものだった。

第5話「Greedy Bears」の解説

貧困は構造的問題

『BNA』第5話「Greedy Bears」のテーマは“貧困”だった。貧しい人々を食い物にする野球賭博についての物語が描かれた。純粋に野球をやりたいはずの選手たちは、「地獄」と形容する貧困の現実から抜け出すため八百長に手を染める。ジャッキーをはじめとするベアーズのメンバーたちは普段明るく振舞ってはいるが、水道の水を止められ、公園の水をくんでくるような生活を強いられている。市長のロゼもまた、行政としてこの街の貧困に対処できていない。

ジャッキーは、みちるに詰め寄られた際に、やっと貧困を押し付けられた状況に対して感情を爆発させる。貧困は構造的な問題であり、努力でなんとかなるようなものではないのだ。

賭博に加担する監督のダンテもまた、かつては純粋に野球を楽しんでいた。スポーツであれば、その実力だけで輝けるはずだったのに、野球の楽しさとは全く別のベクトルにあるはずの人々の差別意識に晒されてしまう。それでも野球にしがみつき、それで生きていくためには貧困街の選手たちを八百長の駒として使うという立場に立たざるを得なかった。

第5話「Greedy Bears」は、マイノリティがよりマイノリティである存在を踏みつける、酷い歴史の積み重ねが人々が悪に手を染めさせる構造を生むという『BNA』のここまでの各話で描かれてきたテーマが凝縮された回でもあった。

貧困を描いた『メガロボクス』との違い

同じ貧困を描き出したSFアニメとして思い出すのは、『BNA』と同じくmabanuaが音楽を手がけた『メガロボクス』(2018)だ。主人公のジャンクドッグことジョーは、やはり貧困層に生まれ育ち、賭博と八百長に手を貸して生き延びている。

『メガロボクス』で描かれた貧困はより暗く、しかし主人公ジョーの貧困から這い上がる力強さが同時に描かれていた。『BNA』が描いた貧困は、それほど“美しい”ものではない。貧窮状態に置かれたジャッキーたちは、自分たちだけの力では立ち上がることはできない。ジャッキーたちが歌いあげるように「金はないけど夢もない」——それがベアーズにとっての現実なのだ。

「貧しいから仕方ない」と決めつけることは差別だが、「貧しくても這い上がれる」もまた暴力になりうる。貧困層の出身ではないみちるのある種楽観的で無責任な (けれど強制的ではない) 声を受けて、ジャッキーたちは目の前の野球に正々堂々と挑むことを決意する。

それがリアルであり、『メガロボクス』のように貧しい立場にありながら強くあり、立ち向かえることは稀なことだということを、第5話「Greedy Bears」は教えてくれている。

それでも、決勝戦でベアーズの逆襲が始まるシーンでは、『メガロボクス』と同じようにmabanuaのビートが鳴り始める。貧しい生活を強いられている状況にあっても、人間が好きなことに正面から取り組むことは、何か意味のあることだと思わせてくれる。

すでに述べたように、貧困は構造的な問題であり、努力でなんとかなるようなものではない。その逆のベクトルにあるのは、出会いや野球を純粋に楽しむ気持ちだ。個人の努力では変えがたい現実を前に、暗黒の歴史や社会構造を乗り越えようと、他者の姿勢を変えていくみちるの純粋さと力強さは、一つの希望として映る。

安易に“解決”を提示しない『BNA』のストーリー

アニメ『BNA』の特徴は、アニマシティや人間界に存在する根深い社会問題を映し出しはするが、安易に解決へとは導かないという点だ。人種差別から生まれた構造的な矛盾、マイノリティが別のマイノリティの足を踏みつける状況は、実社会がそうであるように、簡単に解決できるものではない。

個々人の姿勢に変化が生まれ、政治が道筋を示し、時間をかけて問題の解消に取り組むというステップがあって初めて社会は変わり始める。『BNA』第5話「Greedy Bears」が貧困をテーマにしながら、安易な“いいお話”を設定しなかった理由はそこにあるのだろう。

そして、アニマシティの多様な人々と出会っていくみちるは、自分の抱える問題とはどのように向き合っていくのだろうか。

アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』はフジテレビ「+Ultra」にて放送中。

Netflixでは第12話までを先行配信している。

『BNA ビーエヌエー』(Netflix)

『BNA』第6話のあらすじは以下の記事から。

『BNA』全体のあらすじについては以下の記事に詳しい。

『BNA』で使用されている音楽については以下の記事から。

ジャッキーを演じた潘めぐみを始め、『BNA』に出演している声優陣は以下の記事で紹介している。

齋藤 隼飛

1991年生まれ。
社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。
編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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