2020年のアイズナー賞発表
毎年サンディエゴで開催されている“ポップカルチャー”の祭典サンディエゴ・コミコンが、2020年は“コミコン@ホーム”と題してバーチャル開催されている。この中で、例年通り“コミック界のアカデミー賞”と呼ばれるアイズナー賞の受賞作および受賞者の発表も行われた。
注目されていた“コミックの殿堂”には、審査委員会からNell BrinkleyとE. Simms Campbell、投票でAlison Bechdel、Howard Cruse、Stan Sakai (スタン坂井)、Louise Simonson、Don & Maggie Thompson、Bill Wattersonの8組が選ばれた。
スタン坂井は、アメコミの『兎用心棒』(1984-)で知られる作家で、同作は子ども向けのコミックでありながら伝統や文化を継承する教育的作品としても高い評価を受けている。なお、『兎用心棒』はスタン坂井を制作総指揮に迎え、NetflixがCGアニメシリーズを製作することを発表している。
日本の漫画界からは『マージナル』(1985-1987)、『トーマの心臓』(1974)などで知られる萩尾望都、『はだしのゲン』(1973-1987)の中沢啓治も“コミックの殿堂”にノミネートされていたが、今回は選出されなかった。なお、2019年には『うる星やつら』(1978-1987)の高橋留美子が日本の女性作家としては初めて殿堂入りを果たしている。
アイズナー賞の本賞では、日系でユダヤ系のカナダ出身のコミックアーティスト、マリコ・タマキがベストライターに、ローズマリー・ヴァレロ=オコンネルがベストペンシラー/インカーに選ばれた。二人は『Laura Dean Keeps Breaking Up with Me』でタッグを組んでおり、同作がダブル受賞を果たす形になった。ベストライター/アーティストには『Scholastic Graphix』のRaina Telgemeierが選ばれており、通算4度目のアイズナー受賞を果たした。
また、松本大洋の『ルーヴルの猫』(2016-2017)と白浜鴎の『とんがり帽子のアトリエ』(2016-)が翻訳コミックのアジア部門を受賞している。
2020年のコミコンは史上初のバーチャル開催となったため、例年コミコン会場で行われていたアイズナー賞の発表も、YouTubeでの配信にて行われた。