短編小説のアウトライン、ケン・リュウは「書かない」 有名作家がスタイルを続々表明 | VG+ (バゴプラ)

短編小説のアウトライン、ケン・リュウは「書かない」 有名作家がスタイルを続々表明

「短編小説のアウトラインって書く?」

SF小説家ナロ・ホプキンスンが問いかけ

ローカス賞受賞者でもある有名SFファンタジー小説家、ナロ・ホプキンスン (Nalo Hopkinson) がTwitter上である問いかけを行い、有名作家らが続々と声を寄せている。ホプキンスンが問いかけたのは、小説を書く際のスタイルに関する質問。とある短編アンソロジーへの寄稿を依頼されたというホプキンスンは、先に物語の骨子をまとめたアウトラインの提出を求められたという。

私は短編小説でアウトラインは書かないな。探検するみたいに書くから。[アウトラインを書くことは] 小論文的な考えだと思うけど。書き手のみなさん、短編を書き始める前にアウトラインは書きますか?

フィクションにアウトラインは必要?

アウトラインは、文章の概要・あらすじに当たり、大学のライティング教育 (英語教育) では小論文を書くにあたって事前にアウトラインを作成して提出するよう指導を受ける。だが、想像力を原動力に書き進めていくフィクションにおいてもこのアウトラインが必要なのか、またどれだけの作家がアウトラインを使って小説を書いているのか、確かに気になるところではある。

ケン・リュウはじめ、有名作家らが続々回答!

この問いかけに有名作家が続々と回答を寄せており、リプライ数は1日で100を超えている。果たして作家たちはアウトラインを使用しているのか。寄せられた声の一部をご紹介しよう。

SF短編小説といえば、「もののあはれ」、「紙の動物園」で知られるケン・リュウ。最近では短編作品「良い狩りを」がNetflix『ラブ、デス&ロボット』でアニメ化されている。これまで短編作品を中心に執筆してきたケン・リュウは、「短編小説ではアウトラインは書かないな」と短く回答。詳細は語られなかったが、多作家でもあるケン・リュウらしい回答だ。

SFファンタジー作家で編集者でもあるスコット・エデルマンは、「結末が分かっていれば、過程を書く必要を感じなくなる」という理由でアウトラインは書かないと回答。『精霊がいっぱい!』(1999) の著者ハリイ・タートルダヴは、アウトラインを「短編小説では決してやらない」と明言。『Our Lady of the Open Road』(2015) でネビュラ賞中編小説部門を受賞したサラ・ピンスカーも、短編に限らず「アウトライン自体書かない」と否定的だ。
マレーシア出身のファンタジーSF作家ジェイミー・ゴーは、「アウトラインを書かなくて済むから短編が好き」とした上で、長編ではアウトラインがなければ迷子になってしまう、とコメント。長編にはアウトラインを用いるが、短編では用いないとする声は他にも上がっている。

ナロ・ホプキンスン自身は、物語を書き始める時には“アハ体験=ひらめき”を重視すると語っている。書いている本人でさえ、どのような結末を迎えるか分からないというのだ。

“アウトライン書く派”の声は?

“書かない派”が多数を占める一方で、アウトラインを書くと回答する作家も。

『A Question of Faith』(2017) の著者トンヤ・リバードは、「いつも書くわけじゃないし、ほとんど書かない」としながらも、「今書いてるサイバーパンク小説? アウトライン書いてるよ。そのお陰で書き終えられそう。どういうわけか怠けちゃってて」と回答。作品を完成させる原動力としてアウトラインを利用しているようだ。
トロントの作家、アンドリュー・ウィルモットは、ロードマップとして「ほとんど毎回」アウトラインを書くが、いつでも物語の構成を変えられるように、「“提出”はしない」と話す。

また、ファンタジー作家のロビン・ホブは、以下のように回答して笑いを誘った。

小説を書くときはアウトラインを書くよ。それから本文を書く。それでまたアウトラインを見て、こう思う。「ちょっと、これも本にするべきだよ! 今書いたやつと全然違うじゃん!」

様々な回答を受けて、ナロ・ホプキンスンは「もちろん、みんなそれぞれのやり方があるよね。アウトラインが役に立つ人もいるし、全く役に立たない人もいる」とまとめた上で、作家たちの回答に以下のように謝意を述べている。

ありがとうみんな。書くことについて書き手の人と話すと、書くことは楽しいことなんだって思い出させてくれる。今、締め切りが迫ってる二つのストーリーを書き上げたくてたまらない。

– Source –
Nalo Hopkinson Twitter

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