日本ガイシの企業広告に八島游舷「Final Anchors」 YOUCHANのイラストと共に日本経済新聞に掲載 | VG+ (バゴプラ)

日本ガイシの企業広告に八島游舷「Final Anchors」 YOUCHANのイラストと共に日本経済新聞に掲載

日本ガイシによるSF小説を用いた広告第三弾

大手セラミックメーカーの日本ガイシ株式会社によるSF小説を用いた企業広告の第三弾が、2023年2月20日(月)付の日本経済新聞朝刊文化面に掲載されました。2022年10月18日(火)掲載の十三不塔「至聖所」を用いた広告、同年12月19日(月)掲載の櫻木みわ「春、マザーレイクで」を用いた広告に続き、今回の広告では八島游舷「Final Anchors」が起用されています。

「いいミライを、つづろう。」と題されたこの広告では、既に発表されている日本のSF短編小説の一場面をピックアップ。そこに描かれている未来を日本ガイシの技術と共に読み解くことで、SF作家のアイデアが現実のものになる可能性に想像を巡らせる内容になっています。

八島游舷さんのSF短編小説「Final Anchors」は、完全自動運転が実用化されてから40年が経過した未来のサンフランシスコが舞台。市街の交差点に猛スピードで接近する2台の車両に搭載されたAI同士が、人間には知覚できないスピードでお互いの次の行動を決める<AI調停>を行います。自動運転車搭載のAIが自ら思考し、人間を支えようとする未来が描かれている点が特徴の一つです。

今回の広告では、このSF小説が描く世界を日本ガイシの技術で読み解き、「ありそうなミライ」の可能性を探究しています。広告内のイラストは、第一弾・第二弾に引き続き、SF・ミステリ小説の装画などで知られるYOUCHANさんによる描き下ろしとなっています。サンフランシスコ市街の交差点を背景に、わずか〇・五秒の間に膨大な情報をやり取りして調停を行うAIのルリハとグスタフが、シリアスな表情と共に描かれています。

今回のプロジェクトのために描き下ろされた特別な一枚を、ぜひカラーの紙面でお楽しみください。

八島游舷「Final Anchors」は、2022年6月に刊行された伴名練編『新しい世界を生きるための14のSF』(早川書房) に収録されています。小説の全編はこちらで読むことができます。

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八島游舷が見た「いいミライ」(作家コメント)

VGプラスでは、日本ガイシの広告に起用された「Final Anchors」の作者の八島游舷さんにコメントを頂きました。執筆の裏側や、自身の描いたSFを現実の技術で読み解く今回の企画について、感じたことを語って頂いています。


—— 「Final Anchors」では未来のサンフランシスコを舞台に、車載AI同士が人間に感知できない速さで“調停”を行う物語が描かれました。着想を得たきっかけや、この物語を書こうと思った経緯を教えてください。

八島:本作品は、拙作「天駆せよ法勝寺」とともに、2017年に大森望ゲンロンSF創作講座に在籍していたときの提出作品をもとにしています。長谷敏司さんから出された「クライマックス」というお題に対する作品で、藤井太洋さん講師の回にご講評いただきました。当初は18000字ほどありましたが、10000字以下に再構成して日経「星新一賞」に提出し、グランプリを頂きました。

執筆のきっかけの一つは、実際に起きた、初期の自動運転車の事故です。自動運転システムがドライバーに何度も警告したにもかかわらず事故が起きたという状況、そして自動運転車の事故は非自動運転車とは原因が異なるという点に興味を惹かれ、そこから発想を広げました。

——本作では、現実でも実証実験が進む自動運転車を主体に、技術・倫理・法律と幅広い対象を扱っています。現実を題材にしながら未来を描くにあたって意識したことや注意した点はありますか。

八島:専門家の意見だけにとらわれず、SFとして可能な世界を示すことです。未来での社会や文化の変化は、科学的手法のみによっては必ずしも予見できません。SFプロトタイピングでもそうですが、専門的分野からあえて少し距離を置いたうえで自由に発想することにSFの面白さがあり、SFの存在意義を感じます。現在可能な技術の延長線上にあるものだけではなく、「こうなるといいな」「こうなると面白いな」というビジョンを示せるのがSFという手法だと思います。

——今回の日本ガイシさんの広告プロジェクトでは、本作のテクノロジーの部分を実現するための具体的な可能性が示されました。作家としてはどのようなお気持ちでしょうか。

八島:たいへん光栄です。具体的な技術との接点を示していただくことで、物語に新たな手触りが生まれた気がします。このように企業がSFプロトタイピング手法に関心を抱いて実践していただくのは心強いです。柔軟なSF的発想は、ハードを主力とする企業には特に有益な変化を起こしうると感じます。今後ともSF的思考を存分に発揮いただいて、革新的変化を起こしていただければと思います。

—— 作中のレベルにまでAI技術が発展したら、どんなことに使ってみたい/使われてほしいですか?

八島:本作では、AIにある種の自我が芽生える状況とその前後を描いています。その意味では「使う」という関係ではなく「共存する」という関係に近づいているかもしれません。人間は多かれ少なかれAIを必要とし、求めるからです。AIがいつまで人間を必要とするかは分かりませんが!

AIは我々の意思とは無関係に発達していくでしょう。その結果が人間を幸福にするかどうかも今の時点では分かりません。そのためにも作中で触れたような、AIの干渉を拒否する権利も今後も重要になりそうです。最近、絵画AIに続いてチャットAIに急速な進展が見られますが、その進化の速度は想像以上であると感じます。

高齢化が進む中で、安全な自動運転車の重要性は確実に増していきそうです。いずれは先進的な自動運転車のメーカーさんともお話ができるのを楽しみにしています。

——最後に、「Final Anchors」をビジュアル化されたYOUCHANさんのイラストの感想を教えてください。

八島:すばらしいイラストを描いていただきありがとうございます。二人(二台)のやり取りを象徴するように人物を中心とし、あえて車を出さないのが効果的ですね。スピード感が表現され、シリアスな状況を示すと同時に希望も感じさせます。


三つの広告で見たミライ

本記事で紹介した広告は、2023年2月20日(月)付の日経新聞朝刊文化面に掲載されていますので、ぜひ紙面をチェックしてみてください。今回の広告が掲載され、既刊のSF短編小説を用いた三つの広告が出揃いました。

2022年10月の紙面に掲載された、十三不塔「至聖所」を用いた第一弾の広告についてはこちらの記事に詳しくまとめています。こちらは、人間の記憶をデジタル映像に変換して復元するSFアイデアを日本ガイシの技術で読み解く内容になっています。

2022年12月の紙面掲載の櫻木みわ「春、マザーレイクで」を用いた第二弾の広告については、こちらの記事で詳しく紹介しています。こちらは、島の暮らしを支える風力発電や太陽光発電、そして無人で動くAI漁船を日本ガイシの技術で読み解く内容になっています。

記憶を映像化するテクノロジー、島での暮らしを支える未来の設備、そして自ら思考するAIを搭載した自動運転車。SFで描かれた未来を、現実の最先端技術と共に読み解くことで、「ありそうなミライ」が見えてきます。日本ガイシの技術はどんなミライを作っていくのか、これから先も目が離せません。

 

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八島游舷さんはAEON・KDDI主催の「SFプロトタイピング入門――想像を超えるアイデアを生み出しイノベーションを実現する」ワークショップを2023年3月に実施します。詳しくはこちらから。

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