N・K・ジェミシン、ヒューゴー賞3連覇を振り返る——専業作家になるも「それは地続きのこと」

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N・K・ジェミシン、ヒューゴー賞3連覇を振り返る

ビッグニュースが続いたSF界

2018年も、SF界では様々なトピックが飛び交った。年末に差し掛かっても、東京創元社のSFアンソロジー『GENESIS』創刊号の発売や、早川書房『SFマガジン』「百合特集」の三刷が決定するなど、大きなニュースが続いている。
中でも、最も大きなニュースの一つは、黒人女性作家のN・K・ジェミシンが、SF最高賞の一つであるヒューゴー賞の長編小説部門で前人未到の3連覇を達成したことだろう。ジェミシンは、『The Fifth Season』、『The Obelisk Gate』、『The Stone Sky』の三部作全作でSF文学界最高の名誉を手にし、一躍時の人となった。

“世界”と“個人”を描く

「The Broken Earth トリロジー」と呼ばれるこの三部作は、自然災害が増加・激化した世界が舞台。この災害を治める力を持つ人々は世間から恐れられ、迫害を受けている。いわゆる“アポカリプスもの”なのだが、それでも、ジェミシンは同シリーズを「一人の女性の物語」と語る。“世界の終わり”と、“一人の女性の痛み”を同時に描き出しているのだ。

“年の瀬インタビュー”で三連覇を振り返る

そんなN・K・ジェミシンが、Nation Public Radioで“年の瀬インタビュー”に答え、ヒューゴー賞3連覇を達成したこの三年間を振り返っている。2016年の『The Fifth Season』では、アフリカ系アメリカ人としては初のヒューゴー賞長編小説部門受賞者となったジェミシン。それからわずか二年で、誰も達成したことのない偉業を成し遂げることになった。

兼業作家から専業作家へ

トリロジー三作目の『The Stone Sky』の執筆に取り掛かるまで、昼間はカウンセラーとして働いていたというジェミシン。今では専業作家として執筆活動に取り組んでいるが、彼女にとっては激動の三年間だったのではないだろうか。「人生がどう変わったか」というインタビュアーの質問に、ジェミシンは以下のように話している。

そんなつもりは無かったんだけど、人生の転機みたいなものを迎えていたんだと思うわ。でもね、カウンセラーの仕事をしていたから、ミッドライフ・クライシス (訳注:カウンセリング用語では「成人期の転機」と呼ぶ) は予期せずやってくるということは分かっていたの。数年間“まあまあの作家”とやってきた自分が、“成功した作家”になったことを「人生の転機」とは言わないわよね。それは地続きのことなんだから。

N・K・ジェミシン

なんともジェミシンらしい言い回しだ。ヒューゴー賞3連覇という偉業を「人生の転機みたいなもの」としながらも、それはこれまで取り組んできたことの帰結だと結論づけている。VG+の特集でもご紹介した通り、ジェミシンは“天才”として突然現れたわけではなく、地道に小説の書き方を学びながら作家として成長を遂げてきた。ヒューゴー賞3連覇という偉業も、彼女が歩んできた道のりを考えれば、突然ふりかかった出来事ではなかったのだろう。

SF界にとっても歴史的な年となったこの一年を、改めて「地続きのこと」と締めくくったジェミシン。“世界”と“個人”を同時に描き出す作風に違わぬ姿勢を、ここでも垣間見ることができた。

なお、N・K・ジェミシンの「The Broken Earth」三部作は、東京創元社の創元SF文庫から日本語版が発売される予定だ。日本での出版を楽しみに待とう。

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via: © 2018 N.K. Jemisin.
– Source –
National Public Radio

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