第一回かぐやSFコンテスト 審査委員のおすすめ小説10本 | VG+ (バゴプラ)

第一回かぐやSFコンテスト 審査委員のおすすめ小説10本

SFショートショートのコンテストを開催

SFウェブメディア バゴプラ (運営: VGプラス合同会社) は、SFショートショートの新たなコンテスト「かぐやSFコンテスト」の開催を発表した。応募期間は2020年6月7日(金)から7月6日(月)までで、最優秀作品には英語と中国語への翻訳という副賞が用意されている。最大4,000字の小説で世界に挑戦できる大チャンスだ。

記念すべき第一回のテーマは「未来の学校」。未来について想像し難い今だからこそ、「未来の学校」について自由に想像を巡らし、多様な作品を応募していただきたい。

コンテストの概要は、以下の特設ページからご覧いただける。

第一回かぐやSFコンテストの概要

審査員が紹介するおすすめ小説

第一回かぐやSFコンテストの審査委員長には、SF小説の紹介者/書評家として活躍する橋本輝幸が就任。審査委員に、11月に編著者としてフェミニズムをテーマにした書籍を出版する新進気鋭の井上彼方、日々国内外のSF情報を発信するバゴプラ編集部が名を連ねる。

ここでは、審査委員についてより深く知って頂くために、それぞれが選んだおすすめ小説10本ずつを紹介する。更に、その中から選出した3本について紹介コメントも掲載している。かぐやSFコンテストに応募したいという方も、読者の方も、ぜひチェックしていただきたい。

審査委員長 橋本輝幸のおすすめ小説10本

審査委員長:橋本輝幸
1984年生。2008年より「S-Fマガジン」などでSF小説の紹介者/書評家として活躍。

  • 彩瀬まる「山の同窓会」(2017)
    『くちなし』収録
  • 秋山瑞人『猫の地球儀』(2000)
  • テッド・チャン「息吹」(2009)
    『息吹』収録、訳:大森望
  • 山尾悠子「遠近法」(1977)
    『夢の棲む街/遠近法』収録
  • 牧野修「踊るバビロン」(1999)
    『楽園の知恵 -あるいはヒステリーの歴史』収録
  • 飛浩隆「象られた力」(1988/2004)
    『象られた力 kaleidscape』収録
  • チャイナ・ミエヴィル「ある医学百科事典の一項目」(2003)

    『ジェイクをさがして』収録、訳:市田泉
  • グレッグ・イーガン「暗黒整数」(2007)

    『プランク・ダイヴ』収録、訳:山岸真
  • アルフレッド・べスター『ゴーレム 100』(1980)
    訳:渡辺 佐智江
  • ケリー・リンク「ザ・ホルトラク」(2003)
    『マジック・フォー・ビギナーズ』収録、訳:柴田元幸
彩瀬まる「山の同窓会」(2017)

人類が卵胎生で産卵ごとに大きく衰弱する世界。「乳母」「海獣」といったまれに自然発生する役割をもった個体でもないのに、語り手は産卵せず異例の長寿を保つ。特殊な設定だが、描かれる死や性はリアル。

文藝春秋
¥682 (2024/04/25 18:28:59時点 Amazon調べ-詳細)
秋山瑞人『猫の地球儀』(2000)

人間がいなくなった宇宙コロニーで、知性化した猫たちはロボットを使いこなして生活していた。歴史や記録が失われ、過去についておぼろげな理解しか残っていない世界像や猫たちのドラマが読者をつかんで離さない。

テッド・チャン「息吹」(2009)

語り手の科学的探究を通し、世界観とその危機が徐々に見えてくる。チャンの作品で屈指の現実から遠い物語だが、異様な世界がシンプルで丁寧な説明によって共感可能に仕立てられている。静かに熱い逸品。

早川書房
¥2,090 (2021/07/02 19:29:52時点 Amazon調べ-詳細)

審査委員 井上彼方のおすすめ小説10本

審査委員:井上彼方
1994年生。バゴプラで書評等を掲載。2020年11月に社会評論社より編著書『「からだ」について考えるフェミニズムの本(仮題)』を出版予定。

  • ハン・ガン「エウロパ」(2013)
    『回復する人間 (エクス・エクリプス)』収録、訳:斉藤真理子
  • カルメン・マリア・マチャド「本物の女には体がある」(2017)
    『彼女の体とその他の断片』収録、訳:岸本佐知子
  • ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト「ボーダー 二つの世界」(2006)
    『ボーダー 二つの世界』収録、訳:山田文
  • サン=テグジュペリ『星の王子さま』(1943)
    訳:内藤濯
  • ファティマ・メルニーシー『ハーレムの少女ファティマ』(1998)
    訳:ラトクリフ川政祥子
  • ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』(2015)
    訳:岸本佐知子
  • トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の仲間たち』(1962)
    訳:山室静
  • A.A.ミルン『くまのプーさん』(1926)
    訳:石井桃子
  • チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』(2015)
    訳:吉川凪
  • J.M.クッツェー『サマータイム、青年時代、少年時代』(2009)
    訳:くぼたのぞみ
ハン・ガン「エウロパ」(2013)

イナみたいになりたい僕。夫と離婚して、クラブで歌うイナ。ワンピースとヒールを身につけた僕は、イナと一緒に夜の街を「歩道に釘を打ち込むように」進んでいく。名前をつけることのできない、関係性と欲望の物語。

¥2,640 (2024/04/25 18:29:00時点 Amazon調べ-詳細)
カルメン・マリア・マチャド「本物の女には体がある」(2017)

女が透明になって消えてゆく病気が蔓延している。恋人のペトラが消えゆく中、わたしは自分も消えはじめていることに気がつく。消えていくこと。そこにあるのは虚しさ?恐怖?あるいは開放?皮肉の効いた題名も秀逸。

ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト「ボーダー 二つの世界」(2006)

人の感情を嗅ぎ取ることができるティーナは、スウェーデンの税関で密輸などを取り締まるのが仕事だ。そこに現れた不思議な男ヴォーレに惹かれていく。匂いを手掛かりに、世界のこちら側とあちら側とその境界を問う。

早川書房
¥1,408 (2021/04/28 19:29:45時点 Amazon調べ-詳細)

審査委員 バゴプラ編集部のおすすめ小説10本

審査委員:バゴプラ編集部
2018年5月にSFウェブメディア VG+ バゴプラを開設、2020年4月23日よりVGプラス合同会社として法人化。小説から映画、ゲームなど、幅広いSF情報を毎日発信している。

  • レイ・ ブラッドベリ『華氏451度』(1953)
    訳:伊藤典夫
  • 藤井太洋『アンダーグラウンド・マーケット』(2012)
  • 郝景芳「折りたたみ北京」(2016)
    『折りたたみ北京』収録、訳:大谷真弓
  • ジェームズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』(1977)
    訳:池央耿
  • オクティヴィア・E・バトラー「血を分けた子ども」(1984)
    訳:小野田和子
  • ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』(1984)
    訳:黒丸尚
  • ケン・リュウ「愛のアルゴリズム」(2004)
    訳:古沢嘉通
  • チョン・ソヨン「宇宙流」(2005)
    訳:吉川凪
  • 飛氘「ほら吹きロボット」(2014)
    訳:中原尚哉
  • 川野芽生「白昼夢通信」(2019)
    『白昼夢通信』収録
レイ・ ブラッドベリ『華氏451度』(1953)

華氏451度は、紙が燃える発火点の温度。焚書をテーマにした古典作品だが、現代のインターネット至上主義の問題点が詰まった、今こそ読まれるべき本。あらゆる情報が片手の中のスマホに詰まっている時代に、あえて本を読むことの意義とは。

¥946 (2024/04/25 18:29:02時点 Amazon調べ-詳細)
藤井太洋『アンダーグラウンド・マーケット』(2012)

舞台は“地下経済”で仮想通貨が流通する2018年の日本。TPPやオリンピックといった“政治”の犠牲者となった若者と移民たちが手を結ぶ。「なんとかしようとしている」——使い捨てにされた人々のリアルが刺さる。

¥737 (2024/04/25 18:29:02時点 Amazon調べ-詳細)
郝景芳「折りたたみ北京」(2016)

ごみ処理施設で働く一人の労働者が、“折りたたまれる北京”の社会階層を目まぐるしく行き来する。主人公の老刀は、なぜ人生をかけてまでミッションに身を投じるのか。圧倒的なスケールで、等身大の物語が描かれる。

早川書房
¥1,100 (2024/04/25 14:17:47時点 Amazon調べ-詳細)

 

第一回かぐやSFコンテストの作品応募期間は2020年6月7日(金)から7月6日(月)まで。コンテストの詳細は、以下の特設ページから。

第一回かぐやSFコンテストの概要

なお、最優秀作品の英語および中国語への翻訳を担当する翻訳家については、以下の記事で紹介している。

VG+編集部

映画から漫画、ゲームに至るまで、最新SF情報と特集をお届け。 お問い合わせ

関連記事

  1. 葦沢かもめさんと吉美駿一郎さんの『かぐやSFアンソロジー(仮)』の進捗は?

  2. 蜂本みささんの長編小説の刊行の延期と、連載開始のお知らせ

  3. 徳間書店の復刊レーベル「トクマの特選!」がスタート 第一弾として小松左京らの5タイトルを刊行

  4. 原里実「植物家族」英訳が米ワールド ・リテラチャー・トゥデイに掲載 Toshiya Kameiによる翻訳