日本語ラップとSF ラップで描かれた“宇宙戦争”とは?

ライター

ラップで描かれた“宇宙戦争”

ラップとSFの相性

ラップは、空想的な世界観を描き出すことに適した音楽だ。その圧倒的な情報量とバリエーションに富んだ音楽性は、聴く者の空想を掻き立てる。SF大国である日本では、日本語ラップの世界でもSF的なストーリーが展開されてきた。宇宙に行くのは当たり前、ヒップホップの武器でもある社会性を駆使して未来を描き出すラッパー達の声を、私たちは無視するべきではないだろう。アメリカではヒップホップグループのクリッピング (clipping) が2年連続でSF最高賞のヒューゴー賞にノミネートされているのだ。

今回は、SFの中でも人類と地球外生物の衝突をテーマにした“宇宙戦争”というジャンルに挑戦した日本語ラップの楽曲をご紹介しよう。日本のラッパー達はどのような“宇宙戦争”を描き出したのだろうか。

「The X-Day」(2015) / RHYMESTER


「その時一つになる 世界は一つになる」から始まるRHYMESTERの「The X-Day」は、映画『インデペンデンス・デイ』(1996) やドラマ『アウター・リミッツ』(1963) を元ネタにした楽曲だ。「ビル・プルマンの演説通り」と、『インデペンデンス・デイ』『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』でトーマス・ホイットモア (元) 大統領を演じた俳優の名前も登場する。「The X-Day」では、ハリウッド映画で美しい美談として描かれる“宇宙戦争”を、「宇宙から共通の敵が現れなければ人類は団結することができない」という悲しい現実にスポットライトを当てて描いている。SF的な題材を用いながらも、「一致団結に便利な外敵 指差して輪の中にいれば快適」「暴力につける肩書き探してる」と、RHYMESTERらしい表現で“現実の人間”を描くことに成功している。

「宇宙戦争」(2009) / Radio Aktive Project

ABCのKダブシャインとDJ OASISによるユニットRadio Aktive Projectが2009年にドロップした一曲は、その名も「宇宙戦争」。1898年のH・G・ウェルズによる小説と、2005年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画『宇宙戦争』と同名の作品だ。DJ オアシスの奏でる壮大なトラックの上で、二人が“宇宙戦争”を描き出していく。フックで繰り返されるのは、「人類の敵」「惑星の敵」は誰か、という問いかけだ。日本における社会派ラッパーの元祖であるKダブシャインは、環境が悪化していく地球の様子を描き、「地球と人類 さぁどっちの罪」と問う。ヨーロッパでの産業革命以降、アジアとアフリカの自然を破壊しながら発展を成し遂げた「資本主義理念の社会」を批判する。DJ オアシスも同様に荒れ果てた世界の様子を描写し、人類による科学への依存を批判。最後には「このままじゃいつか消える日本」と小松左京『日本沈没』(1973) を思わせるラインで締めくくる。

「宇宙戦争」と銘打たれた楽曲だが、地球の敵は外から訪れる宇宙人ではなく、資本主義社会で環境破壊をやめない人類の方だというオチ。RHYMESTER「The X-Day」と同様、「宇宙」という視点を用いて人類側を描いた名曲だ。

“宇宙”の視点で“戦争”を

なお、「日本語ラップとSF 宇宙に行ったラッパー達」でもご紹介したPUNPEEの「宇宙に行く」(2017) では、異星人達と一緒にNetflixを観ようとした矢先に宇宙でも戦争に巻き込まれる。「宇宙でも結局戦争になっちゃうんじゃん」と、生き物の性とも呼べる展開に失望を隠せないでいる。

“戦争”というテーマを“宇宙”という視点で見たときに、「国家間の事情」だけでは済ませることのできないロジックが見えてくる。そのマクロな視点は、むしろ私たち人間一人ひとりの生き方を問い直すものであり、本来は “一人称の音楽”であり、 “ローカルでグローバル”な音楽でもあるヒップホップならではの表現で構成されている。SF的な要素を用いて、あくまでも“人間”を問い続けるラッパー達——人類の盛衰と共にどのような楽曲が登場するのか、今後も注目しよう。

VG+編集部

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