ネタバレ考察&感想 音羽の過去と信念『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』あのセリフと行動の意味を解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察&感想 音羽の過去と信念『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』あのセリフと行動の意味を解説

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『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』公開!

2023年4月28日(金)、待望の映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』が劇場で公開された。本作は2021年に日曜劇場で放送されたドラマシリーズの映画版で、2023年4月16日(日)に放送されたドラマスペシャル『TOKYO MER 隅田川ミッション』の1年半後を舞台にしている。

映画版『TOKYO MER』では、鈴木亮平演じる喜多見幸太が仲里依紗演じる高輪千晶と再婚。妊娠した千晶が横浜みなとみらいのランドマークタワーの地上70階に取り残されるという事態が発生する。一方、賀来賢人演じる音羽尚は厚労省直轄の全国版MERの統括官に任命され、かつての恋人、杏演じる鴨居友とYOKOHAMA MERでタッグを組む。

もちろん喜多見と千晶の関係も見どころの一つだが、今回は、喜多見、鴨居、政府、そしてドラマシリーズで命を落とした涼香との関係に揺れる音羽尚にスポットライトを当ててみたい。劇場版での音羽の活躍には期待した人も多いはず。『劇場版 TOKYO MER』では音羽はどのように描かれたのだろうか。

なお、以下の内容は『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』のネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』の内容に関するネタバレを含みます。

『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』音羽の活躍を解説

MER推進部統括官になった音羽

ドラマスペシャル『TOKYO MER 隅田川ミッション』では、TOKYO MERのセカンドドクターだった音羽尚が全国版MERの統括官になるためチームを離れることが明かされた。SP版のラストでは音羽がYOKOHAMA MER用のERカー・YO1の機能デザインにも携わったこと、横浜の鴨居チーフが元恋人であることにも触れられていた。

『劇場版TOKYO MER』では、音羽は厚生労働省医政局MER推進部統括官として登場。TOKYO MERの出動時には、喜多見からユニフォームを渡されるも受け取りを拒否するなど、政府系MERの統括を担当する統括官としての意識を高く持っている。

MERを巡っては、音羽は今回の映画で三人目の厚生労働大臣の下につくことになる。『隅田川ミッション』ではMERの全国展開を目指す蒲田大臣の下で統括官に任命されたが、映画版ではそれを引き継いだ両国大臣の下でその役割を担っている。

両国大臣は手始めにYOKOHAMA MERを創設し、音羽の元恋人である鴨居をチーフドクターとしてアメリカから招集。赤塚都知事の口からは両国が鴨居と音羽を結婚させようとしているという“噂話”が語られている。

鴨居との過去と音羽の信念

『劇場版TOKYO MER』の見どころの一つは、音羽と鴨居の関係だ。回想シーンでは学生代の音羽と鴨居の成田空港での別れが描かれる。鴨居は米国ロサンゼルスで最先端の技術を学ぶために渡航しようとしているが、音羽のパスポートを持ち出して勝手にチケットを取り、一緒にアメリカに行くかどうか、音羽に最後の選択を迫る。

だが、音羽は「日本の医療を変える」「誰もが平等に医療を受けられる世の中にする」という固い信念を曲げることはなかった。二人はMERの統括官とチーフドクターという立場で再会し、鴨居はその時に引き留めてほしかったという本音を、音羽は鴨居の夢を邪魔することはしたくなかったということを互いに遠回りに伝えている。

ここに音羽尚という人物の魅力がある。音羽は自分の信念を曲げることはないが、自分の望みを叶えるために誰かを踏み台にするということはしない。別々の道を行かなければならないのであれば、お互いのためにそれを受け入れる。だからこそ、音羽は全国にMERを広げるためにTOKYO MERを離れることに躊躇はなかったのだろうし、どれだけ大臣と対立して喜多見に惚れ込んでも、SPドラマに登場した青戸のように職業として医者に戻ることはしなかった。

音羽が他者を尊重しながらも、曲げられない強い信念を持っている理由は、ドラマシリーズの第5話で語られている。音羽の母は、お金がなかったことで治療を受けられずに若くして死んでしまったのだ。医療の格差を是正するために音羽は官僚として日本全国を“平等に”変えようとしている。TOKYO MERと出会ったあとは、東京だけを救うのではなく、TOYKO MERの理念を全国に広げようと仕事に取り組んでいる。

涼香への想い

一方の鴨居は、かつて夢のために自分との別れを選んだ音羽が、逮捕歴のある喜多見や寄せ集めのTOKYO MERメンバーを庇っていることに疑問を持っていた。鴨居は音羽のセカンドドクター時代に何かあったのではないかと疑っているが、その通り。喜多見の妹で互いに想いを寄せていた涼香の死を、音羽はまだ引きずっていたのだ。

フレンチの後に出されるお菓子を見て、音羽はお菓子作りが得意だった涼香のことを思い出す。涼香が、音羽がチョコレートが好きだということを聞き出してくれたこと、MERを守った音羽がヒーローだと言ってくれたこと……。前者は周囲が音羽自身のことに聞いてくることが少ない中で、後者は音羽が制度を通して人助けをしたいと考えている中で、嬉しい言葉だったのだろう。

自分の知らない音羽に嫉妬のような感情を抱いている様子の鴨居は、「あなたの夢を賭ける価値があんなチームにあるんですか?」と音羽に問いかけるのだが、この問いに対する答えが、映画版『TOKYO MER』における音羽のテーマになる。

MERへの想いと鴨居へのアンサー

ランドマークタワーでの火災では、音羽は初出動になるYOKOHAMA MERと応援に出向いたTOKYO MERを現場で統括することに。消防や救急に的確な指示を出すシーンは音羽の有能さを示しているが、同時にドラマシリーズで縦割りの現場に悔しい想いをしてきた分、現場で連携を指示できる状況にやり甲斐を感じているようでもある。

しかし、ここに両国厚生労働大臣が出張ってきたことで音羽は何度も葛藤を迫られ、苦汁を飲むことになる。千住隊長と共に突入したTOKYO MERが窮地に立たされ、迷いを浮かべる鴨居も音羽に指示を仰ぐ中、両国大臣が横浜チームの派遣を阻止するのだ。

無線を通してかつての仲間たちの苦悶の声が聞こえてくる中、大規模な火災の現場に怯んでいた研修医の潮見も決死の突入を見せる。妻の高輪千晶が危険な状況に陥る中で喜多見が応援を要請すると、音羽は両国大臣の制止を無視して鴨居に語りかける。映画版『TOKYO MER』における音羽の最大の見せ場の一つだ。

ここで音羽はTOKYO MERのやり方に全面的に賛成するわけではないが、待っていては救えない命もあると鴨居に告げる。ドラマシリーズを通じて音羽は喜多見の姿に影響を受け、人にそう言えるようになるまで変化していたのだ。

そして音羽は、TOKYO MERの「死者ゼロ」「全ての命を諦めない」という信念について触れる。これは全ての人が平等に医療を受けられる国にしたいという音羽の信念と重なるものだ。涼香の死によってTOKYO MERが掲げた理想は打ち砕かれたが、TOKYO MERはそれでもその理想を捨てずに挑戦し続けている。

音羽は、経済格差によって優先される命とそうではない命が選別されて母を奪われ、想いを寄せていた涼香の命は理不尽にもテロによって奪われた。挫折を味わっても理想を諦めなかったTOKYO MERの姿は、苦難を乗り越えて理想を実現するための希望に見えたのかもしれない。

音羽は、無謀にも思えるTOKYO MERのやり方にこそ、日本の医療を変える希望があると信じていた。だから「夢を賭ける価値がある」と、音羽は鴨居に告げる。これはフレンチレストランで鴨居に問われた「あなたの夢を賭ける価値があんなチームにあるんですか?」という問いに対する音羽の本当の答えだった。

鴨居はこの言葉を受けて「待っていては救えない命がある」と考えを変える。鴨居は、音羽が自分と過ごすことよりも大切にした夢を、TOKYO MERに賭ける価値があると信じていることを確かめたかったのかもしれない。鴨居はずっと音羽に想いを寄せており、音羽が夢を賭けた相手なら信じようと、ここで迷いが消えたようにも思える。そして音羽自身もTOYKO MERのユニフォームを身に纏って現場へと戻っていく。命を救うために。

前に進むこと

その後、音羽はドラマ第1話でガスが充満する現場に助けに現れた時のように、喜多見と千晶の危機に現れる。喜多見は自分を置いて千晶を助けるよう言うが、音羽は涼香を失った過去を踏まえて、全員を助けると宣言する。それは理想を砕かれてもまた立ち上がるというTOKYO MERの姿勢から学んだものだった。

千晶のオペはYO1で行われるのだが、音羽が機能デザインに携わったYO1にはTO1にない新生児用の保育器が備え付けられている。小さな命も平等に救おうとする音羽の信念を感じる装備だ。オペシーンでは千晶が心停止状態に陥るも、音羽は諦めない喜多見の表情をじっと見つめている。鈴香の時は音羽が感情的になっている喜多見の手を止めたが、今度は医者としてのその判断を信頼しているように見える。

赤ちゃんと千晶が助かると、腰を抜かした喜多見に代わり、あくまで冷静さを保って処置を引き継ぎ、チームメンバーに指示を出すのが音羽らしい。あの頃のTOKYO MERが戻ってきたようでもある。

音羽は、今後は喜多見のように危険に飛び込んでいくと言う鴨居に「頭痛の種は一つで十分」と言って鴨居の元を去る。鴨居からすれば、「喜多見のことしか考えられない」と言われたも同然であり、音羽はなかなか罪な人である。

最後に音羽は、TOKYO MERのスタッフルームに置いてある涼香の写真に、家族が増えたことを報告している。序盤にはTOKYO MERのメンバー内からは音羽が「前に進むこと=新しい恋をすること」を支持する声が上がっていた。だが、今の音羽にとって、「前に進むこと」というのは「夢の実現に向けて進むこと」だったのかもしれない。

『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』音羽の今後を考察

次はどうなる?

音羽尚ファンにとってはこれ以上ない展開を見せてくれた『劇場版TOKYO MER』。まさにもう一人の主人公という活躍だったが、気になるのは今後についてだ。劇場版の公式パンフレットでは、音羽を演じた賀来賢人は、映画版のラストでは音羽はMERを完全に受け入れていると話している。喜多見のやり方を邪魔する人たちと「今後も戦っていくんだろうな」とも話しており、厚労省MER統括官としての活躍はまだまだ見られそうだ。

喜多見やTOKYO MERは、今回の応援要請を除いては東京から出ることはないが、音羽は今後、MERを全国展開するにあたって、都度自治体の首長や政府与党と対峙しなければならない。全国版MERは全国に20箇所ある政令指定都市にMERを置くことを目標にしており、特に東京のように政府与党と自治体与党が異なる大阪などは一悶着ありそうだ。

別の自治体を舞台にする場合、MERのメンバーは入れ替わることになるが、音羽は統括官として登場し続けることができる。音羽と同じく医系技官出身で官房長官になった白金眞理子と、音羽の上司で医政局局長の久我山秋晴と共に、スピンオフにも登場し続けられるキャラクターなのだ。

鴨居や青戸の再登場は?

ドラマ『TOKYO MER』は、映画版を経てもシーズン2の情報はなく、主演の鈴木亮平は「日曜劇場で2023年10月クールのドラマで主演を務めることが報じられている。しばらくは喜多見を主人公とした『TOKYO MER』の続編はないように思える。

喜多見役の鈴木亮平は、劇場版パンフレットで「もしも今後続編が作られるとしたら」という質問に、徳丸やミン、千住の物語にスポットライトを当ててほしいと語っている。どちらかというとスピンオフのようにも思えるが、育休で喜多見不在のTOKYO MERが鴨居や青戸らの助けを借りながら危機を乗り越える物語も面白いかもしれない。

その場合、厚労省MERの統括官である音羽の出番は少なくなるが、鴨居のバックグラウンドや音羽との関係が深掘りされる展開も期待できる。また、SP版で音羽をライバル視しながらもTOKYO MERに影響を受けて医者の道を歩むことにした青戸の「次に現場で会うときは頼れるドクターになってる」という音羽への約束が果たされることにも期待したい。

全国版MERの統括官になったことも含め、もはやどのキャラクターも音羽尚を中心に回り始めていると言っても過言ではない『TOKYO MER』。今後少しずつ歳を重ね、夢の実現へ近づいていく音羽を今後も見守っていきたい。もしかすると白金のように医系技官出身で総理を目指す展開もあるかも? 続編、お願いします。

白金&久我山についての解説&考察はこちらの記事で。

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映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』は2023年4月28日(金)より、全国の劇場で公開。

『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』公式サイト

『劇場版TOKYO MER』ラストの解説&考察はこちらの記事で。

『隅田川ミッション』のネタバレ解説&感想はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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