2024年『オッペンハイマー』劇場公開決定 さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定 | VG+ (バゴプラ)

2024年『オッペンハイマー』劇場公開決定 さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定

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 クリストファー・ノーランによって描かれる「原爆の父」の物語

2023年7月21日(金)に全米公開され、瞬く間に伝記映画歴代1位となった『オッペンハイマー』。カイ・バードとマーティン・J・シャーウィンによる共著『オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』(2005)を原作とした『オッペンハイマー』は『バービー』(2023)と合わせて「バーベンハイマー」となりネットミーム化するなど、急速な盛り上がりを見せた。

しかし、それは「原爆の父」と呼ばれたJ・ロバート・オッペンハイマーの期待を裏切る盛り上がりとなっただろう。J・ロバート・オッペンハイマーは1930年代にはブラックホール研究といった先駆的な研究をしており、宇宙物理学に夢を抱いていた。

その夢を奪ったのは他でもない戦争だった。第二次世界大戦勃発と共にJ・ロバート・オッペンハイマーはマンハッタン計画に参加することになり、原爆の研究をすることになった。そしてJ・ロバート・オッペンハイマーの研究は夢描いていた宇宙ではなく、原爆による大量殺戮へと繋がっていった。

その後、J・ロバート・オッペンハイマーはトルーマン大統領に会見した際に「私の手は血塗られています」と告げ、戦争における原爆の使用について「科学者は罪を知った」と言い残したと言われている。その後、J・ロバート・オッペンハイマーは反核運動に力を入れた結果、赤狩りのターゲットにされてしまう。

そのような彼の半生を描いた映画において、「バーベンハイマー」ほど不謹慎なものはないだろう。ある意味、このインターネットミームはアメリカ人と日本人の間にある原爆という意味の差を見せつけることになった。

「バーベンハイマー」もあってか、『オッペンハイマー』を日本で公開するのはどうなのかという議論が起きた。その末、配給会社ビターズ・エンドから2024年に『オッペンハイマー』が日本での劇場公開されることになった。配給会社ビターズエンドは公開に関して以下のようなコメントを発表した。

「弊社ビターズ・エンドは、クリストファー・ノーラン監督作『オッペンハイマー』を2024年、日本公開いたします。本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであるため、さまざまな議論と検討の末、日本公開を決定いたしました。作品を見た上で、クリストファー・ノーラン監督の手による、伝統的な作劇手法を超越した唯一無二の映画体験には、大スクリーンでの鑑賞が相応しいと考えております。日本公開の際には観客の皆様ご自身の目で本作を御覧いただけますと幸いです」

2024年はビキニ諸島でアメリカ軍が原爆実験を行い、それによって第五福竜丸が死の灰を浴びて被爆し、約半年後に無線長久保山愛吉が亡くなるという痛ましい第五福竜丸事件から70年の年だ。第五福竜丸事件は映画『ゴジラ』(1954)を生むきっかけになるなど、日本各地に死の灰による被爆と原爆への恐怖をよみがえらせた。

そのような2024年に日本で公開されることとなった『オッペンハイマー』。J・ロバート・オッペンハイマーは後年、ヴィシュヌ神の化身であるクリシュナが任務を遂行すべく、闘いに消極的な王子アルジュナを説得するため恐ろしい姿に変身した際に発した「我は死神なり、世界の破壊者なり」という言葉を引用して原爆研究を後悔している。

映画『オッペンハイマー』で監督・脚本を務めるのはクリストファー・ノーラン。J・ロバート・オッペンハイマーを演じるのはキリアン・マーフィだ。その他にもエミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナーといったハリウッドの大物たちが出演することとなっている。

世界唯一の被爆国と呼ばれる日本の観客の目に『オッペンハイマー』はどう映るのか。注目していきたい。

『オッペンハイマー』は2024年劇場公開予定。

『オッペンハイマー』公式サイト

クリストファー・ノーラン監督の脚本力についてはこちら

モンスター・ヴァース版「ゴジラ」シリーズから見る近年のアメリカの原爆のとらえ方についてはこちら

日本映画における原爆のメタファーである『ゴジラ-1.0』のラスト解説についての記事はこちら

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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