『MIBインターナショナル』でテッサ・トンプソンが主役を演じた意味
『メン・イン・ブラック インターナショナル』が公開
SF映画界およびエイリアン映画界のクラシック、「メン・イン・ブラック」シリーズ最新作『メン・イン・ブラック インターナショナル』が、2019年6月14日(金)に全国で公開された。前作『メン・イン・ブラック3』(2012) 以来7年ぶりの復活となる同作の主演には、「マイティ・ソー」シリーズのクリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンが据えられている。
SF映画とドラマで活躍
テッサ・トンプソンは1983年生まれ、ロサンゼルス出身の俳優。『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で演じたヴァルキリー役で知られる他、HBOドラマ『ウエストワールド』(2016-) でも重要な役柄を演じている。ドラマ『HEROS』(2006-2010) への出演歴もあり、SF作品とは縁の深い俳優だ。
ヴァルキリーとの共通点
テッサ・トンプソンがMCUで演じたヴァルキリーは、劇中では描かれなかったものの、設定上はバイセクシャルだ。そしてトンプソンも自身がバイセクシャルであると発言している。これまで“MEN=男性”が主演を演じてきた「メン・イン・ブラック」シリーズだったが、『メン・イン・ブラック インターナショナル』でテッサ・トンプソンが主役を演じたことには、どのような意味があるのだろうか。
エージェントMへの共感
テッサ・トンプソンは、「女性は、男性主人公がヒーローとして設定されている映画に共感することに慣れている」と前置きした上で、E! News誌に以下のように話している。
エージェントMが女性であっても、男の子が彼女に共感することは素晴らしいことだと思っています。
テッサ・トンプソンがあえてこのようにこの発言した真意は、どこにあるのだろうか。更にVariety誌にはこう語っている。
実際、多くの女性に聞かれました——男性にも聞かれましたが。「若い世代の女の子たちが、自分たちをどのようにこの映画に重ね合わせて見ることができるでしょうか」と。それも重要なのことなのですが、同時に若い男の子たちや、クィアの人々、ノンバイナリーの人々も同じように、自分の姿を重ね合わせてもらうことも重要なことです。私たちはより多くの代表 (representation) を必要としているからです。
映画を見て、自分とは容姿や特徴が異なる主人公に共感することは重要なことです。映画というのは、他者への共感や同情を育むものではないでしょうか。
『メン・イン・ブラック インターナショナル』におけるエージェントMことモリーのセクシャルアイデンティティは (おそらく) 女性だ。だが、テッサ・トンプソンは究極的には女性に限らず、多様なセクシャリティの人々に共感してもらいたいと考えている。「女性主人公だから女性が共感するキャラクター」という考えは、場合によってはステレオタイプな見方になってしまうだろう。
女性主人公が当たり前の時代へ向けて
また、テッサ・トンプソンは以下のようにも語っている。
私の望みは、ハリウッドの中で女性がトップに立つことが特別なことではないという状態になった時に、そこに居場所を得ることです。残念ながら、今はまだ [女性がトップに立つということは] 特別なことで、それを認知したり、お祝いしたりしなければいけないと感じてしまいます。まだ十分な頻度で起きていることではないので。『メン・イン・ブラック インターナショナル』のような作品が、私たちをそこまで連れていってくれることを願っています。
『ワンダーウーマン』(2017)『キャプテン・マーベル』(2019) など、女性主人公のSF作品は増加傾向にあるが、全体で見れば微々たるもの。『メン・イン・ブラック インターナショナル』はハリウッドにおけるジェンダーバランスを改善する一助となるだろうか。
映画『メン・イン・ブラック インターナショナル』は2019年6月14日(金)より、全国で公開中。