ハリウッドで広がる“5050×2020”ムーブメント、ベネチア映画祭で再提言
2018年8月30日未明、イタリアで第75回ベネチア国際映画祭が開幕された。ベネチア国際映画祭は、1932年から続く世界三大映画祭の一つ。金獅子賞をはじめとした各賞が発表される予定となっており、世界中から俳優や映画監督ら、映画関係者が集っている。そんな華やかな舞台で、今年のベネチア国際映画祭の審査委員長を務めるギレルモ・デル・トロ監督が、ハリウッドに蔓延する性的不平等の改善を改めて提言した。
2020年までに公平を
現在、映画業界では、#MeToo に続くムーブメントとして、“5050×2020” (フィフティフィフティ・バイ・トゥエンティートゥエンティー)というムーブメントが広がりを見せている。”5050×2020″はその名の通り、2020年までに、ハリウッドにおける男女間の賃金格差、各賞レースにおける候補者の男女比率の不均衡を解消し、50 : 50の割合とすることを目標としている。今回のベネチア映画祭においても、コンペティション部門で上映される女性監督の作品は、ジェニファー・ケント監督の『ナイチンゲール』のみとなっている。”5050×2020″は、映画会社における役員の男女比も改善の対象としている。つまり、賞レースにおける選考過程そのものというよりも、白人男性以外の映画監督が育ちにくい、出世しにくいという社会的背景から是正しようとする取り組みなのだ。
積極的な姿勢を見せるギレルモ・デル・トロ監督
こうした現状に対し、『パシフィック・リム』(2013)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)で知られるギレルモ・デル・トロ監督は、同映画祭のプレスカンファレンスで以下のように発言した。
本当は2019年までに50 : 50を達成するべきだよ。(中略)まさに今、解決するべき問題なんだ。この問題について呼びかけて、疑問を投げかけ、指摘して、世間に知らしめることがとても重要だ。
by ギレルモ・デル・トロ
「これは”論争”ではなく、現実の問題」と指摘するデル・トロ監督。以前より、女性キャラクターが常にラブストーリーに結びつけられる風潮に異議を唱え、女性のゲリラや戦士を自身の作品に多く登場させてきた。今年1月に行われたゴールデングローブ賞の受賞式では、壇上で「ノミネートされた候補者は、全員男性です」とスピーチして批判を受けたナタリー・ポートマンを、「あの舞台は皆んなが思っていることを言う場所だ」と擁護した。デル・トロ監督自身も、放送映画批評家協会賞やゴールデングローブ賞の受賞式の会場など、公の場で度々、ハリウッドにおける性差別ついて発信している。
“フリ”はやめよう
現在、ギレルモ・デル・トロ監督は五つの映画のプロデューサーを務めているが、三作品は女性監督、二作品は新人監督の下、製作が進められているという。発言においても、行動においても、”5050×2020″を実現しようという強い意志が感じられる。デル・トロ監督が如何に真剣かということは、ベネチア映画祭での以下の発言を見ても伝わるだろう。
”フリ”はやめよう。必要なことなんだ。
by ギレルモ・デル・トロ
リードするアメリカSF界
アメリカのSF界では、比較的、ジェンダーフリーの取り組みが進んでいる。先日発表されたSF最高賞の一つであるヒューゴー賞においては、小説部門の受賞者は全て女性作家、全体を通しても受賞者のほとんどが女性作家という結果になった。黒人女性作家のN・K・ジェミシンが長編小説部門で三連覇を達成し、長編映像部門に『ワンダーウーマン』(2017)が選ばれたことも象徴的だ。今回のSF・ファンタジー界の鬼才の掛け声に、ハリウッド映画界はどこまで応えることができるだろうか。
Source
The Hollywood Reporter