千年の前の少女たちの姿とは?『つるばみ色のなぎ子たち』片渕須直監督完全新作 | VG+ (バゴプラ)

千年の前の少女たちの姿とは?『つるばみ色のなぎ子たち』片渕須直監督完全新作

©つるばみ色のなぎ子たち製作委員会/ クロブルエ

MAPPA STAGE 2023にて情報解禁

2023年5月21日、東京スクエアガーデンでアニメーション制作会社MAPPAによる「MAPPA STAGE 2023」が開演された。「MAPPA STAGE 2023」では全9ステージ、約6時間に及ぶイベント中で、『この世界の片隅に』(2016)で監督をつとめた片渕須直監督による完全新作アニメーション『つるばみ色のなぎ子たち(英題:The Mourning Children Nagiko and the Girls Wearing Tsurubami Black)』が発表された。

本記事では「MAPPA STAGE 2023」で情報解禁となった『つるばみ色のなぎ子たち』について、発表された情報をもとに考察、解説をしていきたいと思う。

集結した『この世界の片隅に』スタッフと新たなるスタッフ

煌びやかな十二単や和歌に蹴鞠などの優雅なイメージの強い1000年前の平安時代を舞台に、歴史の中で語れられることのなかった少女たちの姿を描くとされる『つるばみ色のなぎ子たち』。監督補には『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)でも監督補を務めて片渕須直監督とタッグを組んだ浦谷千恵監督補が付き、『マイマイ新子と千年の魔法』の主人公の青木新子が想像する千年前の少女も同名の清原諾子であることから関係性を匂わせている。

作画監督の安藤雅司は2023年5月時点の邦画歴代興行収入ランキング2位の『千と千尋の神隠し』(2001)、3位の『君の名は。』(2016)、4位の『もののけ姫』(1997)の作画を担当した日本を代表するアニメーターの一人だ。音楽には『アリーテ姫』の携わった千住明が参加するなど、日本を代表するスタッフたちがそろっている。

今回の制作会社「コントレール」設立にはMAPPAの創設当初の考えである「片渕須直監督に『この世界の片隅に』を撮ってもらいたい」という現MAPPA代表取締役会長の丸山正雄の想いが関わっている。当時はテレビシリーズに多く携わっていたMAPPA代表兼コントレール代表でもある大塚学プロデューサーが「『この世界の片隅に』のような作品を作りながら、テレビシリーズも並行するのは難しい」と考えたことが始まりだという。それによって2017年から構想6年かけた『つるばみ色のなぎ子たち』が可能になった。

語られることのなかった千年前の少女たち

タイトルにもなっているつるばみ色とはどんぐりの帽子からとれる顔料であり、色合いは紫がかった黒色となっている。これは喪服の色であり、煌びやかで優雅な平安時代の中で生きた歴史に喪服を脱ぐ暇もなく死者たちを見届けていった少女たちの視点から描くとのことである。『つるばみ色のなぎ子たち』の英題の『The Mourning Children Nagiko and the Girls Wearing Tsurubami Black』とは直訳すれば「喪服の子どもたち 凪子とつるばみ色の黒を纏う少女たち」となる。

平安時代はマラリアが日本国内でも大流行した時代でもあり、『つるばみ色のなぎ子たち』の撮影に当たってマラリアを媒介する蚊を培養し、その幼虫のボウフラの動きを研究し、作画に落とし込んだ。その6年間かけた培養と動きの研究の中で新人だったアニメーターが作画監督の域に達しているというのだから驚きだ。さらにはジェンダー問題などにも踏み込むことを匂わせる発言もしているため、注目が集まる。

他にも十二単などの動きの研究のために狂言の世界の俳優に動きを演じてもらい、松明の組み合わせを調整して、火を揺らさずに歩く方法や松明の明かりでどのように照らされるかも研究されている。さらにはつるばみ色を実際に顔料として出せるかどうか、つるばみ色に染めるとどのような色になるのかまで6年間をかけて徹底的に研究されている。

待ち遠しい公開

現時点では公開日は未定であり、片渕須直監督は場合によっては数年後かもしれないと言い、それに大塚学プロデューサーはあまり長いと困ると苦笑していた。しかし、2017年から構想を続け、徹底した研究を行なうからこそのリアリティに期待が高まる。

近年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)『どうする家康』(2023)では歴史上で深く語られることのなかった武将などではない庶民たちにフォーカスを当てている。特に『どうする家康』における小豆と亜月の解釈など秀逸だ。時系列で考えれば、『つるばみ色のなぎ子たち』との間に関係はないのかもしれないが、時代が片渕須直監督たちに追いついたとも考えられる。今後の『つるばみ色のなぎ子たち』の展開に期待していきたい。

映画『つるばみ色のなぎ子たち』公式サイトはこちら。

映画『つるばみ色のなぎ子たち』公式サイト

MAPPAの米アニメアワード制覇に関する記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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