『アイ・アム・マザー』エンディングを解説
Netflix配信で注目
Netflixで2019年6月に公開された『アイ・アム・マザー』。オーストラリア発の低予算SF映画だが、アンドロイドが人間を育てるというコンセプト、ウェタ・ワークショップによる精密なドロイド制作、そしてクララ・ルガードとヒラリー・スワンクによるダブル主演で大きな注目を集めた。
大規模な劇場公開を経ずにNetflixから世界中に配信されるという、現代的な市場への登場の仕方を見せた『アイ・アム・マザー』。SFで哲学的な設定とストーリーは、流行と世界のあり方に敏感なNetflixユーザーに広く受け入れられている。多くの人々が『アイ・アム・マザー』を鑑賞したところで、今回はそのエンディングシーンを解説しよう。
以下の内容は、映画『アイ・アム・マザー』の内容に関するネタバレを含みます
エンディングに流れる曲は?
『アイ・アム・マザー』のクライマックス、マザーはクララ・ルガード演じる娘が“母”になる資格を得たと確信し、娘に自らを撃たせることで“親離れ”させる。胎芽として残された人類の“母”となったクララ・ルガードは、弟を抱き、「ベイビー・マイン」を歌い出す。「ベイビー・マイン」は、ディズニー『ダンボ』のテーマソングとして知られる曲で、母親の目線で子供に「私のベイビー もう離れない」と歌われている。
オープニングに流れた一曲
エンディングで流れるこの曲は、娘の誕生が描かれたオープニングで使用されたもの。マザードロイドは生まれたばかりの娘を泣き止ませるために、自身に内臓されているスピーカーから音楽を流す。最初に流れるのはアンディ・ウィリアムの「ムーン・リバー」だが、娘が泣き止む様子はない。次にエディット・ピアフの「ラ・ヴィ・アン・ローズ (ばら色の人生)」を流すが、これも効果なし。次に再生したオーストラリア人歌手ニナ・フェロの「ベイビー・マイン」で娘はようやく泣き止み、マザーはこの曲をBGMにして子育てに取り掛かる。
クララ・ルガード自身が歌唱
エンディングシーンで再び流れる「ベイビー・マイン」は、娘を演じたクララ・ルガード自身が歌っている。マザーが子どもをあやすために辿り着いた“答え”の一つである「ベイビー・マイン」を娘は受け継ぐのだ。弟は、幼い頃の娘と同じく、この「ベイビー・マイン」を聞いて泣くのを止める。娘が“母”になったことを示しながら、マザーもまた紛れもなく娘にとっての“母”であったということが、改めて表現されている。
善意のドロイド
冷静に『アイ・アム・マザー』という作品を振り返れば、マザーは決して娘の敵ではなく、“乗り越えて行く存在”として描かれていた。『アイ・アム・マザー』で編集を務めたショーン・ラヒフはInverse誌に、マザーの行動の意図には人間に対する善意しか存在していないということを明かしている。娘はマザーから我が子への愛を歌った「ベイビー・マイン」を受け継ぎ、人類の新たな歴史をスタートさせることを決意する——同作のエンディングにはそんなメッセージが込められていたのだ。
映画『アイ・アム・マザー』は、Netflixで独占配信中。
Source
Inverse