映画『ハーレイ・クイン』のゴッサムはどう描かれたか
映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』が2020年2月7日(金)に全米で公開される。日本での封切りは3月20日(金)に予定されており、公開が待ちきれないという方もたくさんいることだろう。
映画『ハーレイ・クイン』の舞台となるのは、ハーレイ・クインやジョーカーが登場する「バットマン」シリーズの舞台である“ゴッサム・シティ”。経済格差と犯罪、そして警察による汚職が蔓延する街で、バットマンらがヴィジランテ (自警団) として戦っている。
ゴッサムは、これまで複数のクリエイター達によって何度も描きなおされてきた。実写映画ではティム・バートン版『バットマン』(1989)でコミックから出てきたようなゴッサムの街が、クリストファー・ノーラン版『バットマン ビギンズ』(2005)ではリアリスティックなゴッサムの街が描かれた。ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』(2014-2019)ではゴッサムの街で成り上がっていくキャラクター達の群像劇が全100話で描かれている。
2019年10月に公開され、空前の大ヒットを記録した映画『ジョーカー』の舞台もゴッサムだ。1980年代のニューヨークをモデルに、貧富の格差が拡大し、財政難によって街全体が荒んでいくゴッサムの様子が描かれた。
キャシー・ヤン監督が語るゴッサム
そして、映画『ハーレイ・クイン』でゴッサムの街を描きなおすことになったのは、インディーズ映画『デッド・ピッグス (原題: Dead Pigs)』(2018)で注目を集めた新進気鋭のキャシー・ヤン監督。DCコミックスの作品を原作とした映画作品では、初のアジア系女性監督として『ハーレイ・クイン』に抜擢された。
キャシー・ヤン監督は『ハーレイ・クイン』でどのようにゴッサムを描きなおすのか。同作で描かれるゴッサムについて、キャシー・ヤン監督はVariety誌に以下のように語っている。
これまでとは全く違うゴッサムを描きたかったんです。ハーレイの目で見た、私たちが全く見たことのないゴッサムを。「バットマン」で描かれるゴッサムは、マンハッタンのダウンタウンのような非常に頑丈で背の高いアール・デコの塔が立っているような場所でした。私は、『ハーレイ・クイン』におけるゴッサムは、異なる雰囲気であるべきだと思ったんです。これはハーレイ・クインの世界だからです。
「ハーレイ・クインの世界」という表現が印象的だ。大富豪であるバットマンの視点から描かれることが多かったゴッサム・シティだが、映画『ハーレイ・クイン』では、ハーレイの目で見たゴッサムの街が描かれるという。更に、キャシー・ヤン監督は『ハーレイ・クイン』のゴッサムの様子について、こう続ける。
もうちょっとスクラップぽくって、マンハッタン以外のニューヨークの街のような雰囲気の場所です。加えて、激しさとカラフルさがあることも確認しておきたかった。ザラザラした街だけれど、同時に人々はそれを楽しんでいます。まだ諦めていないんですよ。“機能不全に陥った哀しい世界”ではありません。
「マンハッタン以外のニューヨーク」という箇所については、「outer borough」という言葉で表現されている。これはニューヨークの中でも、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、ステタンアイランドといったマンハッタン以外の地域をさす言葉だ。クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト ライジング』(2012)はマンハッタンでも撮影が行われ、都会的なイメージがあったゴッサム。『ハーレイ・クイン』では、そうではない場所に暮らす人々を軸とした物語が描きだされるようだ。
また、「激しさとカラフルさ」「“機能不全に陥った哀しい世界”ではありません」という言葉から、トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』のような絶望的な雰囲気のゴッサムとも一線を画していることがわかる。果たして、キャシー・ヤン監督は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』でどのように「ハーレイが見たゴッサム」を描き出したのだろうか。
映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』は2020年3月20日(金) より日本公開。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
なお、キャシー・ヤン監督は、『ワンダーウーマン』(2017)、『ワンダーウーマン 1984』(2020)で指揮をとったパティ・ジェンキンス監督からの助言についても明らかにしている。詳細は以下のリンク先から。
キャシー・ヤン監督版ゴッサムを彩るオリジナルサウンドトラック、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY:ザ・アルバム』は2020年3月4日(水)に発売。