京フェス2019が開幕
10月12日(土)、毎年恒例となっている京都SFフェスティバルが2019年も無事に開催された。台風19号接近による影響も懸念されたが、前日の11日には本会のゲスト全員が参加・登壇することが発表されていた。京都SFフェスティバルでは毎年豪華ゲストが集結し、ここでしか聞けないトークが繰り広げられる。2019年も木原善彦、藤井光、小川一水、小川哲、小林泰三、矢部嵩と、著名作家・翻訳家が登壇。会場が大いに盛り上がりを見せる中、イベントは進行している。
実験小説を語る
午前中には「実験小説を語る」と題した企画にウィリアム・ギャディス『JR』(2018) で第5回日本翻訳大賞を受賞した木原善彦と、アンソニー・ドーア『すべての見えない光』(2016) で第3回日本翻訳大賞を受賞した藤井光が登場。『JR』における誰が話しているかを明示しないセリフ回し、女性版と男性版が出版されたミロラド・パヴィチの『ハザール事典』(1993)、Microsoftのパワーポイントを利用して物語が綴られるジェニファー・イーガンの『ならずものがやってくる』(2012) などが話題に挙げられ、最前線に立つ翻訳家二人による解説が繰り広げられた。また、同企画では事前に募集された翻訳案をもとにした公開翻訳レクチャーも実施。翻訳に際しての言葉選びなど、貴重な知識が語られている。
小川対談
午後からの「アリスマ王vs魔術師 小川一水×小川哲対談」と題された企画には「天冥の標」シリーズ、『アリスマ王の愛した魔物』で知られる小川一水、『ゲームの王国』(2017) で第38回日本SF大賞を受賞し、9月に『嘘と正典』が発売されたばかりの小川哲が登場。“小川対談”が実現した。二人が家族から受けた影響や読書遍歴が明らかにされた他、小川哲のデビューまでの道のりについて等、京フェスならではのディープなトークが繰り広げられた。
ホラーとSF
本会のトリを飾ったのは『海を見る人』(2002)、『アリス殺し』(2013) で知られる小林泰三と、『魔女の子供はやってこない』(2013)、『〔少女庭国〕』(2014) の矢部嵩による「ホラーとSF——『未知』を描く2ジャンルの交点」。ホラーとSFという二つのジャンルを自在に行き来する二人によって、お互いの作品に対する解説や二人のジャンル観、執筆業に対する向き合い方が存分に語られている。
この後、京都SFフェスティバルは19時より合宿の部に入る。京フェスの合宿では様々な持ち寄り企画が実施され、SFファンたちが朝までSF談義に花を咲かせる。
京都SFフェスティバルは、35年以上の歴史を誇る日本でも有数のSFコンベンションの一つ。毎年10月に京都大学SF研究会のメンバーを中心とした京都SFフェスティバル実行委員会によって開催されている。
写真提供:京都SFフェスティバル実行委員会