2023年12月15日(金)より全国順次公開が決定
2019年にジョコ・アンワル監督・脚本作品としてインドネシアで公開された『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』。ブンミラゲットがMCUに倣い始めたBCU(ブンミラケット・シネマティック・ユニバース)の第1作である『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』は、雷に打たれて雷の力を得た貧困地域出身の孤児だった警備員のサンチャカが、雷の力と鍛えられた技を武器に街の腐敗とマフィアに戦いを挑む物語だ。そのようなインドネシアの社会問題をも描くBCUだが、その第2弾である『スリ・アシィ』が2023年12月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開が決定した。
『スリ・アシィ』はジャワ島のムラビ山噴火に巻き込まれ、母親の死の間際に生まれた少女のアラナが孤児院で正義感の強い格闘家として育ち、女神の力に目覚めインドネシアの社会の腐敗と悪魔の精、そして火の女神に立ち向かう物語だ。『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』と同じくブンミラケットの同名コミックの人気ヒーローの実写化だが、『スリ・アシィ』の物語は稲作と豊穣の女神である。
そのようなデヴィ・スリ伝説をモチーフにした『スリ・アシィ』を現代によみがえらせるのはインドネシア・ジャカルタ出身かつインドネシアで最も影響力を持つと言われるウピ監督だ。ウピ監督はインドネシア国内で最も歴史と権威を持つインドネシア映画祭(FFI)で数多くのノミネートもされており、インドネシアで最も尊敬を集める女性の1人にも数えられている。そのようなウピ監督は『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』のジョコ・アンワル監督ともに『スリ・アシィ』の脚本も手がけている。
主人公のスリ・アシィ/アラナを演じるのはインドネシア・ジャカルタ出身のペフィタ・ピアースだ。ペフィタ・ピアースはInstagramで1800万人のフォロワーを抱えるインドネシアが誇る大人気俳優だが、そのような知名度だけで主演に抜擢されたわけではない。ペフィタ・ピアースは若くしてキャリアをスタートし、『デニアス、セナンドゥン・ディ・アタス・アワン(英題:Denias, Singing on the Cloud)』にてエンジェル役で初出演を果たした。
2度目の映画出演作『ロスト・イン・ラブ(原題:Lost in love)』で約1100人の中からオーディションにより主演の座を勝ち取っている。『ロスト・イン・ラブ』での好演によりインドネシア映画祭(FFI)の最優秀主演女優賞にノミネートされ、その記録は当時のインドネシア映画祭(FFI)史上最年少となっていた。
脇を固める俳優陣も豪華で、『ウーマン・ウィズ・ア・ターバン(英題:Woman with a Turban)』(2009)でインドネシア映画祭(FFI)の助演男優賞を受賞し、米国アカデミー賞のインドネシア代表作としてエントリーされた『ハウ・ファニー(ディス・カントリー・イズ)(英題:How Funny(This Country is))』(2010)で主演を務めたレザ・ラハディアンも出演する。他にもカンヌ国際映画祭で上映された『チュッ・ニャ・ディン』(1988)、ジュリア・ロバーツ主演の『食べて、祈って、恋をして』(2010)に出演し、『枕の上の葉』(1998)で第4 3 回アジア太平洋映画祭において最優秀主演女優賞を受賞したクリスティン・ハキムも出演している。クリスティン・ハキムはインドネシア映画祭(FFI)を9 回の受賞しており、2015年には役所広司らと共に主演を務めた『眠る男』(1996)で日本文化の国際的評価向上への貢献が評価され、旭日小綬章が授与されている。
『ジャカルタVSエブリバディ(原題:Jakarta vs Everybody)』でインドネシア映画祭(FFI)の最優秀主演男優賞にノミネートされたジェフリ・ニコル、インドネシアで高い人気を誇るディアマス・アンガラ、『インペティゴール(英題:Impetigore)』(2019) でストラスブール・ヨーロピアン・ファンタスティック映画祭の最優秀外国商業映画賞(金の蛸賞)にノミネートされるアリオ・バイユなど、主演以外の俳優陣からも目が離せない。
そのような豪華スタッフによって製作された『スリ・アシィ』。物語もMCUのようなヒーロー作品を踏襲しつつ、インドネシアの社会問題にも切り込んだ作品となっている。今後の日本におけるBCU展開の情報公開に注目していきたい。
『スリ・アシィ』は2023年12月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開。
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