全米映画俳優組合賞で停戦求める意思表示
イスラエルによるパレスチナへの侵攻が続く中、ハリウッドや欧州の映画業界で停戦を訴えかける動きが広がっている。米時間2024年2月25日(日)に開催された全米映画俳優組合賞(SAGアワード)の授賞式で、複数の俳優が「Artists4ceasefire」のピンバッジを胸につけて式に出席。イスラエルに即時停戦を求める意思表示を行った。
「Artists4ceasefire」は米国のアーティストたちによる運動で、イスラエルに即時停戦と拘束されているパレスチナの人々の解放を求めるよう米議会とバイデン大統領に要求している。公式サイトの声明では、そうした要求と共に、「沈黙し、何もしなかったと後世に語り継ぐことを私たちは拒否します」と記されている。MCUのハルクことブルース・バナー役などで知られるマーク・ラファロや、映画版「バイオハザード」シリーズで知られるミラ・ジョヴォヴィッチら、数多くのハリウッド俳優が賛同者として名を連ねている。
全米映画俳優組合賞の授賞式では、ドラマ『ギルデッド・エイジ -ニューヨーク黄金時代-』(2022-) のモーガン・スペクター、ドラマ『キャシアン・アンドー』(2022-) のエボン・モス=バクラック、MCUのクレアリー捜査官役で知られるアリアン・モーイエド、イスラエル映画を原作としたミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』(2016) でトニー賞主演男優賞を受賞したトニー・シャルーブらが「Artists4ceasefire」のピンバッジを付けて登場した。
✅ | Ebon Moss-Bachrach has renewed his call for a #CeasefireNOW.
He wore an Artists for Ceasefire pin to the #SAGAwards tonight. pic.twitter.com/lTZuCLUmGn
— Сeasefire Tracker (@Ceasefire_Track) February 25, 2024
また、2023年度の作品を対象にした今回の全米映画俳優組合賞では、ドラマ『THE LAST OF US』(2023-) シーズン1で主演を務めたペドロ・パスカルがドラマシリーズ部門の男優賞を受賞。ペドロ・パスカルは、2023年12月26日に自身のInstagramでパレスチナでの即時停戦を求める投稿を行なっている。この投稿では、同じくイスラエルに即時停戦を訴えている国境なき医師団への寄付も呼びかけた。
当然のことではあるが、今回のペドロ・パスカルの受賞は、停戦への働きかけが演技に対する評価において何ら妨げになるものではないことを示している。ペドロ・パスカルと、今回ピンバッジをつけて登場したエボン・モス=バクラックは、2025年公開予定の映画『ファンタスティック・フォー(原題)』で共に主演を務めることが発表されたばかり。影響力を持つスター俳優たちの呼びかけによって、イスラエルによる殺戮を止めるための働きかけは更に広がっていくだろう。
欧州でも行動が
動きはヨーロッパでも起きている。2月19日(水) に開催された英アカデミー賞の授賞式では、プレゼンターのザイナブが「Artists4ceasefire」のピンバッチをつけて式に出席した。
My outfit at the BAFTA Film Awards 2024.
I wore a black velvet cape dress with a hood and gloves, and an Artists4Ceasefire pin. #BAFTA #BAFTA2024 #baftas #EEBAFTAs pic.twitter.com/IUd876fIZF
— Zainab ⁷ (@zainabjiwa) February 19, 2024
また、2月25日(日)まで開催されていたベルリン国際映画祭では、映画祭の関係者たちによって、パレスチナでの即時停戦と拘束されているパレスチナの人々の解放、そしてより大きな組織がリーダーシップを発揮することを求める公開書簡が発表された。映画祭の最終日には、併設見本市のヨーロピアン・フィルム・マーケットで約50人がイスラエルに対する抗議デモを行い、会場には「Lights, Camera, Genocide(ライツ、カメラ、ジェノサイド)」と書かれた横断幕が掲げられた。
しかし、これを報じた米Deadlineは、最後に「ガザ地区におけるイスラエルの軍事行動は、ハマスによるテロ攻撃に対抗して行われている」と付け加えており、親イスラエル派への目配せを忘れていない。
2023年11月にディズニー映画『ウィッシュ』が米国で公開された際には、同作がイスラエル批判を思わせるストーリーになっているにもかかわらず、米国の大手映画メディアがそれを指摘することはなかった。米ウォルト・ディズニー社はイスラエル側の被害だけにコメントを出して支援を行ったことで、スタジオ側の姿勢はファンからも批判を受けているが、米大手メディアによる忖度が続いていることは確かだ。
全米俳優組合(SAG-AFTRA)が2023年に大スタジオを相手取って大規模なストライキを実行し、AI利用やプラットフォーム配信に対する利益分配を勝ち取ったことは記憶に新しい。権利の実現のためには、大企業相手にも忖度しないのが組合だ。
ドラマ『THE LAST OF US』や『マンダロリアン』(2019-) 、映画『ファンタスティック・フォー』などでの主演で、今やハリウッドのナンバーワン俳優となったペドロ・パスカルが停戦を呼びかけている。そして、組合の人々も共に動き出している。アメリカにはまだ、人権のために行動するクリエイターやアーティストがいる。引き続き、一刻も早い停戦を訴えていこう。
Source
Deadline / Pedro Pascal Instagram
映画『ウィッシュ』の解説はこちらの記事で。
ペドロ・パスカルとエボン・モス=バクラックが主演を務める映画『ファンタスティック・フォー』についてはこちらから。