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二刀流生活にセクハラ問題…。『ブラックパンサー』と『ワンダーウーマン』に見る、困難を乗り越えて実写化を成功させた若手映画監督

なぜ若手監督がSFの実写化作品を手がけるのか

若手監督に託された『攻殻機動隊』の実写化

今やSFの実写化映画は、若手映画監督たちの登竜門となりつつある。例えば、ルパート・サンダーズ監督が手がけた「攻殻機動隊」の実写化映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)は、同監督にとっては『スノーホワイト』(2012)以来となる二作目。主演女優との不倫騒動でキャリアに影を落としたかけた後の起死回生をかけた一作だった。
次々と興行記録を塗り替えた『ブラックパンサー』(2018)の監督を務めたのは、ライアン・クーグラー監督。公開の時点で若干31歳(!)。『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)のヒットを受け、同作の監督に抜擢された。ではなぜ、実写化に実績の少ない若手監督が起用されるのだろうか。実写化される作品は、どれも失敗が許されない名作ばかり。しっかりバジェットもつくのだから、映画界の巨匠たちに任せてしまえばよいのではないだろうか。

若手監督の活躍が増えた理由

理由の一つには、監督以外にも「制作総指揮」や「プロデューサー」と呼ばれる映画界の大物たちが、複数で映画制作に関わる体制が主流になったことで、若手監督に安心してトップを務めさせることができるようになったことも挙げられる。その一方で、若手監督に、とりわけ「実写化作品」を任せる背景にあるのは、そもそも「実写化」という映画制作の手段自体が、原作の「リメイク」という機能を同時に担っているということだ。技術的に小説やコミックの作品を実写化する作業はもちろんのこと、かつての名作を現代社会の感性に沿ったものに作り直す必要にも迫られるのだ。その役目には、新しい時代の感性を持った若手監督がピッタリというわけだ。そんな次世代監督の感性を発揮して大ヒット作品となった、二つの実写化映画の例を見てみよう。

『ブラックパンサー』を生み出した若手監督の感性

二刀流生活を乗り越えて

すでに触れた通り、世界を熱狂させた『ブラックパンサー』を手がけたのは、ライアン・クーグラー監督。

1986年にカリフォルニア州オークランドで生まれた彼は、セイントメリーズカレッジ・カリフォルニア校にアメフト選手として奨学金を受けて入学。同大学は、NCAA(全米大学体育協会)一部に所属するスポーツの名門校だ。ここで創作文章のクラスを受講したクーグラー青年は、当時の英語の教員からその創作の才能を見出され、脚本家になることを勧められていたという。大学アメフトの選手としてのストイックな生活を継続しながらも、時間の許す限り映画に関するクラスを受講していたクーグラー青年。編入したカリフォルニア州立大学サクラメント校を卒業した後、USCスクール・オブ・シネマティック・アーツで本格的に映画制作について学び始めた。まさに文武両道の二刀流。映画づくりも学校で学ぶという現代的なステップを経て、若くして歴史上もっともヒットした映画の一つを完成させたのである。

『ブラックパンサー』の新しさと、それを支えた「相棒」

『ブラックパンサー』では、映画公開後に大人気となったヴィラン(悪役)のキルモンガーに、テーマソングとしてヒップホップ界で流行しているトラップビートを採用した。キルモンガーの口調もラップを思わせるものがあり、同作の重要な要素でもある現代アメリカの精神性を演出するのに一役買っている。

キルモンガーを演じたマイケル・B・ジョーダンは、ライアン・クーグラー監督の長編処女作『フルートベール駅で』(2013)において、同じく長編映画初主演を務めると、『クリード チャンプを継ぐ男』でも主演を務めた。『ブラックパンサー』で三度目の共演となる。実は、クーグラー監督とジョーダンは生まれ年は違えど同学年。映画界においては、ここまで若い二人が二人三脚のキャリアを歩んできたと言える。また、同作では制作スタッフ、登場キャラクター共に女性が活躍を見せ、空前の大ヒットを生み出した。若手監督の現代的な感性が、ようやく実写化された黒人ヒーローのデビューを、華々しく歴史に刻み込んだのだ。

『ワンダーウーマン』を生み出した感性

歴代最高記録を叩き出した女性監督にも「相棒」の姿が

「女性の活躍」といえば、2017年に公開された『ワンダーウーマン』(2017)。指揮をとったのはパティ・ジェンキンス監督。公開時点で45歳。ハリウッドではまだ「若手」といっていいだろう。2003年に『モンスター』を手がけた後は主にテレビドラマを手がけており、『ワンダーウーマン』は彼女にとって二作目の長編映画。アメコミ作品の実写化映画としては初の女性監督作品となった。すでに『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)でワンダーウーマン役を演じていたガル・ガドッドが主演を務め、女性監督の映画としては歴代最高のヒットを記録した。ジェンキンス監督とガドッドは、初めて会ったその日から数時間話し込んだというほど相性バツグンのコンビ。ガドッドがジェンキンス監督を「運命の人」と表現するほどだ。揃ってバラエティ番組に出演するなど、メディアの前でも仲睦まじい姿を頻繁に見せている。

ジミー・ファロンの『ザ・トゥナイトショー』でゲームに興じる二人

そんな名コンビを生み出した『ワンダーウーマン』は、次回作の制作がすでに決定している。実写化はどうしても「人」を巻き込む。いくらプロットや演技が優れていたとしても、製作陣の人間関係がうまくいかなければ、良い作品を作り出すのは難しくなるだろう。特に映画制作において大きな実績がなかったジェンキンス監督にとっては尚更のこと。その意味では、『ワンダーウーマン』は人に恵まれた実写化映画作品だったのだ。しかしその裏で、次回作の制作を脅かすある事件が、まさにその人間関係を巡って発生していた。

#MeToo運動で発覚したセクハラ問題の余波

2017年11月、ハリウッドにおける性被害の告発から広がりを見せた#MeTooムーヴメントの中で、複数の女性がブレット・ラトナーからのセクハラ被害を告発。ラトナーは、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(2006)で監督を務めたことでも知られる。このラトナーが率いる映画制作会社ラットパック・エンターテイメントは、『ワンダーウーマン』の製作と配給を手がけるワーナー・ブラザーズと共同出資に関する契約を結んでいる。そして、世間を騒がせたのが、ラトナーがワーナー・ブラザーズと利害関係にある限り、ガドッドは『ワンダーウーマン』の次回作への出演を拒否するという報道だった。結果的にガドッドはTodayのインタビューに、ラトナーの排除を要求するまでもなく両者間の契約は終了する予定となっていたと説明、ラトナーへの抗議は否定しない形で次回作への出演を表明している。ジェンキンス監督もすかさずEntertainment Tonightに「報道が出た頃には済んでいた話」と述べ、ガドッドの説明をフォローした。

実写化に挑む者が貫かなくてはいけないもの

女性が主演のスーパーヒーロー映画を女性監督が撮影する、さらに女性の活躍という作品のテーマを貫くためには、現実に起きている問題にも立ち向かわなければならない。ファンタジーではなく、現実と地続きの「もしも」を描くSFだからこそ、実生活との乖離は作品の魅力を失わせる要因にもなる。それこそが、SF実写化の難しさなのだ。前例なき挑戦もそうだが、現在進行形で起きている問題を敏感に捉えるには、フレッシュな若手監督の力が必要だ。そして、若手監督たちがそれを乗り越えて、素晴らしい作品を作り出すことができるということは既に証明された。今後も現れるであろう映画界の若い才能に期待しよう。

– Source –
© 2018 Hollywood Chamber of Commerce.
© 2018 CBS Studios Inc.

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