『アイアンハート』第2話はどうなった?
MCUドラマ『アイアンハート』が2025年6月25日(水) よりディズニープラスで配信を開始。映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022) に登場したリリ・ウィリアムズを主人公に据え、シカゴの街でニューヒーローの物語が描かれる。
今回は、初週に配信された3話の中から、第2話についてネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『アイアンハート』第2話の内容に関するネタバレを含みます。
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『アイアンハート』第2話ネタバレ解説
その名はN.A.T.A.L.I.E.
ドラマ『アイアンハート』第2話「トンデモAI」の監督は第1話と変わらずサム・ベイリーが担当する。脚本はドラマ『イン・ザ・ダーク』(2019-2022) などに参加していたマラリー・ハワードが手掛けている。
『アイアンハート』第2話の冒頭では、前話のラストで誕生したナタリーのAIが「J.A.R.V.I.S.」のように「N.A.T.A.L.I.E.」という表記であることが明かされる。N.A.T.A.L.I.E.は原作コミックにも登場している。
3Dで投影されるナタリーの服装はナタリーとリリの継父が死んだ日のガレージでの姿と同じで、前日にリリがあの日のことを思い出していたことで再現されたようだ。リリはワカンダのAIであるグリオを再現しようとしていたが、むしろトラウマである死んだ親友がAIとして蘇ってしまったのである。
ナタリーAIの存在を認めたくないリリだったが、ナタリーの弟のエグゼビアからサバのライブに誘われる。サバとはシカゴ出身のラッパー/プロデューサーのSabaのことだ。
海賊っぽい仲間たち
パーカーの会議に呼び出されたリリは、メンバーの紹介を受ける。ハッカーのスラッグはマドリプール出身で、違法オンラインカジノで荒稼ぎしていたところをスカウトされたという。マドリプールといえばドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) に登場した犯罪都市だ。2026年配信のドラマ『ヴィジョンクエスト(仮題)』でも登場が噂されている。
ちなみに回想シーンではスラッグがドラァグクイーンをしていた頃の様子が見てとれる。各メンバーの過去を紹介する回想シーンは短いながらも楽しく、「アントマン」シリーズでのルイスの回想を彷彿とさせる。
反則でリーグから追放され、ストリートファイトで稼いでいたアスリートのロズとジェリ、爆破のプロであるクラウン、スティレット(短剣=ナイフのこと)が得意なパーカーのいとこのジョン……ワルの一味だが楽しそうで海賊っぽさもある愉快なチームだ。
スチューは本当にクビになったようでリリが入れ替わりでチーム入り。シェイラ・ザラテが率いるトンネル社が、シカゴの貨物トンネルを個人用高速道路に生まれ変わらせるプロジェクトの試運転を行うため、システムに侵入して妨害するというのが今夜の計画だ。ミステリオチームも最初はこんな感じだったのだろうか。
ジョーを演じるのは…
アーマーを修理するリリが起動しようとする「リパルサー」は、アイアンマンの掌にも装備されていた光学兵器だ。ナタリーAIは闇サイトでパーツを持っていそうな人物として近所のジョー・マクギリカディを発見。リリはジョーに会いにいくことにする。
その道中、リリがスーツを隠すために電車内で旗を盗んだ集団はMLBシカゴ・カブスのファンだ。カブスファンは熱心なファンとしても知られているが、「ブリーチャー・バム(外野席の飲んだくれ)」という俗称も知られている。『アイアンハート』第2話の登場シーンでも、どうやら酔っ払っているようだ。
そして白人たちが住む閑静な住宅街で登場したジョー・マクギリカディは、オールデン・エアエンライクが演じている。映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018) で若き日のハン・ソロを演じたことで知られ、ドラマ『BRAVE NEW WORLD/ブレイブ・ニュー・ワールド』(2020) でも主演を務めた。
リリはリパルサー・トランスミッターを手に入れるため、FBIに通報するとジョーを脅迫。第2話はジョーと共にリパルサー・トランスミッターを取りに出かける物語が展開される。ジョーはなかなかいいキャラで、技術はあるが言いなりになってしまう性格の人物だ。
リリはむしろ白人男性は恵まれているのだから自信を持っていいように利用されないでと助言している。ジョーが車で流す曲はカナダのシンガー、アラニス・モリセットの失恋ソング「You Oughta Know」(1995)。人種の話をした後でリリが白人歌手の歌を口ずさんだため微妙な空気が流れ、リリは「私は複雑な人間なの」と反論している。
ジョーの背景
ナタリーがノートPCから脱獄してリリの母と対話している間、リリはジョーがコレクションを隠しているサイロへ。ジョーの弱気な態度とは裏腹に、大量の兵器が隠されていた。これは良いラボになりそうだ。
ジョーはエンジニアだった父を近くに感じられるとしてこのコレクションを持っているそうで、臓器移植やインプラントといった生体工学は人助けに使えると話す。生体工学の話で思い出すのはヴィジョンの存在だ。ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) ではヴィジョンの遺体からホワイトヴィジョンが作られており、ジョーがMCUの科学の世界と魔法の世界の橋渡し役になる可能性もある。
それにジョーの本職は技術倫理コンサルで、リリは脳をスキャンして完成したAIナタリーについても相談している。技術だけでなく倫理的な観点でも助言できるのがジョーの強みだと言える。
そして、リリは「MRF(磁力反発フィールド)」をスーツに取り付けるが、ジョーが触れるようにアイアンマンの動力炉だったアーク・リアクターに似ている。アーク・リアクターは『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) では輸送機に大量に保管されていたが、リリには手に入らない代物。リリのスーツは太陽光と風力で動くエコな仕様となっているようだ。
第1話のMITで作っていた白いアイアンスーツに続き、『アイアンハート』では早くも第2話で別バージョンのスーツが完成。装甲の塗料はハゲているが、リパルサーがついていてアイアンマンのスーツに一歩近付いている。
恐怖の闇バイト
リリが新たなスーツでシカゴの街に向かい、パーカーのチームが作戦を実行する際に流れる曲はチャカ・カーン「Ain’t Nobody」(1983)。「私をこんなに愛してくれて、幸せにしてくれて、こんな気持ちにさせてくれる人は他にいない」と歌われており、リリのアイアンスーツへの想いが表現されているようだ。
リリはナタリーの介入でウイルスの入ったUSBを落としてしまうが、ナタリー自身の分析によって手動でシステム停止を起こすことに。実はナタリー、かなり強力なAIなのかもしれない。リリは「アダムス・ファミリー」シリーズに登場する“手”のハンドのように手だけを任務に向かわせる場面も。アイアンマンとは全く違う戦い方を披露している。
車をプラットフォームから落とすことで緊急事態と看做され、ファイアウォールは無効に。その間にスラッグが侵入してシステムを止めることに成功したのだった。スラッグもまた凄腕のハッカーだったのだ。
フッドことパーカーはローブで透明になった状態で登場。システムを乗っ取ったことをネタに、トンネル社の代表に6桁の給与とトンネルの無料使用権と共同経営権を強請る。6桁の年収というと10万ドル以上、つまり年収1,000万円以上ということである。強請りのレベルが想像してたのと違う。
無茶苦茶なようだが、「ハッキングされたことを投資家たちに知られてもいいのか?」という脅しは現代ではかなり有効であるように思える。ついに悪事に手を染めてしまったリリ。だが地下から出てきたところを警備員に見つかり、銃を向けられるとナタリーはフリーズしてしまう。フッドの銃弾で警備員は倒れてリリは難を逃れたが、闇バイトと同じで状況はどんどん悪い方に向かっている……。
流れた曲の意味は?
フッドのアジトで流れる曲はルーペ・フィアスコ「Kick, Push II」(2006)。ルーペといえばデビュー当時はシカゴ出身のナードラッパーで、同じ年に発表したスケーター視点の曲「Kick, Push」でブレイク。デビューアルバム『Food & Liquor』に続編が収録された。
「Kick, Push II」は、スケートに夢中になっていた若者が、いつしかそれしかできなくなっていたという哀しい現実を突きつける曲になっている。もはや社会に居場所は見出せないが、それでも自分のスタイルで生きていこうという内省的な歌詞が特徴で、このシーンのリリの心情とリンクしているようでもある。
警備員を撃たせてしまい乗り気じゃないリリ。パーカーの体はトカゲのようにウロコだらけという噂を聞くが、パーカーはパーカーで仲間に良いスピーチをする。無力感は人を変える、人に見つけられなかったお前たちの才能を俺は見ている、俺たちの凄さを見せてトンネル社は言うことを聞くようになった、お前らが大事だ……パーカーはそこら辺のアベンジャーズのリーダーたちよりリーダーシップがある気がする。
ちなみにリリはシャンパングラスを渡されているが、『ワカンダ・フォーエバー』の時点でリリは19歳なので、まだ未成年だろう(アメリカではお酒が飲めるのは21歳から)。一応リリはお酒に口はつけていないが、年齢制限のレーティングを上げないための配慮かもしれない。
ラストの意味は?
リリのアイアンスーツは風力とソーラーパネルで充電している姿を見せる。マーベルといえば原子力やら宇宙のエネルギーやら派手なエネルギーを用いてきた印象があるので、こんなに地道な充電方法を見るのはなかなか新鮮だが、今時らしい。
復活したAIナタリーは、パーカーから妙なエネルギーを感じたを報告するが、リリは、今は宇宙人、アンドロイド、魔法使いの存在は当たり前だと反論する。この「宇宙人、アンドロイド、魔法使い」はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) でサム・ウィルソンが人類の敵「ビッグ3」として挙げたものと一致している。バッキーは全然知らない様子だったが、リリが知っているのを見るにやはりサムの方が常識人だったようだ。
リリはパーカーと完全に組むわけではないとナタリーを諭し、改めて協力を要請。第2話の冒頭では消されそうになっていたAIナタリーだが、正式にコンビを組むことになったのだった。
リリがエグゼビアに誘われたライブでは、本物のラッパーのサバが登場。「Fearmonger」(2021) をライブで披露している。「パダワン」と呼ばれたリリがエグゼビアに「トレッキーだと思ってた」と言うのは、「スター・トレック」ファンではなく「スター・ウォーズ」ファンだったことを残念がるというジョークだ。
一方のパーカーはケープに苦しめられていたが、心配するジョンを「あいつに代償を払ってる」と突き返す。一方、リリはAIナタリーについて母に聞かれ、「ゲイリーも作れる?」と問われる。AIナタリーは偶然の産物だが、やはり人は夢のテクノロジーを目の前にすると欲しがるようになる。テクノロジーによって人を救うこともできるが、心の整理がついていたことを蒸し返すことにもなりうる。
『アイアンハート』第2話のラストは、ジョー・マクギリカディが隣人の犬のフンを踏み、その隣人の庭の花を切り落とす復讐に打って出る。最後に流れる曲はリリと歌ったアラニス・モリセット「You Oughta Know」だ。失恋に伴う怒りを表現した曲だが、言いなりになっていてはダメだというリリの助言を行動に移したという点で、リリとジョーのタッグに期待を持たせるラストとなっている。
『アイアンハート』第2話ネタバレ考察&感想
3人の運命やいかに
『アイアンハート』第2話では、リリはついにパーカーのギャングの一員として仕事を始めてしまった。パーカーは事前に三つの仕事をやれば契約金と別にさらに金をやると言っており、あと二つの仕事が残されていることが分かる。
パーカーも残り二つの仕事を成し遂げれば今の生活から抜け出す算段があるのだろうか、今回は金だけでなく輸送網を手に入れていることから、何らかの大目的があるものと考えられる。ケープに身体を蝕まれている様子のパーカーだが、その目的を果たすまで身体が持てばいいと考えているのかもしれない。
第2話ではジョー・マクギリカディも登場。オールデン・エアエンライクがハン・ソロとは180度違うキャラを見事に演じている。今回触れられた父の存在も含め、ジョーというキャラがどんな風に発展していくのかという点も注目ポイントだ。
それぞれに違う種類の困難を抱え、乗り越えようとしているように見えるリリ、パーカー、ジョー。この3人がどんな結末を迎えるのか、引き続き『アイアンハート』第3話を見ていこう。
ドラマ『アイアンハート』はディズニープラスで独占配信中。
コミック『インビンシブル・アイアンマン:アイアンハート』は吉川悠の翻訳で発売中。
本記事の筆者が翻訳を担当した、500点以上のイラストと解説と共にMCUの歴史を辿る『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』は好評発売中。
『アイアンハート』第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。
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