映画『バズ・ライトイヤー』は『インターステラー』と同じ設定? “ウラシマ効果”がストーリーの鍵に【考察】 | VG+ (バゴプラ)

映画『バズ・ライトイヤー』は『インターステラー』と同じ設定? “ウラシマ効果”がストーリーの鍵に【考察】

©️2021 Disney Pixar

ピクサー最新作『バズ・ライトイヤー』を考察

ピクサーは2021年10月27日(水)、映画『バズ・ライトイヤー(原題:Lightyear)』のティザー予告映像とポスターを初めて公開した。『バズ・ライトイヤー』は、「トイ・ストーリー」シリーズに登場するおもちゃのバズ・ライトイヤーの“本編”を描く。バズ・ライトイヤーがスペース・レンジャーになる前のテストパイロット時代の物語が中心になるという。

公開されたティザー映像では、様々なSF作品を想起させる演出が詰め込まれていた。「トイ・ストーリー」とは違った雰囲気の本格SF映画になることが予想され、かつてピクサーが『ウォーリー』(2008) で見せた本格宇宙SFの再来に期待が高まる。

ティザー映像の解説はこちらの記事から。

本格SFになることが予想される『バズ・ライトイヤー』のティザー映像には、その内容に関するヒントも散りばめられていた。今回特に注目したいのは、『バズ・ライトイヤー』でバズ・ライトイヤーが就く任務の内容だ。

バズ・ライトイヤーの任務とは

『バズ・ライトイヤー』のティザー映像で見えてくるのは、クリストファー・ノーラン監督が手掛けた2014年公開のSF大作映画『インターステラー』との相似点だ。ティザー映像の冒頭で一瞬映し出されるのは、バズ・ライトイヤーの乗る宇宙ジェット機が太陽を半周するシミュレーション映像。太陽の引力を利用したスイングバイ*だろうか、太陽に沿って飛ぶジェット機が加速していくことが表示されている数値の増加で示されている。

*スイングバイ:星の周辺をかすめるようにして飛行し、重力を利用して加速する技術。

そして、バズ・ライトイヤーの出発地点には三つの青いリングが表示されている。出発地点の星にはクレーターが見られるが、これは月か、それとも荒廃した地球だろうか(サイズとしては月のサイズだ)。三つのリングは、ティザー映像の0:55〜にも登場する。リングを潜ることには、どのような効果があるのだろうか。

次に注目したいのは、このバズ・ライトイヤーの謎の任務をドロイドが図解して説明している1:08〜の映像だ。ホワイトボードには、先ほどのシミュレーション映像と同じ図が描かれており、太陽を半周したところでジェット機が「HYPER SPEED」に達することが示されている。ハイパースピードとは、光の速度を超えることと捉えることができる。その先にリングがあり、リングを通って元の出発点に帰ってくるという道のりになっている。

では、なぜバズ・ライトイヤーはハイパースピードに達する必要があるのだろうか。それはホワイトボードの上部で説明されている。ここに描かれているのは、「YOU」=ジェット機に乗り込むバズ・ライトイヤーと、「US」=バズを見送る基地の人々だ。そして、「US」の方には1年ごとに区切った4年間の時間軸の線が記されており、「YOU」の方には1分ごとに区切った4分間の時間軸の線が同じ長さで記されている。

『インターステラー』と同じ設定?

ハードSFファンの方はもうお気づきかもしれない。これは映画『インターステラー』でも扱われたウラシマ効果だ。『インターステラー』に登場する水の惑星は、近くにあるガルガンチュアと呼ばれるブラックホールの超重力の影響によって時間の流れが地球より遅くなっており、水の惑星で過ごす1時間は地球の7年間に相当する。

この水の惑星での任務に就くということは、地球に残した家族と共に過ごせたはずの時間の喪失や別れを意味する。『インターステラー』では、大きな目的と小さな幸せを天秤にかける登場人物たちの葛藤も醍醐味の一つだった。

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『バズ・ライトイヤー』のティザー映像では、これと同じ状況が示されているのだ。ドロイドが説明するホワイトボードでは、バズ・ライトイヤーがジェット機に乗って光のスピードを超えることで、バズが過ごす1分間が、他の人の1年間になることが示唆されている。つまり、本作でバズが直面するのは“孤独”だと考えられる。

バズ・ライトイヤーがどれほどのウラシマ状態を経験するのか、そもそもこのプロジェクトの目的なども現時点では不明だ。だが、仮に60分間超光速を体験すると、バズは60年分の時間を失い、100分ならば100年分を失うということになる。思っていたよりも大掛かりな設定が仕込まれているのかもしれない。

『バズ・ライトイヤー』ティザー考察

映画『バズ・ライトイヤー』の展開として考えられるのは、バズ・ライトイヤーがウラシマ効果に関する実験のテスト係を担っているというものだ。本作のバズはまだスペースレンジャーになる前のテストパイロットという設定。バスはテストパイロットとして身をもってタイムワープ実験の実証に挑戦するのではないだろうか。ハイパースピード到達後にリングが三つあることからも、3分間の3年後に帰ってくるということであれば、犠牲はあれどまだ同時代で生きていくことができる。

バズ・ライトイヤーがテストパイロットであることからも、少なくとも任務自体は壮大なものではないはずだ。だが、この実験で基地を離れていた数年間の間で重大な事件が起きたり、あるいは実験に失敗してどこかの惑星に不時着したりなど、SF映画ではクラシックともいえる様々な展開が予想できる。実際にティザー映像では未知の惑星を探索するバズの姿も捉えられている。

なお、『インターステラー』では、『バズ・ライトイヤー』のティザー映像で見られた前述のスイングバイ航法も登場する。『トイ・ストーリー2』(1999) では、「スター・ウォーズ」を元ネタにしたバズ・ライトイヤーの意外な設定も明かされており、バズのオリジンを描く『ライトイヤー』はSFネタ満載の作品になること必至だ。『バズ・ライトイヤー』の続報に期待しよう。

映画『バズ・ライトイヤー』は2022年夏に米劇場公開。

 

『バズ・ライトイヤー』ティザー映像の解説はこちらから。

 

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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