最終回第12話ネタバレ感想&解説『ガンダム ジークアクス』マチュの冒険の終わり【機動戦士Gundam GQuuuuuuX】 | VG+ (バゴプラ)

最終回第12話ネタバレ感想&解説『ガンダム ジークアクス』マチュの冒険の終わり【機動戦士Gundam GQuuuuuuX】

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『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』放送中

「ガンダム」シリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』が2025年4月9日よりテレビ放送およびオンライン配信を開始した。シリーズ構成・榎戸洋司、監督・鶴巻和哉を中心に製作された本作は、1月に公開された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が興行収入30億円超のヒットを記録したことでも話題を呼んだ。

今回は、早くも話題を呼ぶアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、「ガンダム・ジークアクス」)の最終回第12話について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の内容に関するネタバレを含みます。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』最終回第12話ネタバレ解説

ガンダム登場

ゼクノヴァにより「向こう側」から現れたシュウジは「ガンダム」に乗り「シャロンの薔薇」で眠るララァを殺そうとする。だが、「赤いガンダム」に乗るシャアはシュウジとは異なる思惑を持っているようだ。

シュウジが乗ったのは「ガンダム・ジークアクス」の原典である『機動戦士ガンダム』の主役機である「ガンダム」と見た目はそっくりの機体だ。シュウジによれば「ガンダム・ジークアクス」の世界はそもそも「シャアがガンダムに殺されない世界」を夢見たララァが作り出した並行世界の一つということらしい。

だが、そんな世界をシャア自身が否定し、イオマグヌッソを用いてララァを「向こう側」へと返そうとする。そのことにララァが傷付くと「向こう側」「ガンダム・ジークアクス」の両世界が崩壊してしまう為、ララァが目覚める前に殺すというのがシュウジの目的らしい。

キャラクターの描かれ方

シュウジの目的

ここで、改めてキャラクターそれぞれの目的を整理するとともに「ガンダム・ジークアクス」とは「どのような物語だったのか」を振り返ってみたい。

シュウジは「ガンダム・ジークアクス」登場時から謎めいた青年としてマチュを非日常へと連れ出す役割を担っていたが、本人の口から目的が語られることはなかった。

そもそも乗機である「赤いガンダム」はプロローグではシャアが乗っていたものであり、何故シュウジが乗っているのかということが物語において最初に明かされるべき謎だったのではないかという感想だ。

だが、シャアの行方を追っている筈のシャリア・ブルでさえ、赤いガンダムを発見してもパイロットがシャアではないことをNT的能力で察知するのみで、特にパイロットを拘束してシャアの行方を尋問するというような描写はなかった。

主人公であるマチュが「シュウジとの出会いによって」非日常へと踏み出すならば、そのシュウジの目的に共鳴するのか、それとも反発するのかという価値判断こそが「ドラマ」になるのではないだろうか。

シュウジは特に目的を明かさぬまま中盤でゼクノヴァにより姿を消し、最終回付近で再び現れ「自分は向こう側からやって来た」と語るとともに「ララァを殺す」という目的を明かしたが、これも唐突としか思えないという感想だ。

そもそも「向こう側」からやって来て、今までにもララァを「何度も殺した」のであれば「ガンダム・ジークアクス」世界においても無駄にクランバトルなどに参加せず最初からララァを殺しにいけば良かっただけなのではないか。

シュウジは、その存在がマチュやシャリア・ブルにとって登場時から「客観的に解明されるべき謎」であり、かつ本人の「主観的な目的」も不明という二重の謎に包まれていた。

客観的な謎というのは、「それを解く為の手掛かり」を集めて推理することにより答えに辿り着くというようなミステリー的なロジカルな解決が期待できる。

一方で、「主観」を謎にしてしまうと、それは「本人の口から語らせる」以外に答えに辿り着く方法はなく、どうとでも言える後出しジャンケンに見えてしまい物語が動いている感じがしないという感想だ。

シュウジは客観的にその謎が解き明かされていくようなヒントやエピソードが描かれなかった一方で、最後にシュウジ本人の口から「向こう側」の人間だということが明かされた。

だが、「ガンダム・ジークアクス」世界においても「ゼクノヴァ」という現象は「客観的な謎」であるはずだ。個人的な感想としては、その解明の過程で「向こう側から来た人間」としてシュウジの正体が明かされるということではなく本人の口からただ語られただけなので、ドラマとしての面白味は感じなかった。

そもそも「向こう側から来た」というだけで、シュウジがララァやシャアとどこで出会ったのか、何故そうまでララァに執心するのかは依然として謎に包まれている。

そこまでララァに執心しながらも「いくつもある代替可能な世界」の一つでしかない「ガンダム・ジークアクス」世界で偶然出会っただけのマチュに対して、「君に出会う為にこの世界に来た」と言えるほどの思い入れを何故抱いたのかは作中描写からは読み取れない。

マチュとシュウジは「出会い」と「別れ」が描かれたのみで、その間の「関係性を深める過程」はほぼ全カットされてしまったので、最後にいきなりキスシーンを挟まれても感動よりも当惑の方が大きい。

シャリア・ブルの目的

シャリア・ブルは、プロローグでシャアのザビ家を打倒した後の「ニュータイプが平和に暮らせる世界」という理想に共鳴する様子が描かれた。

だが、本人の口から語られたところによればかつて資源を求めに行った木星でエンジントラブルによって帰還できなくなった時にあらゆる社会的な役割から解き放たれ「真の自由」を味わったということだ。

そんな「世捨て人」であるシャリア・ブルが、何故シャアの理想に共鳴したのかという具体的な理由は描かれなかった。故に、ザビ家打倒による平和を何故シャリア・ブルが目指していたのかは不明瞭だった。

世捨て人だが、シャアに出会うことで「ニュータイプとしての使命」に目覚めたということならまだ納得できるが、蓋を開けてみれば最後はシャアすら「地球人類を粛清する危険な存在」として討とうとする

だが、これは作中の描写からシャリア・ブルが感じ取ったことというより、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』において小惑星アクシズを地球に落とそうとしたシャアのイメージを投影した描写であり、「ガンダム・ジークアクス」劇中の情報だけでは説得力を感じられないという感想だ。

マチュの目的

そして、やはり最後までマチュ自身が「何を求めるのか」は「ガンダム・ジークアクス」という作品において描かれなかったという感想だ。

不自由はないがどこか閉塞感を感じる日常の「外に出たい」という欲望や衝動は誰しも身に覚えのあるものだろう。そんな退屈を持て余す少女がガンダムと出会った。

それはまさに「物語」を予感させるものだったが、結局マチュの「ここではないどこか」への衝動は理由の分からないシュウジへの「恋」に収束させられてしまった

恋に理由は要らないと言えばそれまでかも知れないが、視聴者は「ガンダム・ジークアクス」という物語作品を観ているのだ。物語というのは脈絡のないシーンの連続ではなく、そこに何らかの因果関係が見出せればこそ楽しめるものではないだろうか。

マチュが「非日常」を求めてクランバトルにのめり込むなり、シュウジとの繋がりを得る為にジークアクスに乗るなりという具体的な動機が描かれることはなく、単に地球行きの資金稼ぎの為にクランバトルに参加していた。

そこでは同じく「賞金目当て」のポメラニアンズというジャンク屋に身を置いていたが、彼らとの間に人間関係が深まる描写もないまま散り散りになってしまった。

全体を通して、個別のエピソードがマチュ自身の人格にどんな影響を与えたのかという具体的なドラマとして描かれていなかったため、「シュウジに出会う」「ジークアクスに乗る」「クランバトルに参加する」ことがマチュを変化させたようには見えなかった。

そのために、物語全体を通して特にマチュの成長や欲望の成就が描かれた訳ではなく、単に「そういう設定の世界」と「ガンダム」を与えられたからその役割のままに振舞ったというだけで、生きたキャラクターには見えなかったという感想だ。

懸念していた通り、前ガンダムTVアニメシリーズである「水星の魔女」の主人公のスレッタと同様、せっかくの「女性主人公」という設定をドラマとして描き切れなかった印象だが、次なるガンダム作品の女性主人公に期待したい。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』最終回第12話ネタバレ感想

物語のテーマ

「ガンダム・ジークアクス」という作品全体の感想としては、やはりそもそもの「物語のテーマ」の設定の仕方に難があったのではないかというものだ。一体、この作品は全体として何を描きたかったのだろうか。

最終的に「ガンダム・ジークアクス」は、作品世界自体が「ララァ・スンによって生み出された並行宇宙」であることが明かされた。そして、シュウジは元の世界を巻き込んだジークアクス世界の崩壊を防ぐべくララァを殺そうとし、マチュはそれを阻止しようとしてシュウジの乗るガンダムと戦った。

その裏では「ニュータイプの未来」を賭けてキシリア、シャア、シャリア・ブルが三つ巴の戦いを繰り広げた。だが、ジークアクス世界自体が崩壊してしまえばその世界での未来も覇権も意味がなくなってしまう

ガンダム作品が今まで描いてきたものは基本的には人々の間の政治的な対立であり、その極端な表象としての戦争だ。しかし、言うまでもないがその政治闘争は物理的に存在する世界という基盤の上に立って初めて可能なものである。

そうした「物理的な前提」については、ガンダムは極めて抑制的に描いてきた。勿論ガンダム世界には現実世界では到底考えられないような物理法則を無視した現象も度々登場する。

だが、それにもある程度の理屈は付けられており、少なくともそれによって「世界そのものが物理的に崩壊するような危機」は描かれてこなかった。

逆説的に言えば、だからこそ人々は戦争をすることが可能だった。戦争による如何なる破壊も世界そのものを崩壊させることはない。だからこそ局地的な暴力の行使たる戦争と、その惨禍を描くことが可能だった。

しかし、「ガンダム・ジークアクス」における最大の問題は「ララァの意志一つで世界が崩壊する」という、これまでのガンダム作品が前提とした物理的限界を遥かに超越するスケールのものだった。

そうであれば、ザビ家がどう、ニュータイプがどうだのと話し合っている場合ではないのではないだろうか。とにかく世界崩壊の引き金となるようなゼクノヴァという現象を観測したのであれば陣営の別を問わずにジークアクス世界の全人類が総力を結集してゼクノヴァ阻止に向けて協力し合う必要があったのではないだろうか。

それなのに、ゼクノヴァは特に原理が解明される描写もないままに早々に制御可能なギミックとして兵器に組み込まれてしまった。そして「思春期の鬱屈」以外に特に行動原理の与えられなかったマチュが何故かそれによる世界の崩壊の阻止へと駆り出されてしまった。

それがマチュが自分自身を賭けた戦いだとは到底思えなかったが、そうだとしても「向こう側」から来たガンダムを倒し、ララァが目覚めた結果何故ジークアクス世界が保たれたのかも腑に落ちない。

更に言えば、ララァは「シャアがガンダムに殺されない世界」を生み出そうとしてジークアクス世界を創ったと言うが、そもそも『機動戦士ガンダム』劇中においてシャアはガンダムに殺されていない

むしろガンダムに討たれそうになったシャアを庇って死んだのがララァなのだ。つまり、ジークアクス世界における「向こう側」というのは正史である『機動戦士ガンダム』世界ではなく、それ自体が『機動戦士ガンダム』のパラレルワールドだということだろう。

何故ここまで複雑な構成にしたのだろうか。筆者の考察としては、やはりそれは『機動戦士ガンダム』という作品を唯一の聖典にしたいという気持ちからなのではないかと思う。

一見『機動戦士ガンダム』のパラレルワールド作品と見せ掛けて、その直接のパラレルワールドではなく「パラレルワールドのパラレルワールド」として描くことにより『機動戦士ガンダム』の唯一の真正性は保たれるという目論見だろう。

だが、そうまでして生み出した作品設定によって「描きたかった物語」がこれなのだろうか。筆者にはどうしても「ガンダム・ジークアクス」という作品に「そうまでして描きたかった何か」があったとは思えない。

ここまでは「ガンダム・ジークアクス」という物語の作品内容に触れてきたが、『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイを演じた声優の古谷徹が、ちょい役とは言え最後に出演していることにも異議を唱えたい。古谷徹は不倫及び暴行・中絶強要、妊娠しない身体と偽って相手を妊娠させたという、性加害と言える内容の報道があり、本人も事実を認めていた。

どうやら古谷徹が演じた「エンディミオン・ユニット」というのはジークアクスに搭載された「オメガ・サイコミュ」の〈中の人〉であるらしい。それを古谷徹に演じさせることで正史の「アムロ・レイ」がジークアクス内部に宿っているということを匂わせる演出なのだろう。

しかし、ジークアクス自体の開発経緯や活躍もほぼ描かれず、アムロ自身も登場していないジークアクス世界にいきなり「アムロの声」が響くことにファンサービス以上の意味は見出せないし、それはジークアクスが〈覚醒〉した時に口を開けてエヴァンゲリオン初号機そっくりの顔付きになったことにも感じた。

演出が自己目的化して、そこに物語展開としての必然性や説得力がないのであればそれは寒いだけだろう。その上、古谷徹には現実社会における性暴力という明白に非難すべき事実がある。

そのような人物を無批判に起用すること、しかもそれが物語展開上の必然性もなく単なるファンサービスとして描かれたことについては、一ガンダムファンの身からしても強く違和感を抱いた。

そもそも声優というのは飽くまでも役者であり、そして役というのは誰が演じてもいいものだ。フィクションというのはそういうものであり、事実新たにシャアに命を吹き込んだ新祐樹の芝居も素晴らしかった

「ガンダム」という作品が、戦争を始めとする暴力に対して人々がそれをどう乗り越えて共存していけるかを描くというメッセージを持って作られるのであれば、なおのこと現実社会の暴力を無視して欲しくはない

アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』はNetflix他動画配信サイトで配信中。

アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』公式サイト

BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) 機動戦士Gundam GQuuuuuuX HG GQuuuuuuX(読み:ジークアクス) 1/144スケール 色分け済みプラモデルは発売中。

赤いガンダムのAMASHII NATIONS METAL ROBOT魂 塗装済み可動フィギュアは6月30日発売で予約受付中。

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普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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