『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』放送中
「ガンダム」シリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』が2025年4月9日よりテレビ放送およびオンライン配信を開始した。シリーズ構成・榎戸洋司、監督・鶴巻和哉を中心に製作された本作は、1月に公開された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が興行収入30億円超のヒットを記録したことでも話題を呼んだ。
今回は、早くも話題を呼ぶアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、「ガンダム・ジークアクス」)の第9話について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』第9話ネタバレ解説
地球に降りたマチュ
ソドンの独房に監禁されたマチュは、再びスマホに謎のメッセージを受信する。そのメッセージの通りに独房のロックが解除され、マチュはジークアクスを再び奪い単独で地球の大気圏へと突入する。
この謎のメッセージの送り主が誰なのかはやはり気になるところだ。シャリア・ブルはマチュのスマホを検閲した上で、マチュにメッセージに従い行動させることが「シャロンの薔薇」の在処を明らかにすると期待してマチュの好きに行動させる。
この時、コモリは初対面のマチュに対して随分高圧的な態度を取っているが、これまで特にコモリの内面が描かれるようなエピソードはなかった為少々意外というか唐突な内面開示だとの感想を抱いた。ここまでコモリがマチュに敵意を剥き出しにするのには何か理由があるのだろうか。
大気圏突入後、ジークアクスを思うようにコントロールできなかったマチュはコクピットを含む脱出装置コア・ファイターで離脱し、ジークアクス本体は海底へと落下する。そして目が覚めたマチュは屋敷のベッドの上に居た。
ララァとの邂逅
その屋敷には「ララァ・スン」という名の少女が居た。彼女は別世界で生きる「別の自分」の夢をよく見るらしい。ララァ・スンとは『機動戦士ガンダム』最大の悲劇とも言える、シャアとアムロとの三角関係の果てに戦場に散った少女だ。
シャアにニュータイプとしての能力を見出されそんなシャアに報いる為に戦うが、不運にもその戦場でシャア以上のニュータイプであるアムロに出会ってしまった。
ララァとアムロは戦いの中で相互理解を深めていくが、シャアにはそれが我慢ならなかった。シャアはアムロに敵意を剥き出しにするが、その激情が隙を生む。
アムロはその隙を見逃さず、遂にアムロとシャアの戦いも決着かというその瞬間、ララァは乗機であるモビルアーマー「エルメス」で割り込み、シャアの身代わりとして散る。「ガンダム・ジークアクス」におけるララァが見る「夢」としての自分とは、『機動戦士ガンダム』劇中世界の自分のことだろう。
だが、「ガンダム・ジークアクス」において、ララァは未だ戦場には出ていない。マチュと束の間心を通わせたが、結局マチュとともに宇宙へ脱出する道を選ばなかった。その理由はやはり「シャロンの薔薇」にあるのだろう。
遂に明かされた「シャロンの薔薇」の正体
そして、無事に海底のジークアクス本体を見付けたマチュは、そこに巨大な影を見る。ジークアクスの落ちた場所にこそ「シャロンの薔薇」はあったのだ。
マチュに遅れて地球へと降下したソドンにより引き上げられたシャロンの薔薇こそ、『機動戦士ガンダム』に登場した「ララァ・スン専用モビルアーマー」ことエルメスそのものの見た目のモビルアーマーだった。
これは古くからのガンダムファンにとっては予想外な展開で、非常に驚かされたという感想だ。これまで台詞でのみ語られてきた「シャロンの薔薇」という言葉からは、サイコミュに感応する素材である「サイコ・フレーム」のような物理的なマテリアルという想像をしていた。
だが、「シャロンの薔薇」が「エルメス」であるということについては特にそれを予想させるヒントが描かれてこなかった為、推理を裏切られたという意味での衝撃はそこまでないとの感想も抱いた。
これまで登場したサイコ・ガンダムやジフレドと同様、「それが登場する物語上の必然性」に乏しいので、むしろ「エルメスを出す」為に「シャロンの薔薇」という設定を作ったというような逆転現象が起きている印象だ。
シャロンの薔薇の能力
欲を言えば、もう少し作中で「シャロンの薔薇とはこういうものだろう」というヒントを事前に与えておいて欲しかったという感想だ。そうすれば、「まさかのエルメス」という衝撃をより深く味わえたのではないだろうか。
シャリア・ブルによれば、シャロンの薔薇とは建造途中で放棄された「開発されなかった筈のモビルアーマー」らしい。それが完全に開発された状態でパイロットと共に海の底に沈んでいた。
『機動戦士ガンダム』において「エルメス」は開発されていることから考えると、シャロンの薔薇とはつまり「ガンダム・ジークアクス」世界と『機動戦士ガンダム』世界とを繋ぐ能力を持つ物なのだろう。
シャロンの薔薇とララァの能力によって、ゼクノヴァを起こしたシャアとシュウジは『機動戦士ガンダム』世界へ飛ばされてしまったのかも知れない。
「エルメス」という名前
『機動戦士ガンダム』劇中では「エルメス」と呼称されていたが、放送当時発売されたガンプラの表記は途中から「ララァ・スン専用モビルアーマー」と改められてしまった。
俗に、フランスの世界的なブランドである「hermes」との間で商標上の問題が生じた為と言われているが、公式な事情説明は現在に至るまでされていないようだ。
ゲームなどでは今も「エルメス」の名前が用いられることもあるが、果たして「ガンダム・ジークアクス」において「エルメス」の名は呼ばれるのだろうか。それともそのまま機体名を「シャロンの薔薇」にするつもりだろうか。
「シャロンの薔薇」考察
ところで、「シャロン」とは表記によって複数の意味を持つらしい。「Charon(カローン)」であれば「ギリシャ神話由来の現世と冥界を分ける川の渡し守」という意味を持つ。
「Sharon(シャロン)」であれば、ユダヤ教とキリスト教における理想郷を指し、その地に咲く「シャロンの薔薇」は純潔の象徴なのだそうだ。
「シャロンの薔薇」を直接引用しているのは後者だが、意味の上では「純潔の象徴」よりも「現世と冥界を分ける川の渡し守」の方が腑に落ちるので、ここは2つの意味が合わさっているのだろうと考えられる。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』第9話ネタバレ感想
「ガンダム・ジークアクス」における「ニュータイプ」を考察
それでは、これまでの「ガンダム・ジークアクス」全体の感想を述べていこう。第9話にしてようやくマチュ自身の行動にスポットが当たった。
だが、その行動はやはり行き当たりばったり、あるいは謎のメッセージや人物に導かれるものであり、自分自身で何かに挑み獲得や挫折を経験するという訳ではないところが物足りないとの感想だ。
ララァの登場にしても、これまでのガンダムファンにとってはお馴染みのキャラクターであるもののマチュやマチュの視点に立つ新規ファンにとっては誰だか分からないだろう。
そんな謎のキャラクターにいきなり「夢の世界」の「本当の自分」について語らせてしまえば、それは旧来のガンダムファンに対する目配せであると同時に〈「ガンダム・ジークアクス」におけるララァは偽物〉というメッセージにしか見えない。
オマージュとして過去作のキャラクターが出てくることは確かにファンサービスになるが、それはただ出せばいいというものではないのではないか。
黒い三連星やバスクもそうだったが、出すからにはやはり「新しいドラマ」を期待したい。『機動戦士ガンダム』におけるララァもアムロとシャアという二人の主人公にトラウマを残すという道具的な役割を与えられていたと言えばそれまでだ。
とは言え、それでもやはり「戦場における出会い」という悲劇はドラマとしてしっかり描かれた。「ガンダム・ジークアクス」において、この後果たしてララァのドラマは描かれるのだろうか。
少なくとも「ガンダム・ジークアクス」第9話を観る限りでは、「今の私は偽物で夢の世界(『機動戦士ガンダム』世界)に本物の自分が居る」という主張が語られたのみで、何故ララァが「今の自分は偽物」と思うのかという理由は語られていない。
勿論、娼館で自由を封じられて生きていることは描写されており、それは『機動戦士ガンダム』の監督であり原作者的位置付けである富野由悠季による小説『密会〜アムロとララァ』において描かれたエピソードを踏襲している。
だが、そこにおける生活の具体的な描写がなされないままに「本物」としての自分を『機動戦士ガンダム』世界に見出すと語らせてしまえば、一体「ガンダム・ジークアクス」おけるララァは何なのか、何故わざわざララァを出したのかという話になってしまわないだろうか。
それでは、メタ的に『機動戦士ガンダム』こそが「本物」であり、「ガンダム・ジークアクス」はその二次創作的な「偽物」であるという作り手の敗北宣言とも受け取れてしまうという感想だ。
そして、ララァとの出会いも含めてマチュが何らかのきっかけを掴む際に描写された「キラキラ」はマチュのニュータイプとしての能力を示すものであるが、逆に言うとそれだけでしかない。
シャロンの薔薇の「異世界転生」能力もララァのニュータイプ能力によるものだとすれば、あまりにも「ニュータイプ」というもののメッセージ性が剥奪され道具的に使われ過ぎではないかとの感想を抱いた。
『機動戦士ガンダム』におけるニュータイプは単に戦闘能力の秀でた兵士ということではなかった。それは宇宙生活に適応した人類の新たな姿であった筈だ。
マチュが「ニュータイプ」であることと「コロニー暮らしを偽物だと感じていること」との間に今のところ何らかの関係があるようには見えない。
ニュータイプをただ主人公補正の為の強力なパワーや、「異世界転生」を可能とする為の道具的なギミックとして用いるのみならず、その能力や特質が人間同士の相互理解やそれでもなおある隔たりを如何に浮かび上がらせるのかということをこそ描いて欲しい。
「ガンダム・ジークアクス」も残すところあと僅かだ。残り3話でマチュの乗るジークアクスとニャアンの乗るジフレドは果たしてどのように関わるのかに注目して観ていきたい。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は毎週火曜24時29分から日テレ系30局ネットで放送中。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』公式サイト
BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) 機動戦士Gundam GQuuuuuuX HG GQuuuuuuX(読み:ジークアクス) 1/144スケール 色分け済みプラモデルは発売中。
赤いガンダムのAMASHII NATIONS METAL ROBOT魂 塗装済み可動フィギュアは6月30日発売で予約受付中。
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