『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』放送開始
「ガンダム」シリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』が2025年4月9日よりテレビ放送およびオンライン配信を開始した。シリーズ構成・榎戸洋司、監督・鶴巻和哉を中心に製作された本作は、1月に公開された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が興行収入30億円超のヒットを記録したことでも話題を呼んだ。
今回は、満を持して放送/配信を開始したアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の第1話について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第1話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』第1話ネタバレ解説&考察
『機動戦士ガンダム』のもう一つの歴史
劇場版公開時も話題になったが、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』はシリーズ第1作目の『機動戦士ガンダム』(1979-1980) の一年戦争が異なる展開を迎えた世界線の物語だ。アニメ『ジークアクス』第1話は、劇場版では中盤にあたる場面から物語が始まる。
冒頭、劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』と同じく『機動戦士ガンダム』第1話冒頭のオマージュとして「ガンダム」世界を代表するザクのモノアイが映し出される。だがこのザクのモノアイは見慣れたピンクでなく水色で、コロニーに侵入する代わりに宇宙空間で取っ組み合っている。
そして、次に登場したのは『機動戦士ガンダム』では脇役だったシャリア・ブル中佐だ。シャリア・ブルはラシット中佐、コモリ少尉、そしてモビルスーツパイロットのエグザベ・オリベらを率いている。
シャリア・ブルらが乗っている戦艦ソドンは、『機動戦士ガンダム』で主人公アムロとガンダムの母艦であった「ホワイトベース」の同型艦、地球連邦軍の強襲揚陸艦ペガサスをジオン公国軍が奪取した後、改装したもの。白から緑へと塗り替えられ、名も「ソドン」と改められている。
「木星帰り」の男
『ジークアクス』第1話の冒頭では、シャリア・ブルは消えた赤いガンダムを追っている様子。この世界線ではモビルスーツは民間に払い下げられており、冒頭のザクもそうした民間機の一つだ。
だが、民間に払い下げられたモビルスーツからは、実戦用の武器が使えないようにインストーラデバイスは外されているという。裏を返せば、インストーラデバイスさえあれば民間のモビルスーツも戦うことができるということである。
シャリア・ブルは、モビルスーツを民間に渡しているのも、連邦軍の敗残兵の食い扶持斡旋のためだ、これも戦勝国の義務だと言う。つまり、『ガンダム・ジークアクス』の舞台は、連邦軍が敗れ、ジオンが勝利した歴史における“戦後”ということが分かる。
サイド6付近で、シャリア・ブルは“赤いガンダム”の接近を感知。ソドン艦長であるラシット中佐から「木星帰りの勘ですか」と聞かれている。高速で移動する謎の赤いガンダムが登場し、第1話のタイトルが「赤いガンダム」であることが明らかになる。
ガンダムシリーズにおいては「木星」は特別な場所として象徴的に描かれている。正史である『機動戦士ガンダム』の続編、『機動戦士Zガンダム』のライバルキャラであるパプテマス・シロッコも「木星帰り」という設定だった。シャリア・ブルはかつて資源探査の為に木星へと赴いており、その特殊な環境下で「ニュータイプ」能力を覚醒させたのではないかということが示唆されている。
アマテとニャアンの出会い
『ガンダム・ジークアクス』の主人公であるアマテ(マチュ)は、「Let’s get the Beginning.」という謎のメッセージを受け取った後、カムデン駅で運び屋のバイトをしていたニャアンと衝突。非合法なモビルスーツのインストーラデバイスを手に入れてしまう。
このシーンでのアマテのモノローグでは、「宇宙は頭の上じゃなく足の下にある」というスペース・コロニーの環境が説明される。アマテ達は、本物の重力も、空も、海も知らないスペース・コロニー生まれの世代だ。
一方のソドンでは、赤いガンダムに乗っているのがシャア・アズナブルかどうかの議論が交わされていた。シャアの出自が宇宙移民(スペースノイド)のカリスマであり、ニュータイプ理論の提唱者であるジオン・ズム・ダイクンの忘れ形見という噂だが、コモリ少尉は信じていないらしい。だが、シャリア・ブルはザビ家の長女であるキシリアの命を受けて「シャアがジオン・ズム・ダイクンの忘れ形見かどうか」を確かめるためにサイド6に来たのだと言う。
余談だが、サイド6の軍警ザクの無線でやり取りされていた「マルモ」「マルツイ」という言葉は、現実の警察用語の「マル被(容疑者)」「マル害(被害者)」等から作られた隠語だろう。文脈上、「マルモ」は「容疑者(捜査対象)のモビルスーツ」、「マルツイ」は「追跡」という意味であると思われる。
シャリア・ブルは赤いガンダムを止めるために新型モビルスーツのガンダム・クァックス(以下、ジークアクス)を投入。エグザベにとっては初陣となる。このシーンではシャリア・ブルの口からエグザベがニュータイプだということが明かされている。
ただ、ジークアクスは、搭載されているオメガ・サイコミュという特殊システムの不使用を条件に貸し出されているそうで、暴走すれば軍事法廷にかけられるという。シャリア・ブルはジークアクスが赤いガンダムと同じ力を持つと太鼓判を押しており、エグザベに期待をかけて送り出すのだった。
難民達の“戦後”
アマテは市中でニャアンから荷物を奪われるが、デバイスは抜き取っていた。やはりこのデバイスは民間のモビルスーツでも実戦用武器を使えるようにするためのもので、ニャアンは賞金を賭けてモビルスーツで闘うクランバトル(通称クラバ)のためにデバイスを届けるバイトをしていたことが明らかになる。一方、エグザベは赤いガンダムと接触。オメガ・サイコミュが起動せず、苦戦を強いられる。
アマテとニャアンは、カネバン有限公司へデバイスを届けに行く。社長のアンキー、パイロットのジェジー、実務担当のナブ、メカニックのケーン、犬のポメラニアン、そしてハロに迎えられる中、アマテはカネバン所有のザクに見入る。初対面のアンキーにいきなりクラバに興味があるかと聞かれるが、アマテの足は引き寄せられるようにザクへと向かう。
アマテに一年戦争の記憶がどれ程あるか分からないが、モビルスーツの巨大さは丁度我々が「ガンダム」に惹かれるのと同じように非日常な「ここではないどこか」へと自分を誘ってくれるようなロマンを感じたのかも知れない。「宇宙(そら)って自由ですか」という、一見唐突とも聞こえる台詞もまさに「宇宙」を舞台に戦ったザクを目の当たりにしたアマテの素直な心境の吐露なのだろう。
そこに交戦中の赤いガンダムとジークアクスがコロニーの外壁を突き破って襲来する。難民達が住む南のジャンクヤードへとやってきてしまったのだ。弾かれたガンダムのシールドがアマテとニャアンに降りかかるが、二人を守ったのは赤いガンダムだった。ジークアクスは軍警が来たところで煙幕弾を放って逃走。軍警のアラガ隊長は地下の整備用トンネルに逃げたと予想し、どうせ難民の不法建築だと言って屋根を剥がして捜索するよう指示を出す。
軍警の横暴を見て、アンキーはジオンが戦争に勝ってもスペースノイドは自由になれない、苦しいままだと口にする。ここでは単純に『機動戦士ガンダム』の善玉と悪玉を逆転させただけの世界を描く訳ではないということが示唆されている。
たとえジオンが「勝った」としてもその勝利によってジオンの独裁という「悪」が免罪される訳ではない。果たしてアマテはこの世界で「何と」戦うのだろうか?
アマテの初陣
ザクを隠すよう指示するアンキーに戦わないのかと聞いたアマテは、移民であるニャアンの表情を見やると、意を決して先ほど届けたデバイスをザクに装填。軍警に地下トンネルに落とされるが、その先でジークアクスを隠していたエグザベと鉢合わせすることになる。
アマテは、「あっちの方が強そう」という理由でジークアクスに飛び移ると、なぜかジークアクスのロックが外れて起動。エグザベが驚く中アマテがジークアクスを動かし、オメガ・サイコミュを起動してみせる。ジークアクスは軍警のザクを一機倒すが、エアロックが開いて宇宙空間へ放り出される。
もう一機の軍警ザクから追われる中、〈ニュータイプの音〉が鳴り、アマテは「キラキラ」と赤いガンダムの姿を見る。何かが分かったアマテは“赤い彗星”をバックにジークアクスを自在に操り、見事軍警ザクの撃破に成功したのだった。
赤いガンダムはソドンを通り過ぎ、シャリア・ブルは搭乗者がシャア・アズナブルではないことを察している。ジャンクヤードでは、ニャアンと赤色灯に照らされた街に背中を向けて歩き出したところで、『ガンダム・ジークアクス』第1話は幕を閉じる。
『ガンダム ジークアクス』ネタバレ感想
ざっと第1話を振り返ってみたが、やはり気になるのはシャアの行方だ。劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』においてシャアはサイコミュシステムの暴走と思われる「ゼクノヴァ」という現象に見舞われた際に消息を絶った。にも拘らず、乗機である赤いガンダムは健在であり、シュウジという新たなパイロットによって操られている。
シュウジはどのようにして赤いガンダムと出会ったのだろうか。そして、その目的とは何なのだろうか。今のところ、登場人物の中で最も「目的」のはっきりしているキャラクターはシャリア・ブルだ。シャリア・ブルにはかつての戦友であるシャアの消息を知りたいという強い動機がある。もしもシャアが生きていて、地球連邦軍との戦争が終わった後に亡父ジオン・ズム・ダイクンの仇討ちをすべくザビ家と闘争するのだとしたら、シャリア・ブルは再びシャアの傍で戦うのだろう。
だが、『ガンダム ジークアクス』における主人公はアマテという少女であり、アマテにはザビ家との因縁は特にない。大きな歴史や政治状況が下敷きになっているが、今のところアマテがジークアクスに乗るのは賞金目当てのクランバトルに勝つためだ。ガンダムTVシリーズの前作「水星の魔女」においても主人公であるスレッタは物語当初「決闘」のためにガンダムエアリアルに乗っていた。
だが、「水星の魔女」では決闘が特に物語の根幹に絡むことはなかった。物語の面白味とは「一見無関係なもの同士を結び付けるやり方の独自性」にこそあると考える身としては、「水星の魔女」の轍を踏むことなく「大きな政治状況」と身近な「クランバトル」がどう結び付けられるのかというところに注目して観ていきたい。単に「クランバトルで活躍する少女」を描くだけならば、わざわざ「ジオン勝利の世界線」を設定する必要などない筈だからだ。
新たに公開されたPVではガンダムファンにはお馴染みの「ジム」や「ドム」らしき機体も確認できる。赤いガンダムや軍警ザクといった、見慣れている筈なのに新たな姿で生まれ変わった機体、そして何よりこれまで見たことがないような新しいデザインのガンダムであるジークアクスが果たしてどんな活躍を見せてくれるのか。今後の展開に目が離せない。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は毎週火曜24時29分から日テレ系30局ネットで放送中。
BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) 機動戦士Gundam GQuuuuuuX HG GQuuuuuuX(読み:ジークアクス) 1/144スケール 色分け済みプラモデルは発売中。
赤いガンダムのAMASHII NATIONS METAL ROBOT魂 塗装済み可動フィギュアは6月30日発売で予約受付中。
第2話の感想&解説はこちらから。
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