『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』放送中
「ガンダム」シリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』が2025年4月9日よりテレビ放送およびオンライン配信を開始した。シリーズ構成・榎戸洋司、監督・鶴巻和哉を中心に製作された本作は、1月に公開された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が興行収入30億円超のヒットを記録したことでも話題を呼んだ。
今回は、早くも話題を呼ぶアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』(以下、「ガンダム・ジークアクス」)の第8話について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』第8話ネタバレ解説
「悪役」ではないキシリア
ニャアンはジオンの服を着せられ、キシリアに手製のパイを振舞われる。キシリアはニャアンに何が自分たちスペースノイドを強くしたと思うかと問い掛ける。ニャアンの「抑圧されたスペースノイドの恨み」という返答に対して、「恨みは晴らしてしまえばそこで終わってしまう」と答える様子は意外という感想だ。
原典である『機動戦士ガンダム』においては、ザビ家の面々は「悪役」として戯画化されて描かれており、必ずしも個々人の内面描写が充分であったとは言えない。キシリアもこれまでのイメージではギレンに負けず劣らぬ高慢で独裁者気質のキャラクターという印象だった。
だが、「ガンダム・ジークアクス」において再解釈が行われ、これまでのイメージの延長線上にありながら、どうやら単なる悪ということでもないらしいという感想だ。思えば、コンペイトウ(宇宙要塞ソロモン)が月に墜ちようという時にも、サイコガンダムが眼前に迫った時にも決して取り乱さない胆力がキシリアにはあった。
少なくとも「ガンダム・ジークアクス」において、今のところキシリアは悪役としては描かれていない。ジオンがそもそも悪だと言うのなら、コロニー内でサイコガンダムを暴れさせて無差別にビームを放った連邦軍も悪だろう。個人的な感想としては、エグザベがキシリア派なのはやはりキシリアの人望によるものだろうということだ。
キシリアがゼクノヴァを引き起こす狙い
そんなキシリアの当面の狙いは「ゼクノヴァを引き起こすこと」であり、その為にニャアンをジオン軍へとリクルートした。これまで劇中で2回ゼクノヴァは引き起こされておりいずれも赤いガンダムによるものであるが、パイロットはシャアとシュウジで異なっていた。
ということは、ゼクノヴァの鍵はパイロット個人にあるというより、赤いガンダムのサイコミュシステムにあるということだろうか。今のところ、「それによって機体とパイロットがどこかへ消える」という事象が観測されているのみで、その後の機体やパイロットの行方やそれ以外に世界にもたらす影響などは謎に包まれている。
ゼクノヴァの鍵としてはもう一つ、「シャロンの薔薇」というものがあるらしい。シャアが初めてゼクノヴァに巻き込まれた時、シャロンの薔薇も喪失したようだ。シャロンの薔薇とサイコミュが反応した結果ゼクノヴァが起こるとして、その影響は何なのだろうか。
キシリアが個人の復讐以上の大局を見据え、その為にギレンを討つことが目的なのだとしたら、ゼクノヴァはギレンに勝つ為に必要なのかも知れない。ギレンはギレンで人工的なニュータイプである強化人間を研究している様子で、キシリアがニュータイプ部隊を持つアドバンテージも絶対のものではないのだろう。
そうだとすれば、ゼクノヴァという強いサイコミュの反応を解析、応用することでニュータイプ兵士の能力を強化するということがキシリアの当面の目的なのだろうか。その為にエグザベやニャアンを利用し、その命がどうなっても構わないと考えるのであればキシリアは「ガンダム・ジークアクス」における悪役と言えるだろう。
だが、今のところキシリアは裏表なく部下に慕われる良きリーダーであるように見える。『風の谷のナウシカ』に登場したトルメキア王国の皇女クシャナに似ているという感想を抱いた。キシリアは最後まで強いリーダーシップを発揮して何らかの「理想」を実現するのかに注目して観ていきたい。
ジフレド登場
そんなニャアンにはジークアクスの2号機である「ジフレド」というMSが与えられる。これまでジフレドのテストパイロットはエグザベの同期が2名務めたが、いずれもコクピットで心臓発作を起こして死ぬという曰く付きの機体だ。だが、それはエグザベの同期の一人である、ギレン派のスパイのミゲルによる暗殺だった。
ミゲルはその動機について「大切な仲間をディアブロにする訳にはいかない」からだと答えた。ここでまた「ディアブロ」という新たな用語が登場したが、これもまたサイコミュやニュータイプに関わる言葉なのだろうか。公式サイトによればジフレドにはジークアクスの「オメガサイコミュ」とはまた別種のサイコミュシステムが搭載されているらしい。
そのサイコミュの効果によって人間が変質させられてしまうものこそ「ディアブロ」ということだろうか。しかし、現時点では未だにオメガサイコミュですら通常のサイコミュシステムと何が違うのかが明かされておらず、ゼクノヴァやシャロンの薔薇についても謎に包まれている。その中でダメ押し的に「ディアブロ」という新用語を出されたところで、衝撃というよりも困惑を抱いたというのが正直な感想だ。
そのフォルムやカラーリングから、明らかに「エヴァンゲリオン初号機」を意識したデザインのジフレド。これをオマージュとして楽しめるかやり過ぎと感じるかは人それぞれだろう。だが、見た目のみならずコクピットに乗り込んでさえいないニャアンに感応してファンネルが起動したのは個人的にはやり過ぎという感想だ。あまりにもエヴァ過ぎるだろう。
ところで、ガンダムシリーズにおいて主役機の「2号機」は奪われるなどして敵になりがちだ。『機動戦士ガンダム0083』においてガンダム試作2号機(サイサリス)は核弾頭ごとジオン軍残党デラーズ・フリートのエースパイロット、アナベル・ガトーによって奪われ、以降ガンダム試作1号機(ゼフィランサス)と激闘を繰り広げる。『機動戦士ガンダムUC』登場のバンシィも、主役機であるユニコーンガンダムの2号機だ。
とは言え、『機動戦士ガンダム』における主役機のガンダムは設定上「RX-78-2」という型式番号を与えられた「2号機」ではあるのだが……しかし、ここまでフラグを立ててしまえばジフレドに乗るニャアンとジークアクスに乗るマチュとの戦いは避けて通れないのだろう。
ニャアンの役割
では、にわかに重要度を増していくニャアンのこれまでを振り返ってみよう。まず、ニャアンは「民生品MSに実戦武器を使用可能にさせる違法デバイスの運び屋」として「ガンダム・ジークアクス」という作品に登場した。その出自は難民である。だが、これまでのところ特にマチュら含めた他者に自らの難民としての境遇を語る描写はない。ニャアンに限らないが、はっきりと「何がしたい」という目的を語ることもなかったので何を考えているのか分からないキャラクターだとの感想を抱いた。
だが、マチュがエグザベにジークアクスのパイロットだと疑われて足止めを食らっている間、クランバトルの違約金支払いを回避する為にマチュの代わりにジークアクスへと乗り込み、見事クランバトルに勝利する。ここで「ジークアクスのパイロット」というマチュだけが持っていた主人公としての特権をニャアンも共有することとなり、マチュと同じ資格=ライバルになる可能性が生まれた。だが、やはり気になるのはニャアンが何故ジークアクスを動かせたのかということだ。
それを言えばそもそもマチュが何故動かせたのかからして不明だ。主人公だから、以外の理由は劇中描写からは今のところ見出せない。マチュもニャアンもニュータイプだから、サイコミュを積んだジークアクスはそれに反応したのだということだろう。だが、それだけだとマチュもニャアンもただ与えられた役割をこなしているだけに見えてしまうというのが正直な感想だ。
もっと内なる強烈な動機や欲望が描かれ、「どうしても乗りたい、乗らなければいけない」という状況に追い詰められた時に「動かせない筈の機体が動かせた」という方が熱くなれるのではないだろうか。マチュにせよニャアンにせよ、今のところ「どうしても乗りたい」という欲望が見えないので、機体を動かせたことにあまり感動を味わえていない。
そんなニャアンが自分の内なる動機として「ジフレドに乗りたい」と思うきっかけが「マチュを倒したい」ではないことを祈るばかりだが、ジフレドは今のところ「味方」には見えない。キシリアはやはり悪役として、主人公であるマチュに対して手駒としてニャアンを差し向けるのだろうか……。
地球へ行くマチュ
一方、マチュはシャリア・ブルによりソドンへと連れられるも、ジークアクスを再び奪い単身地球を目指して大気圏へと突入した。MSについて特段の知識や操縦技術がある訳でもないだろうにあまりにも無茶をする。マチュは地球に行って何がしたいのだろうか。母親との関係や高校生活に軋轢を感じていたとして、そこからの脱出先は何故「地球」なのだろうか。「本物の重力」によって、果たしてマチュの鬱屈は癒されるのだろうか。
地球には謎の金髪男子や、どこかで見覚えのあるお下げ髪の少女も居るようだ。果たして彼らとマチュは如何にして出会い、そしてどのような関係を結ぶのだろうか。今のところマチュに特に因縁のあるキャラクターは描かれていないので、マチュが最終的に戦う相手がニャアンであれキシリアであれシャアであれシュウジであれ違和感はないが、さて誰と戦うのだろうか。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム・ジークアクス)』第8話ネタバレ感想
これまでの「ガンダム・ジークアクス」感想
それでは、ここでこれまでの「ガンダム・ジークアクス」を振り返って感想を述べたい。やはり8話に至っても「敵」がはっきりせず、従ってマチュがジークアクスに乗る意味がはっきりしない一方でニャアンが着々と「ライバル」ムーブを決めていく描写が気になるという感想だ。
マチュにしろニャアンにしろ、宇宙世紀0085年時点でハイティーンの年齢設定であれば、当然「5年前」の一年戦争の頃には既に物心がついており、戦争やそれを引き起こしたMSという兵器について何かしら思うところがあってもいい筈だ。だが、これまでのところマチュやニャアンから直接戦争に対する思いが語られてはいない。
ジオンは戦争で「コロニー落とし」さえやってのけたのだ。もしかしたら自分の住むコロニーに毒ガスが注入されて、コロニーごと地球に落とされてしまうかも知れない。そんな不安を抱けば、ジオンに対して易々と気を許すようなことはないのが自然に思えるが、今のところマチュもニャアンも特にジオンの軍人であるシャリア・ブルやキシリアに対して敵愾心を示してはいないことが不思議だ。
シャリア・ブルはザビ家を悪と見做し、「キシリアとギレンを同時に排除する」ことを目的としているようだが、自身もジオン軍人として一年戦争を戦ったのだ。果たしてそれだけで罪が償えるのだろうか。何より、ザビ家打倒は元はと言えばシャアの目論見だった。シャアが行方不明の今、自分一人でもそれをやってのける覚悟なのだろうか。ザビ家を打倒した後で、シャリア・ブルはどのような世界を思い描いているのかも気になる。
仮にこれからマチュとニャアンが対立していくのだとして、お互い素人なのに何故かガンダムを動かせてしまったという描写に際立った差異が感じられない為、対照的な二人が戦うというようなコントラストを味わいにくいという感想だ。今のところジークアクスは「何故か動いた」というだけで、マチュやニャアンが自らの腕で「上手く動かした」訳ではない。
そんなマチュやニャアンが「パイロット」としての自覚と能力に目覚め、お互いの「倒すべき敵」を倒す為にその力を思う存分使う熱い戦いを是非観てみたい。その時シャアは、シャリア・ブルは、エグザベは果たしてどのような役割を果たすのだろうか。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は毎週火曜24時29分から日テレ系30局ネットで放送中。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』公式サイト
BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) 機動戦士Gundam GQuuuuuuX HG GQuuuuuuX(読み:ジークアクス) 1/144スケール 色分け済みプラモデルは発売中。
赤いガンダムのAMASHII NATIONS METAL ROBOT魂 塗装済み可動フィギュアは6月30日発売で予約受付中。
第9話の感想&解説はこちらから。
第7話の感想&解説はこちらから。
第6話の感想&解説はこちらから。
第5話の感想&解説はこちらから。
第4話の感想&解説はこちらから。
第3話の感想&解説はこちらから。
第2話の感想&解説はこちらから。
第1話の感想&解説はこちらから。
映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』のネタバレ感想&解説はこちらから。
【ネタバレ注意】『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の感想&解説はこちらから。
【ネタバレ注意】『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第2期最終回の解説&感想はこちらから。