『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』放送開始
「ガンダム」シリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ジークアクス）』が2025年4月9日よりテレビ放送およびオンライン配信を開始した。シリーズ構成・榎戸洋司、監督・鶴巻和哉を中心に製作された本作は、1月に公開された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が興行収入30億円超のヒットを記録したことでも話題を呼んだ。
今回は、早くも話題を呼ぶアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ジークアクス）』(以下、「ガンダム・ジークアクス」)の第3話について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ガンダム・ジークアクス）』第3話ネタバレ解説
マチュがクランバトル参加に参加した理由とは
「ガンダム・ジークアクス」1話でジオンの新型MSであるガンダムジークアクスに乗り、初陣で見事軍警ザクを倒したマチュ。そして第3話では賞金を賭けたMSバトル「クランバトル」にガンダムジークアクスに乗りシュウジの赤いガンダムと「マヴ」を組んで参加し、勝利を収める。
だが、ここで改めて考えたいのはマチュは何故ガンダムジークアクスに乗ったのかということだ。「ガンダム・ジークアクス」1話では、成り行きでニャアンと行動を共にしていたところ、戦闘中の赤いガンダムとガンダムジークアクスがコロニーの外壁を突き破って襲来した。それに対して出動してきたのが軍警ザクだ。
「ガンダム・ジークアクス」世界の組織図が明確ではないので詳細は分からないが、「軍警」を名乗るからにはそれは警察組織に類する公権力なのだろう。だとすれば、例え武力を用いるにせよ問答無用で命を奪いにくるとは考え難い。まずは被疑者を逮捕するという動きがある筈だ。実際、現実の警察用語から取ったと思われる「マルモ」「マルツイ」のような言葉も劇中に登場し、世界観のリアリティを高めている。
にも拘らず、軍警ザクのパイロットはマチュらに一切警告を発することなくいきなり実弾を撃ってきた。確かにここだけを見ればマチュが「やらなきゃやられる」とガンダムジークアクスで反撃したことも頷けるかも知れない。
だが、それはそもそもマチュがいきなりガンダムジークアクスを起動させたからで、それ以前、生身の状態のマチュにとって軍警ザクがどれ程切迫した脅威であったかは疑問が残る。むしろ、平穏に暮らしていたコロニーへの最初の闖入者は赤いガンダムおよびガンダムジークアクスである筈で、マチュがわざわざ武器を取って戦う必要がある程の命の危機を感じるとしたらその相手は軍警ザクではなかったのではないか。
だが、実際にはマチュはガンダムジークアクスに乗って軍警ザクを倒してしまった。ということは、即ち公権力を敵に回したということであり、最早平穏なコロニー生活を送れはしないだろう。普通ならここからマチュは逃亡者としてコロニーを脱出する展開が考えられるが、何とマチュはあっさりと家に帰ってしまう。
「ガンダム・ジークアクス」のジレンマ
そして何事もなかったかのように学校に行き、「キラキラ」を求めてシュウジと出会い、賞金目当てに命懸けのクランバトルに参加する。「敵」に倒さねばならない程の「悪」が描かれた訳でもなく、主人公に命を懸けねばならない程の切迫した動機が描かれた訳でもない。正直なところ、筆者には未だに何故マチュがガンダムジークアクスに乗るのかが腑に落ちないが、今後の展開で説得的な理由が明かされるのだろうか。
勿論、軍警ザクはコロニー内の難民居住区を「構うものか」と破壊していて、それは差別に根差すものであり明確な「悪」だ。だが、曲がりなりにも公権力であるならば、そこには何かしらの手続き的な正しさは存在している筈だろう。即ち、容疑者を問答無用で射殺するのではなく逮捕、起訴の手続きを踏むというようなことだ。
そうした「公的な手続き」がどれだけ機能しているのかということが伝わらないと、軍警ザクの暴力を評価し難い。あれはあの軍警ザクのパイロットの暴走によるものなのか、それとも組織的に日頃から「軍警」はあのような強権で住民を支配しており、倒すべき敵であるのかどうか。
これまでの「ガンダム」シリーズでも主人公がガンダムに乗るシークエンスは様々に描かれてきた。シリーズ第1作『機動戦士ガンダム』では、主人公のアムロ・レイはサイド7という自らの暮らすコロニーにジオン軍のMSザクが急襲を仕掛けてきた際、偶然目の前にあった地球連邦軍の試作MSであるガンダムに乗り込むこととなる。
「普通の女子高生」と「ガンダム」の掛け合わせという発想は面白いが、その面白さはひとえに作劇的な説得力に懸かっているだろう。女子高生が「どのような理由で」ガンダムに乗り込むのか。単に意外なだけではなく、そこに「そういうこともあるのか」と新たな視点を提示する説得力があればこそ人は面白さを感じるのではないだろうか。
その意味ではやはり「戦後」を舞台にしたことが足枷となってしまったとの感想を抱いた。普通の女子高生がガンダムに乗るための最も無理のない描写は、やはり戦争中にまさに「やらなきゃやられる」からと偶然コクピットが開いていたガンダムに乗り込むというものだろう。しかし『機動戦士ガンダム』をそのままなぞる訳にもいかないというところに、「ガンダム・ジークアクス」のジレンマがある。
シュウジがガンダムに乗る理由を考察
同じくメインキャラクターの一人であるシュウジも謎の多いキャラクターだ。というより、今のところ謎しかない。まず赤いガンダムを何故手にしているのかということが気になるが、これは当然今後の物語の中で明かされていくだろう。
それよりも気になるのは、「ガンダム・ジークアクス」1話でエグザベの乗るガンダムジークアクスと戦ったり、3話でマチュとマヴを組んでクランバトルに参加したりと戦闘シーンは多いのに、戦っている理由が全く分からないことだ。
シュウジはマチュに誘われるがまま、賞金目当てにクランバトルに参加する。クランバトルに参加せねばならない程の極貧生活であることは分かるが、だったら何故赤いガンダムを売ってしまうなどのもっと手っ取り早く金を得る方法を選ばないのだろうか？
シュウジはコロニーの外壁にガンダムで、そして内壁に自分の手でグラフィティを描いている。だが、その目的は何なのだろうか？ ただのグラフィティライターとして暮らしたいということであれば明らかにガンダムは不要だ。それに、さすがにコロニーの外壁にまで描くのは大袈裟過ぎるだろう。
ということは、やはりあれはただのグラフィティではなく、何らかのメッセージなのではないかというのが筆者の考察だ。「ガンダム・ジークアクス」1話でマチュのスマホに表示された「Let’s beginning」というメッセージの送り主は、もしかしたらシュウジなのではないだろうか。
シュウジは過去に「赤い彗星」ことシャア・アズナブルと接点を持ち、そこで赤いガンダムを譲り受けると同時に使命を託されたという可能性もあるのではないか。その使命とはつまり「ニュータイプ」を探して組織化するということで、一般人にはただのグラフィティとしか見えない絵柄がしかしニュータイプには感応空間の「キラキラ」として感じられるということではないか。
そうだとすれば、自らも赤いガンダムに乗ってクランバトルに参加する方が、グラフィティに反応してニュータイプが自らの元を訪ねてくるのを待つよりも遥かに早くニュータイプの素質を持つ者を探し出すことができるだろう。
クランバトルに絡む組織図
ところで、クランバトルは非合法なものであると言われているが、その割にはシャリアとエグザベがバーのTVで観戦できているのはどういう訳だろう。即ち、それは一般人が容易に試聴できる規模で中継されているということだ。
非合法なMSバトルがあんなに大々的に催されていては、それこそ軍警の出番ではないのか。賞金を集める関係でも秘密裡に行われているとは考え難い。だとすれば、軍警はそれを黙認しているということだろうか？
そもそも民間へのMSの横流しは、シャリア曰くそれによる就職口の確保含めた「戦勝国の義務」ということだった。民間のMSが今のところザクだけなのも、基本的にそれはジオンから供与されているものだからだろう。
各コロニーの自治政府にそれぞれ「軍警」が存在するということだろうか。だが、そこで使われるMSは基本的にジオン製のものであり、それはジオンにとって「脅威とならない」という前提の下に旧式のザクが宛てがわれているのかも知れない。
そうだとすれば、クランバトルもコロニー自治政府の頭越しにジオンに黙認されているということかも知れない。ジオン本国では相変わらずキシリアが強大な兵力構築の為の「ニュータイプ探し」をしており、クランバトルの勝者をリクルートするなどの名目でそれが黙認されているから自治政府による取り締まりが難しいというのが筆者の考察だ。
【『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ガンダム・ジークアクス）』第3話ネタバレ考察】マチュは強化人間？】
マチュがオメガ・サイコミュを起動できた理由
ガンダム作品にお馴染みの「サイコミュ」というのは、宇宙空間に適応することで感受性が洗練された新人類ニュータイプの精神感応能力をMSを始めとする軍事分野に応用したシステムのことだ。赤いガンダムを駆るシャアが遠隔操作兵器である「ビット」を操っていたのもサイコミュシステムによるものだ。
ガンダム作品におけるニュータイプの強さは、サイコミュを操れる点にあると言っても過言ではない。しかし、ガンダムジークアクスに搭載されているのは従来のサイコミュともまた異なる「オメガ・サイコミュ」というシステムであるようだ。
オメガ・サイコミュがどのような機能を持つのかはこれから明かされるのを待つとして、オメガ・サイコミュを起動できたマチュはやはりニュータイプなのだろうか？ サイコミュやニュータイプという設定は、ガンダム世界における超常現象を一手に担う便利設定として活用されている。
だが、サイコミュを操れるのはニュータイプに限らない。ニュータイプの精神感応能力を戦闘目的の為だけに人工的に開発された「強化人間」という兵士も存在する。だが、多くの場合強化人間はその出自に相応しい悲劇の結末を迎えてきた。戦いの為だけに生まれ、戦いの中に散っていった。
戦後という一見「平和」な時代を舞台にしたガンダム作品の主人公ながら、実はマチュはニュータイプではなく「強化人間」なのではないかという考察をしてみたい。マチュが強化人間であるとすれば、自らの強い動機や主体性がないままにガンダムジークアクスを操れるという描写も、そもそもマチュ自身がそのような「機械仕掛け」であることを象徴しているのだと見れば腑に落ちる。
ガンダムジークアクスを素人のマチュがいきなり動かせてしまったのも、実は「オメガ・サイコミュ」というのはニュータイプというより強化人間に対応するシステムであり、マチュはそれに適合するように「作られた」存在ではないかというのが筆者の考察だ。
そして、この設定および描写はガンダムというよりもむしろカラーの代表作である「エヴァンゲリオン」シリーズを彷彿とさせる。エヴァンゲリオン初号機は、主人公である碇シンジの才能や技能によってというより、その出自によって動かされていた。生まれながら「シンクロ率」の高いシンジは、技術に関係なくエヴァンゲリオンを動かせるのだ。
果たして、ガンダムジークアクスはマチュの意志に反応したのか、それとも身体に反応したのか。何故マチュはガンダムジークアクスを動かせ、そして動かすことで何を達成しようとするのかに注目して観ていきたい。
【『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ガンダム・ジークアクス）』第3話ネタバレ感想】
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ガンダム・ジークアクス）』もTV放送を開始して3話が経過した。これまでのところ、劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の内容をなぞっているだけであり、ストーリー的に前進している印象はない。来週の4話から本格的に物語が動いていくのだろう。
これまでの感想としては、繰り返しになるが今のところキャラクターに強い「動機」や「目的」が感じられないままに戦闘が描かれているというところが筆者としては気になるという感想だ。
だが、これまで考察してきたようにマチュの出自に秘密があり、明かされていないシュウジの目的が明かされるなどしていけば物語も動いていくだろう。考察とは異なる展開だとしても、敢えて「戦後」の「少女」を主人公にした「ガンダム・ジークアクス」がどのような「新しい物語」を見せてくれるのかを期待したい。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は毎週火曜24時29分から日テレ系30局ネットで放送中。
アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』公式サイト
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第4話の感想＆解説はこちらから。
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