映画『名探偵コナン 隻眼の残像』公開
劇場版『名探偵コナン』の第28作目となる映画『名探偵コナン 隻眼の残像』が2025年4月18日(金) より全国の劇場で公開された。『名探偵コナン 隻眼の残像』では映画シリーズでは初めて長野県警にスポットライトが当てられた。
特に注目を集めたのは、諸伏高明と景光の兄弟について。アニメシリーズで描かれてきた二人の関係、そして安室透とのストーリーに進展はあったのか。今回は『名探偵コナン 隻眼の残像』のネタバレありで諸伏と安室に関するストーリーラインを解説し考察していこう。
なお、以下の内容は映画『名探偵コナン 隻眼の残像』の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『名探偵コナン 隻眼の残像』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『名探偵コナン 隻眼の残像』諸伏高明と景光に何があった?
高明が見た景光
映画『名探偵コナン 隻眼の残像』では、毛利小五郎の警視庁時代の同僚だった鮫谷が殺され、コナン達は犯人の手がかりを追って長野へ赴く。そこで小五郎は長野県警の大和敢助、上原由衣、そして諸伏高明と共に捜査に臨むことになる。
10ヶ月前の事件で犯人を目撃していた大和敢助が命を狙われる中、諸伏高明は犯人の攻撃から敢助を身を挺して助け、滝壺に落ちてしまう。高明は氷が張った滝壺から水面に出ることができず、意識を失ってしまう。そこで弟・諸伏景光の姿を見るのだ。
高明の弟・諸伏景光は後述する理由で死んだと思われていたが、景光は死んだように仲間が偽装してくれたと高明に話す。そして、長野県に戻った後に高明が行方不明だと聞き、警察無線を辿ってここまでやって来たと話すのだった。
高明は流石の推理力で、この光景が現実ではないことを見破る。警察無線を追ってここに辿り着けたのであれば、他に警察がいるはずで、景光が一人でいるのはおかしいと考えたのだ。それに、景光がいた場所は長野の雪山ではなく、雪のない温暖な地域だった。
おそらく景光がいたのは死後の世界だと考察できる。それが高明の意識の中の出来事だったとしても、高明が景光の手を掴めば高明は現世に戻ることなく命を落としていたのだろう。高明はすんでのところで空に向かって銃を撃ち、敢助らに居場所を伝えることで生き延びたのだった。
高明が死の寸前で見た幻覚が景光の姿だったというのは重要なポイントだ。後で解説する通り、諸伏兄弟の両親はすでにこの世を去っており、高明は唯一の身寄りだった景光の姿を見たことになる。高明の反応を見るに、高明は景光は生きているかもしれないという僅かな希望を抱いていたと考えられ、それが幻覚という形で現れたものと考察できる。
降谷零の反応
映画『名探偵コナン 隻眼の残像』では、高明は滝壺から救出された際に「景光」と呟き、コナンに仕掛けられた盗聴器を通して公安警察の風見裕也がその声を聞くことになる。ポストクレジットシーンでは、風見がこのことを同じく公安警察捜査官の降谷零(安室透)に報告。風見は降谷の同期に諸伏景光という人物がいたことを指摘するが、すでに降谷の姿はなくなっていた。
映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(2022) では、風見は諸伏景光の死についてコナンから聞かれた際に、「極秘扱いだ」「今回の事件とは無関係」とだけ答えている。『隻眼の残像』で風見が降谷に景光について尋ねようとしたことを踏まえると、風見は景光の死については知っているが、景光が高明の兄弟だということは知らなかったようだ。
では、なぜ降谷零/安室透は諸伏景光について曖昧な反応を見せるのだろうか。ここからはアニメシリーズと過去の劇場版で描かれた諸伏景光のストーリーについて解説しよう。
ネタバレ解説:諸伏景光の過去
諸伏家と降谷零の関係は?
諸伏高明と景光は6歳離れた兄弟。高明が13歳、景光が7歳の時に両親が殺され、高明は長野の親戚に、景光は東京の親戚に預けられて生活することになる。景光が東京に出て来た時に出来た友人が降谷零で、景光と降谷は同級生の幼馴染ということになる。つまり、高明と降谷も6歳差である。
アニメシリーズ警察学校編の第1061話では、諸伏兄弟の両親が殺された事件がフィーチャーされた。警察学校時代の降谷と景光達が協力し、諸伏夫妻を殺害した犯人の逮捕にこぎつけたのである。幼馴染であり警察学校でも時間を共にした降谷と景光の間には特別な絆があるのだ。
高明と景光は両親を亡くして以降は離れて暮らしていたが、仲は良く連絡は取り合っていた。アニメシリーズ1003-1005話「36マスの完全犯罪」編では、高明が大学生の頃に東京で景光と会う際に、景光が降谷をカフェに連れてきており、高明と降谷に面識があったことが明かされた。
「36マスの完全犯罪」編では、高明は降谷零の仮の姿である安室透としてコナン・小五郎と共に事件の推理にあたる姿を目撃しており、降谷零に何らかの裏があることに勘付いている。景光は降谷について「僕や兄さんみたいに警察官を目指してるんだってさ」と高明に紹介しており、高明が小五郎の前で身分を偽っている降谷を公安警察だと気づいていると思われる。
景光の死の真相
866-867話「裏切りのステージ」編ではFBI捜査官の赤井秀一が変装した沖矢昴が安室透を前にして、景光が死んだ際の出来事が回想で描かれた。赤井、降谷、景光は揃って黒の組織での潜入捜査を行なっていたが、スコッチの名で潜入していた景光は正体がバレたことで拳銃自殺を図っていた。
赤井はそれを止めて、自身もFBIから潜入している捜査官であることを明かしたが、景光は近づいてくる降谷の足音を組織の人間のものだと誤認して自身に向けて銃の引き金を引いてしまった。その時、赤井は景光が仲間や家族の情報を守るためにスマホごと自分を撃ち抜いたことに気づいている。つまり、景光は公安の仲間はもちろん、唯一の肉親である高明のことも守ろうとしたのである。
景光が自分を撃ち抜いた直後にその現場に到着した降谷は、景光の死の責任が赤井秀一にあると考え、降谷から赤井を憎むようになっている。
アニメシリーズ836-837話「仲の悪いガールズバンド」編では、降谷、景光、赤井が黒の組織に潜入していた時代の回想が挿入された。赤井秀一の妹である世良真純が降谷、景光と共にいた赤井と会った時、景光は真純にベースの弾き方を教えてあげたというエピソードが明かされる。このエピソードを聞いた降谷は、改めて赤井が景光を殺したという認識を見せている。
高明が見た安室
983-984話「キッドVS高明 狙われた唇」編では、最後に高明のもとに景光のスマホが届けられる。その封筒は安室が高明に届けるように手配したもので、封筒の裏には「0」と書かれている。この時点で高明は景光が公安で殉職したことを察し、「0」の文字を見て小さい頃景光が「ゼロ」と呼んでいた景光の友人の姿を思い浮かべている。
「36マスの完全犯罪」編で偽名を使っている降谷零の姿を見た高明は、改めて降谷“零=0”という暗号に確信を得ている。つまり高明は景光の死を悟った上で、その死の真相をスマホの送り主である降谷が知っているということも見抜いているのだ。
1123-1124話「群馬と長野 県境の遺体」編では、群馬県警の山村ミサオと諸伏景光が幼馴染であったことも明かされている。ミサオは景光が警察を辞めたと認識していたが、高明は公安に所属する警察は身内に対しても警察を辞めたことにしなければならないため、景光はおそらく公安の所属になったと推理していた。
「群馬と長野 県境の遺体」編のラストでは、ミサオが5-6年前に景光から手紙を受け取っていたことが明らかになる。手紙を送った景光は、幼い頃にミサオと一緒に作った秘密基地に「僕も警察官になったよ! ミッちゃん」という文字を残していた。警察をすでに辞めているにもかかわらずこんなメッセージを残すということは、やはり景光は公安に配属されたのだと、高明は確信を強めている。
高明・景光・安室の今後をネタバレ考察
景光は生きている?
「群馬と長野 県境の遺体」編では、高明は、今もどこかで景光は正義の味方をやっているとミサオを励ました。景光にはファンも多く、生存説も根強い。果たして景光は生きているのだろうか。
映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』では、犯人のプラーミャが萩原研二と松田陣平を殉職させた犯人を脱獄させ、警察学校組のメンバーを誘き出そうとした。結果、現れたのは降谷零のみで、プラーミャは諸伏景光について「死んでいるんだろ?」と見当をつけている。
実は赤井秀一が景光の死を偽装していた、というセオリーも根強いが、映画『名探偵コナン 隻眼の残像』では、死に瀕した高明が景光の姿を見たことで、逆説的に景光の死が明示されたとも考えられる。仲間が死を偽装してくれたという景光の主張を高明が否定したことで、一旦、景光生存説には終止符が打たれたと考えてもよいだろう。
降谷と高明の共闘も?
気になるのは、降谷零は諸伏高明に対してどのような思いを抱いているのかということだ。降谷は赤井への恨みを晴らそうとすると考えられるが、降谷はなぜ高明に景光のスマホを送ったのだろうか。
降谷は公安という立場から景光の死については明かせないが、幼馴染の兄という関係性から景光に遺品を渡す必要があると考えたのかもしれない。あるいは渡した遺品が撃ち抜かれたスマホだったということは、高明に景光の死について解き明かしてほしいという願いがあるのかもしれない。
もし降谷が高明を公安に引き込むことができれば、降谷×高明のタッグで赤井秀一を追い込むことも考えられる。映画『名探偵コナン 隻眼の残像』で、長野県警の物語には一段落つきながらも、高明と降谷のつながりに再度スポットライトが当てられた理由は、公安警察・高明誕生の布石だったのだろうか。
降谷にはそんな狙いがありつつ、個人的な感情が入り混じっていることから、風見にもその狙いは共有できず、『隻眼の残像』の最後に風見から景光について聞かれた時も答えずにその場を去ってしまったのかもしれない。
ポイントになるのは、見た目に反して諸伏高明は強引な捜査を行うことがあるという点だ。幼馴染である大和敢助が行方不明になった時には、高明は上司の命令を無視して捜査を行なっている。結果として高明は長野県警本部から所轄へと異動となっており、危うさを抱える刑事でもある。
両親が殺されたり、弟の死を知ったり、『隻眼の残像』で敢助が死んだと聞かされた時には冷静に振る舞っていた高明だが、根っこには熱いものを抱えている。大事な人のためであれば手段は選ばないという人材は、実は降谷が最も求めている存在なのかもしれない。
映画『名探偵コナン 隻眼の残像』のクライマックスでは、諸伏高明は髪をなびかせて車を運転するクールなシーンもあった。またどこかの劇場版で降谷×高明の物語が誕生することに期待したい。
映画『名探偵コナン 隻眼の残像』は2025年4月18日(金) より劇場公開。
『名探偵コナン 隻眼の残像』のサントラは発売中。
ノベライズ版『名探偵コナン 隻眼の残像』も発売中。
漫画『名探偵コナン』は最新刊107巻は4月18日発売。
『名探偵コナン 隻眼の残像』ラストの解説&考察はこちらから。
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』ラストの解説はこちらから。
『100万ドルの五稜星』ラストを踏まえたコナンとキッドの関係についての解説&考察はこちらの記事で。
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』ラストのネタバレ解説はこちらから。
『名探偵コナン 紺青の拳』ラストのネタバレ解説はこちらから。
『名探偵コナン 水平線上の陰謀』ラストのネタバレ解説はこちらから。
『名探偵コナン 14番目の標的』ラストのネタバレ解説はこちらから。