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電子音とラップが蘇らせたデビルマン。音楽から見る『DEVILMAN crybaby』

伝説的作品の完全アニメ化を実現させたもの

映像化困難とされた原作漫画

1月5日にNetflixで全世界同時に公開された『DEVILMAN crybaby』(2018)。永井豪原作の伝説的コミック『デビルマン』(1972-1973)の完全映像化とあって、SFファンからも大きな期待を持って迎え入れられた。同作は、一人の青年が悪魔の力を手にいれる個人の物語から、「人間」の姿を描く大作SFへと変貌を遂げるダイナミックさを持つ。かつてのテレビシリーズ『デビルマン』(1972-1973)では1話完結のヒーローアニメとして制作されるなど、ストーリーを忠実になぞる完全映像化には困難さがつきまとう作品だ。アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』(2017)などを手がけた湯浅政明監督が指揮をとった「crybaby」は、海外からも高い評価を得ている。ダイナミックな展開をたった10話で描き切ることに成功した同作の根源にあるエネルギーとはー

観る者を導いた牛尾憲輔の音楽の力

巨匠スタンリー・キューブリック監督は、物語と音楽をシンクロさせることで、映像作品における音楽の地位を高めたことで知られている。大作SFドラマである「デビルマン」をたった10話で描くという偉業に大きく貢献したのも、ほかでもない「音楽」の力だ。同作の特徴は、現代的な若者の青春ドラマと、人類の過去と未来を巡る物語が同時進行するハイテンポなストーリー展開。その中でも、牛尾憲輔ことagraphが手がけたサウンドトラックが、急展開の物語を演出すると同時に観る側の情緒を導いてくれる。愛、憎しみ、悲哀や怒り、不安といった感情が渦巻く同作だからこそ、観る側の感情を「整理」してくれる質の高い音楽はどうしても必要な要素だったのだ。

主題歌を手がけたのは電気グルーヴ

電気グルーヴが10年前にも手がけたアニメ主題歌とは?

同作の主題歌「MAN HUMAN」を手がけたのは、牛尾憲輔がサポートメンバーを務める電気グルーヴ。牛尾憲輔が手がけた音楽と共に、大胆なまでにこれまでの「デビルマン」の雰囲気を塗り替える電子音が、サイエンスSARU制作のアニメーションを彩った。電気グルーヴは、「クライベイビー」配信からちょうど10年前に、『墓場鬼太郎』(2008)でもアニメ主題歌を手がけている。『墓場鬼太郎』は、「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズの原案に当たる同名作の貸本をアニメ化した作品。前回は妖怪もの、今回は悪魔もの。奇しくも、電気グルーヴは10年越しで名作のアニメ化で主題歌を担当することになったのだ。

衝撃回のエンディングテーマも

更に、電気グルーヴの石野卓球は、七尾旅人とのユニット、”卓球と旅人”名義の書き下ろし曲「今夜だけ」を提供。衝撃的なラストを迎える第9話でのみ流れるエンディングテーマとして挿入された。制作陣が物語の演出の一環として音楽を強く意識していることは明らかだ。なお1月10日には、電気グルーヴの「MAN HUMAN」と卓球と旅人の「今夜だけ」を収録したシングルが発売されている。

ラップが果たした役割とは

現代版デビルマンの象徴となったラップ

ウェブアニメということで、少年誌やテレビアニメでは表現できなかった「リアル」な描写を取り入れながら制作された「crybaby」。音楽という観点では、もう一つの大きな特徴は、何と言っても劇中に挿入されるラップの存在だろう。同作では原作漫画で登場した不良グループの設定を、いわゆるB-BOYのグループに変更。物語上も重要な役割を果たす彼らを、現代の若者たちとして登場させることで、原作のアレンジに成功している。

KEN THE 390に般若とAFRA、ラップにかける本気度

劇中歌としてTVアニメ版主題歌「デビルマンのうた」をカバーしたアヴちゃんは、本編でも魔王ゼノン役で声優を務めた。一方で、ラッパーの般若とビートボクサーのAFRAは、声優としての出演になっているものの、ラップとビートボックス以外で台詞を発することはなかった。まさに「専門職」としての参加と言っていいだろう。

劇中のラップは、声優としても参加したラッパーのKEN THE 390が監修を担当している。

同作では、お遊びではなく、まさにプロの集団によってラップが挿入されているのだ。

ストリートの代弁者としてのラッパー

実は、音楽による演出の妙はここでも見られる。彼らがラップで吐き出す言葉は、自分たちの気持ちだけではない。鬱屈とした街の状況や社会を取り巻く人々の心境、刻一刻と変化する世界の様子を描き出す彼らのラップは、物語のナレーションとしての機能をも果たしているのだ。繰り返しになるが、様々な感情が渦巻く壮大なストーリーを10話のアニメで描き出すことは至難の技。ラップの情報量を活かしたこの技法は、ストリートのレポーターあるいは代弁者としてのラッパーの役割を見事に捉えた演出だったのだ。
このように、音楽の力を最大限に活かして制作された「crybaby」。サバトで悪魔が召喚されたように、劇中に鳴り響いた数々の「音楽」が現代にデビルマンを蘇らせたのだ。

『DEVILMAN crybaby』公式サイト

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via: © Go Nagai-Devilman Crybaby Project

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