アメコミヒーロー映画とスーツ 【DCヒーロー達のスーツ事情】 | VG+ (バゴプラ)

アメコミヒーロー映画とスーツ 【DCヒーロー達のスーツ事情】

© 2020 DC Entertainment

アメコミヒーロー映画はSF映画界の「異端児」?!

「ロボットモノ」や「タイムスリップモノ」などの王道のSF映画と比較して、現代のアメコミヒーロー映画は、数多くの特異な風習やカルチャーを保持してきた。商業主義を良しとしてきたハリウッドという特殊な世界。そこで育まれた、時に過剰ともいえる演出の数々は、けれど、長年にわたって観るものを魅了している。

王道となったスーツを巡る物語

そんなお馴染みの演出の一つが、アメコミヒーロー達が着用する「スーツ」である。アメコミヒーロー映画においては、観客にとってスーツは原作コミックで慣れ親しんだ既知の存在であり、約2時間の物語の中で主人公がそのスーツを手に入れる(あるいはアップグレードする)までの冒険や苦難、そしてそれらを通した成長の過程を見せる演出が王道となった。
今回は、スーパーマンとバットマンという王道アメコミヒーローを描いてきた、DCコミック映画でのスーツ事情をご紹介する。後日公開予定のマーベルヒーローのスーツ事情と、スーツをデザインするクリエイターの挑戦も合わせてご覧いただきたい。

スーツと共に生まれ変わったスーパーマン、DCの逆襲!

「スーパーヒーローの原点」とも呼ばれるスーパーマン。近年はそのポジションをマーベルのキャプテン・アメリカに奪われつつあったが、ザック・スナイダーとクリストファー・ノーランがタッグを組んだ『マン・オブ・スティール』(2013)で見事に復活。ジャスティス・リーグへとつながるDCエクステンデッド・ユニバース(以下、DCEU)の最初のキャラクターとして、続く『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)、『ジャスティス・リーグ』(2017)でも、圧倒的な存在感を見せつけた。

デザインが一新されたスーツ

そんな復活劇の背景にあるのが、ブライアン・シンガー監督の『スーパーマン リターンズ』(2006)から一新されたスーツデザインだ。スーパーマンといえば、青色のタイツに、赤色のパンツとマント、黄色いベルトという三原色を惜しみなく使用したデザイン。アメコミの良さの一つでもある大味な色調だ。しかし、それが一たび現実に現れると、文字通り「コミカル」な見た目になってしまう。

ザック・スナイダー版のスーパーマンは、一転してダークな色調に。大胆にも、赤いパンツと黄色いベルトはそっくりそのまま取り払われた。「スーパーマンがソ連に墜落していたら?」というIFストーリーを描いたアメコミ作品『スーパーマン:レッド・サン』(2003)でスーパーマンが着用したダークなスーツに似たデザインとなっている。

同じスーツを大量生産!?

結果的に映画を成功に導いたスーパーマンの新スーツだが、『マン・オブ・スティール』の撮影にあたって、制作されたスーツはなんと18着。これは、スタントシーンにも備え、同じものを18着用意していたということである。数ヶ月の撮影期間を乗り越えるための、ハリウッド流の贅沢な準備方法と言えるだろう。

スーツと共に描かれた、「老いたバットマン」、ノーラン版とスナイダー版のスーツの違い

では、そんなスーパーマンのライバルにして良き相棒である、バットマンのスーツはどうだろう。スーパーマンのスーツは、DCEUシリーズの開始に合わせて一新されたが、バットマンについてはクリストファー・ノーラン監督版のバットマン(『バットマン ビギンズ』(2005)、『ダークナイト』(2008)、『ダークナイト ライジング』(2012))と同じく、黒とグレーを貴重にしている。ノーラン版の重厚なイメージが強いため、あまり変化がないと思われがちだ。しかし、ノーラン版のバットマンと、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のバットマンを比べると、違いは一目瞭然。ノーラン版バットマンは「アーマー」に近い造りだが、スナイダー版ではまさに「スーツ」。ピッタリと身体にフィットするタイプに変更された。そしてこのデザインが、同作で登場した、対スーパーマン用のアーマードスーツの存在感をより強烈なものにした。

超ヘビー!重すぎるバットスーツの理由

このアーマードスーツは、老いたバットマンを描いたコミック『バットマン:ダークナイト・リターンズ』からアイデアを得たもの。一人では着脱できないほどの重量を持つこのアーマードスーツについて、DCEUでバットマンを演じるベン・アフレックはこう語っている。

脱ごうと思ったら何人かのスタッフがドリルで取り外さなきゃいけないんだよ。狭苦しいし動きづらい。でもね、スーパーマンと戦おうっていうんだから、それくらいのことはやらなきゃいけない

By ベン・アフレック

ベン・アフレックは、クリスチャン・ベールが演じたノーラン版バットマンを絶賛した上で、自分たちは何か違うことをやらなければいけないと感じていたと話す。アーマードスーツが登場したコミック版と同じく、バットマンは少し歳をとった設定に変更され、スーパーマンとの戦いにおいても重装備で挑むことになったのだ。作品の空気感だけでなく、描きたいキャラクター像によってもスーツの造りは変化する。多くのアメコミヒーローと違い、歳をとる生身の人間であるバットマンならではのエピソードである。

歴史を塗り替えるという挑戦

スーパーマンとバットマン、この二人のキャラクターが他のアメコミヒーローと圧倒的に異なる点は、幾度となくスクリーンに登場した歴史あるキャラクターだということだ。DCEUの中で、スーパーマンとバットマンの次に登場するワンダーウーマン以降の作品は、いずれも初の実写映画化。一発回答を求められる難しさはあるが、今までのイメージを覆しながらもファンに受け入れられる作品を作る難しさは、この両巨頭の制作陣にしか分からないものだろう。DC作品ならではのチャレンジともいえる。歴史あるアメコミキャラクターに新しいコンセプトのスーツを着せる、そこにもまた挑戦とドラマがあるのだ。

Source
©2018 Hearst Communications. / https://www.cbr.com/batman-15-movie-suits-ranked-from-worst-to-best/ / © 2018 CBR. / © 2018 CBR. / © 2017 Batman News. Not affiliated with Warner Bros. or DC Comics.

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