『シン・仮面ライダー』3月18日より全国公開 『シン・ゴジラ』以来となる庵野秀明監督実写作品の公開日と新キャスト発表 | VG+ (バゴプラ)

『シン・仮面ライダー』3月18日より全国公開 『シン・ゴジラ』以来となる庵野秀明監督実写作品の公開日と新キャスト発表

©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」映画作品第4弾 2023年3月18日全国公開

日本三大特撮ヒーローとも呼ばれ、東映の看板とも言える「仮面ライダー」シリーズ。その原点である『仮面ライダー』(1971-1973)のリメイクとも呼べる『シン・仮面ライダー』(2023)が2023年3月18日(土)、一部劇場では3月17日(金)に全国最速公開される。

『シン・仮面ライダー』は『シン・ゴジラ』(2016)以来、7年ぶりに庵野秀明監督が指揮する実写作品で、2022年5月13日公開の『シン・ウルトラマン』に次ぐ「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」映画作品としては第4弾となることが発表されている。

制作発表は「仮面ライダー生誕50周年記念企画発表会見」で行われ、人気作だった『仮面ライダーW』(2009-2010)の後日談である漫画『風都探偵』(2017-)のアニメ化、『仮面ライダーBLACK』(1987-1988)のリブート作品である『仮面ライダーBLACK SUN』(2022)の発表の最後に目玉企画として発表された。長年、「仮面ライダー」シリーズのプロデューサーを務め、東映の上席執行役員でもある白倉伸一郎氏は『シン・仮面ライダー』について、「全人類に向かって放つ作品になる。まだ確定はしていないが、全世界同時公開を目指している」と発言していた。

そのような『シン・仮面ライダー』の公開日、新予告映像、新ポスター、追加キャスト、役柄発表など7つの情報が、1973年2月10日に初代『仮面ライダー』の最終回が放送されたことに合わせて、2023年2月10日に発表された。新予告映像ではこれまでの映像に加えて愛車であるサイクロン号で疾走する場面やSHOCKER上級構成員クモオーグとの戦闘場面、さらには後ろ姿しか公開されていなかったSHOCKER上級構成員コウモリオーグの全身像も公開され、現在コミカライズ展開されている『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』(2023-)の登場人物が実写でも登場することが発表されるなど、非常に興味深い内容になっている。

さらには新たな予告映像では最新技術でよみがえった『仮面ライダー』でも見られたサイクロン号の変形場面や、激しいアクション場面、池松壮亮氏演じる仮面ライダー/本郷猛の体に起きている謎の現象、柄本佑氏演じる仮面ライダー第2号/一文字隼人の変身ポーズなど誰よりも『仮面ライダー』など特撮作品に造詣が深い庵野秀明監督だからこそできるであろうファン垂涎の追加場面に加えて、予告映像の最後を仮面ライダーを代表する必殺技「ライダーキック」で終わらせるなど、考察の余地が多く残されたものとなっている。

追加キャスト発表と役柄発表

予告映像を含めた7つの新情報では、今まで存在を明かされていなかった登場人物やキャスト、そして発表はされていたキャストの役柄発表が行われた。その中では浜辺美波氏演じる緑川ルリ子の兄・緑川イチローを森山未來氏が演じることが発表された。

緑川イチローは現在ヤングジャンプ誌上で連載されている『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』の主人公を務め、第一話である『PART1「願い」の始まり』の冒頭ではSHOCKERの基地を破壊するかのようにもとれる登場を果たしている。その姿は『仮面ライダー』が誕生する前にスカルマンなどと共にデザインされ、企画として進んでいた『十字仮面(クロスファイヤー)』に酷似した姿をしている。

十字仮面(クロスファイヤー)は『ファイヤー十字(クロス)』や『十字仮面』、『クロス火面』などタイトルでも企画され、「オートバイに乗るスーパーヒーロー物」としてMBSからの注文に応える形で石ノ森章太郎先生によってデザインされた。言わば「仮面ライダーの先祖」に当たるヒーローだ。そのような姿に変身していた緑川イチローだが、予告映像ではケーブルやチューブのようなものが接続され、森山未來氏も生気のないような顔をしている。十字仮面(クロスファイヤー)が何故そのような姿になったのか、そこにも注目が集まる。

「仮面ライダー」シリーズ初の女性怪人として『仮面ライダー』に登場した蜂女をリメイクしたSHOCKER上級構成員ハチオーグ役に乃木坂46の元メンバー・西野七瀬氏が起用されることが予告映像の中の描写として発表された。それまで仮面で顔を隠した姿やシンボルマークでしか描かれなかったハチオーグだが、今回の予告映像での描写からかなりの重要人物であることが考察できる。また「新宿バルト9」で2023年2月10日よりハチオーグの装飾が展示されるなど、『シン・仮面ライダー』でのキーキャラクターになることは間違いなさそうだ。

それまで後ろ姿しか公開されていなかった手塚とおる氏演じるSHOCKER上級構成員コウモリオーグの姿も公開された。革のライダースーツのような出で立ちだった同じくSHOCKER上級構成員のクモオーグやハチオーグの二人に対し、白衣を着こみ、研究に打ち込むなど改造されたSHOCKER上級構成員としてはイレギュラーな存在であることが見て取れる。容姿も他とは異なり、バッタオーグである池松壮亮氏演じる本郷猛や柄本佑氏演じる一文字隼人、西野七瀬氏演じるハチオーグ、そして漫画『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』のクモオーグやサソリオーグが仮面の下は人間の顔をしていたのに対し、コウモリオーグは動物的な異形の姿であることが明らかになった。

この研究員のような役職は初代『仮面ライダー』第二話で登場した怪人・蝙蝠男がショッカーの科学陣が開発した人間を吸血鬼のような姿にするウィルス(当時表記ではビールス)を培養し、人間に感染させる、感染者を操る人体実験を行うといったマッドサイエンティスト的な行動をとっていたことからきていると考察できる。

『仮面ライダー』では、感染者を治療するために仮面ライダー1号は蝙蝠男と真夜中に戦い、最期は赤々とした流血場面で終わるというホラーな展開を迎えることになる。庵野秀明監督は初代『仮面ライダー』のホラー的演出を高く評価しており、それが『シン・仮面ライダー』でも反映されるのか気になるところだ。

また同じ研究員として、浜辺美波氏演じる緑川ルリ子と森山未來氏演じる緑川イチローの父親であり、SHOCKERの研究員である塚本晋也監督演じる緑川弘博士との関係性も興味深い。緑川弘博士は、初代『仮面ライダー』では娘である緑川ルリ子の安全と引き換えにショッカーに協力してしまい、本郷猛をショッカー幹部候補に推薦した改造される前の本郷猛にとっては恩師で良心の呵責からショッカー基地からの脱出の手助けをして命を落とす人物だ。一方、『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』ではSHOCKERの思想に心酔するある種のマッドサイエンティストとして描かれている。初代『仮面ライダー』では野々村潔氏演じる緑川弘博士と塚本晋也監督演じる緑川弘博士の人物像の違いについても注目していきたい。

広がっていく「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」

今回の予告映像で発表された情報は「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」についても重要な意味があると考えられる。手塚とおる氏は『シン・ゴジラ』では関口悟郎文部科学大臣を演じ、塚本晋也監督は国立城北大学大学院生物圏科学研究科准教授の間邦夫を演じている。これらのキャストの共通は、監督が特定の俳優と頻繁に映像制作を行う〇〇組と呼ばれるような、今回では庵野組と言えばそれまでだが、映画『シン・ウルトラマン』が今回のキャスティングが単なる庵野組ではない可能性を示唆している。

『シン・ゴジラ』に登場し、狡猾さかつ強かで体制側の立場を貫き、ゴジラによる騒乱の中で里見臨時内閣の内閣官房長官に就任するなどした国家安全保障担当の内閣総理大臣補佐官の竹野内豊氏演じる赤坂秀樹の存在が、その最たる例だ。赤坂秀樹という名前は明確に出ていないものの、『シン・ウルトラマン』では体制側の人間として外星人の山本耕史氏演じるメフィラスや斎藤工氏演じるウルトラマンと巧みに交渉を行う「政府の男」として竹野内豊氏が再登場したのだ。これにより、『シン・ウルトラマン』と『シン・ゴジラ』の世界観の繋がりが緩やかながらにも明らかになった。

他にも『シン・ウルトラマン』では、リメイク元である『ウルトラマン』(1966-1967)で『ウルトラQ』(1966)のタイトルロゴ映像から真っ赤な映像へと切り替わり、『ウルトラマン』のタイトルがクレジットされるのを『シン・ゴジラ』に替えて行われた。本編では『シン・ゴジラ』のCGを一部流用し、ゴメスを登場させ、禍威獣たちの被害が『シン・ゴジラ』の被害をなぞるように展開されている。特に巨大不明生物ぺギラ戦では「女性生物学者が弱点を発見したことによって駆除された」ことを明言し、『シン・ゴジラ』でヤシオリ作戦の切っ掛けを作った市野実日子氏演じる環境省自然環境局野生生物課長補佐の尾頭ヒロミの存在を示唆した。

『シン・ウルトラマン』に関してはCGを使いまわすという予算の都合や、ゴジラの着ぐるみが改造されてゴメスとなったことへのオマージュもあるが、こうして「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」が実写映画第2弾で形作られていった。実写映画としては第3弾に当たる『シン・仮面ライダー』では漫画『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』で脳の研究を行っていたことが明かされた学会の異端児・緑川弘博士と、『シン・ゴジラ』の巨災対に所属する学会の異端児・間邦夫の両名を塚本晋也監督が演じることでより強いユニバースの繋がりを見てとれる。

庵野秀明監督が描く特撮ヒーローの「シン」化に期待!

庵野秀明監督は『シン・ウルトラマン』の監督を務めた樋口真嗣監督と共に特撮技術や特撮ヒーローの今後について考えていることを方々で語っている。その例の一つがCGを一切使用しないという制約の下で特撮技術を駆使した『巨神兵東京に現わる』(2012)だ。『シン・仮面ライダー』でも最初に公開された『仮面ライダー』のオープニングを再現した映像では、当時と全く同じ撮影方法が用いられ、断片的に公開されている情報では『仮面ライダー』当時の小道具を用ったとしている。新予告映像でもミニチュアセットの爆破など、特撮技術をふんだんに使用している。

また、特撮技術以外にも『シン・ゴジラ』からは東日本大震災の影響が読み取ることができ、『シン・ウルトラマン』はそこから一歩踏み込んで復興など今後の現実世界への希望が散りばめられた空想特撮映画となっている。キャッチコピーも「現実対虚構(ニッポン対ゴジラ)」から「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」という『ウルトラマン』でのゾフィーの台詞や「空想と浪漫。そして、友情。」という希望に満ちたものになっている。それを踏まえて『シン・仮面ライダー』のキャッチコピーは「変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。」ということが発表され、庵野秀明監督の特撮と現実への想いを考察できるものとなっている。

庵野秀明監督は『シン・ウルトラマン デザインワークス』の中で他の特撮ヒーローの制作にも言及しており、共に「シン・ジャパン・ヒーロー・ユニバース」に参加している円谷や東映も非ウルトラマン系ヒーローや非仮面ライダー系ヒーローの再発掘に尽力している。ゴジラ関係では『ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ』(2019)のマイケル・ドハティ監督も「東宝は元祖シネマティック・ユニバース」と表現し、日本側もゴジラ作品のアニメ化や『ゴジラ(仮題)』(2023)などで再起動するなど、日本側の制作者全体に過去のヒーローの再発掘やユニバース化の兆しが見えはじめている。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)で終劇となった「エヴァンゲリオン」シリーズも新しい物語で窪田正孝氏主演『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』(2023)が新劇場「THEATER MILANO-Za」のこけら落とし公演として上演されることが決定している。「シン」とは銘打たれてはいないものの、庵野秀明監督を中心とする作品群は新たな展開を見せており、『シン・仮面ライダー』でどのような新展開を見せるのか、今後シリーズ化していくのか、期待していきたい。

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映画『シン・仮面ライダー』は一部劇場で2023年3月17日(金)18時より全国最速公開、3月18日(土)より全国で公開。

『シン・仮面ライダー』公式サイト

『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』は現在、『となりのヤングジャンプ』にて第一話無料公開中。

『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』

コミック版第1巻は2023年3月10日(金)発売。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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