『ザ・ボーイズ』と『スーパーナチュラル』に出演した俳優を解説!
2024年にシーズン4が配信開始された『ザ・ボーイズ』(2019-)だが、ファイナルシーズンとなるシーズン5にてジャレッド・パダレッキが出演することを米Deadlineが報じた。ジャレッド・パダレッキはエリック・クリプキが制作を務めた人気ドラマシリーズ『スーパーナチュラル』にて、主人公の1人であるサム・ウィンチェスターを演じていた俳優だ。
『ザ・ボーイズ』ではエリック・クリプキが『スーパーナチュラル』で起用した俳優たちを再起用する傾向がある。いわゆるクリプキ組と呼ばれる俳優たちを知ることは、『ザ・ボーイズ』を観る上で作品をより奥深いものにしてくれる。本記事では『ザ・ボーイズ』とそのスピンオフ作品である『ジェン・ブイ』に出演する『スーパーナチュラル』に出演したクリプキ組の俳優について解説をしていこう。
ソルジャー・ボーイ/ディーン・ウィンチェスター 演:ジェンセン・アクレス
『ザ・ボーイズ』に出演した最も有名な『スーパーナチュラル』出演俳優といえば、『スーパーナチュラル』で主人公のディーン・ウィンチェスターを演じたジェンセン・アクレスだろう。ディーン・ウィンチェスターはすべてを暴力と殺人で解決してきたような人物であり、怪物や悪魔からも恐れられているハンターである。その行動原理は父親への承認欲求と弟のサム・ウィンチェスターを守ることであった。
ジェンセン・アクレスは『ザ・ボーイズ』と『ジェン・ブイ』(2023-)ではソルジャー・ボーイを演じている。ペイバックというヒーローチームのリーダーであり、ホームランダー登場以前のトップヒーローだったソルジャー・ボーイもその行動原理の根底には父親への承認欲求があった。
ソルジャー・ボーイは『ザ・ボーイズ』シーズン3の中心人物であり、典型的な愛国者のスーパーヒーローだったが、道徳心に欠けており、人種差別的な発言をする冷酷な人物として描かれている。『スーパーナチュラル』のヒーローが『ザ・ボーイズ』ではヴィランのように扱われるのが、『ザ・ボーイズ』におけるクリプキ組の俳優の使い方と言えるだろう。
ロバート・A・シンガー/ボビー・シンガー 演:ジム・ビーヴァー
『ザ・ボーイズ』シーズン1から登場し、議員から大統領までに登り詰めたロバート・A・シンガーを演じるジム・ビーヴァーも『スーパーナチュラル』に出演している。ジム・ビーヴァーは『スーパーナチュラル』でボビー・シンガーを演じているが、ロバートの愛称はボビーであり、同名のキャラクターとして出演している。また、ボビー・シンガーは『スーパーナチュラル』の制作陣の1人の名前から取られている。
ボビー・シンガーはウィンチェスター兄弟の頼れる育ての親として、『スーパーナチュラル』のほぼ全シーズンで登場した。そこではすべての怪物狩りや悪魔祓いを行なうハンターたちの生き字引として活躍しており、ウィンチェスター兄弟だけではなく、すべてのハンターがボビー・シンガーを慕い、頼っていた。
それに対してロバート・A・シンガーはどこか頼りなく、ヴォート社との間で翻弄される政治家という印象が強い。そのため、ボーイズの面々からもあまり信用されていないように思われる。ロバート・A・シンガーとボビー・シンガー、同名のキャラクターでもはっきりと性格が異なるキャラクターだと言えるだろう。
ジョー・ケスラー/ジョン・ウィンチェスター 演:ジェフリー・ディーン・モーガン
『ザ・ボーイズ』シーズン4で登場したビリー・ブッチャーの元同僚で戦友のジョー・ケスラーを演じたジェフリー・ディーン・モーガンも、『スーパーナチュラル』に出演しているクリプキ組の1人だ。ジェフリー・ディーン・モーガンは『スーパーナチュラル』ではディーン・ウィンチェスターとサム・ウィンチェスターの父親であるジョン・ウィンチェスターを演じた。
ジョン・ウィンチェスターは黄色い目の悪魔アザゼルにより、妻であるメアリー・ウィンチェスターを焼き殺されて以来、怪物退治と悪魔祓いに執着したハンターとして描かれている。そのため、幼少期のディーン・ウィンチェスターは自分が父親と母親の代わりに弟のサム・ウィンチェスターを守らないといけないという責任感と、自分に振り向いてくれない父親への執着心を持つようになった。
ジョー・ケスラーはスーパーヒーローがいずれ人類に牙をむくことを危惧しており、ブッチャーがベッカの息子ライアンを奪還するのを手伝うのも、その理由は対ホームランダー用の兵士にすることだった。そのため、ジョー・ケスラーはスーパーヒーローを危険視するブッチャーと手を組んでいるが、残りの命をベッカの願いのために使うブッチャーとは根底では思想が異なっていると考えられる。また、ジェフリー・ディーン・モーガン自身は『ザ・ボーイズ』シーズン4の前からファン代表として番組に出演しており、エリック・クリプキとの再共演を希望していた。
ルーファス/ジャック 演:アレクサンダー・カルヴァート
『ジェン・ブイ』で登場し、自身の催眠能力を使い、性犯罪を繰り返していたルーファスも実は『スーパーナチュラル』に出演していたクリプキ組のメンバーである。ルーファスを演じていたアレクサンダー・カルヴァートは『スーパーナチュラル』では堕天使ルシファーの息子であり、新たなる神ジャックを演じていた。
『スーパーナチュラル』に登場したジャックは純粋無垢な性格で、変態と称されるルーファスとは正反対の性格の持ち主である。ジャックは魔王ルシファーの息子であり、堕天使の息子であるため、天使の子供のネフィリムでもある。そのため、大天使を凌駕するほどの力を持っており、全知全能の神との戦いではウィンチェスター兄弟と協力して勝利を収め、次世代の神となった。
そのため、『スーパーナチュラル』でのジャックを知る視聴者は『ジェン・ブイ』のルーファスのキャラクターの違いに驚いたことだろう。特に興味深かったのはマリー・モローに局部を爆破された場面だ。そこでルーファスは「Oh my god!」と叫んでおり、『スーパーナチュラル』の視聴者は「神はお前だろう」と思ったかもしれない。
ケイト・ダンラップ/ハーパー 演:マディ・フィリップス
『ジェン・ブイ』の主人公の1人であるケイト・ダンラップを演じたマディ・フィリップスも『スーパーナチュラル』に出演している。しかも、そこでルーファスを演じたアレクサンダー・カルヴァートのジャックと親密な関係になっているのが印象的だ。しかし、性格と関係性は正反対のものとなっている。
マディ・フィリップスが演じたハーパーは、表向きは何のトラブルも抱えていない図書館司書だった。しかし、その本性は怪物以上に怪物であり、自分の恋人のゾンビに自分へ言い寄ってきた男を捕食させて興奮するという性格の持ち主だった。そして、そのゾンビを倒したジャックにラブレターを送っているなど狂気的な人物だ。
『ジェン・ブイ』ではケイト・ダンラップはルーファスの催眠能力の被害者であり、性行為のビデオを撮影されてしまっていた。そんなルーファスの犯行は長続きせず、ルーファスはマリー・モローに局部を爆破され、更にはアンドレ・アンダーソンに殺されそうになった。この配役はエリック・クリプキが敢えて『ジェン・ブイ』と『スーパーナチュラル』でキャラクター像を逆転させたと思われ、このような配役の違いもクリプキ組から「ザ・ボーイズ」シリーズを楽しむ要素なのかもしれない。
ネイサン・フランクリン/別次元のミカエル 演:クリスチャン・キーズ
Aトレインの兄で、ブルーホークによって車椅子生活になってしまったネイサン・フランクリンを演じるクリスチャン・キーズも、『スーパーナチュラル』で重要な役どころを演じている。それは『スーパーナチュラル』のシーズン13とシーズン14のメインヴィランを務めた別次元の大天使ミカエルだ。
クリスチャン・キーズが演じた別次元の大天使ミカエルは少々難解なキャラクターと言える。『スーパーナチュラル』の主人公たちが暮らしている次元では、大天使ミカエルと魔王ルシファーはウィンチェスター兄弟たちの決死の作戦により地獄の檻に閉じ込められている。一方、別の次元ではウィンチェスター兄弟が存在せず、大天使ミカエルと魔王ルシファーが戦争を起こしている。その次元では大天使ミカエルが勝利しており、そのミカエルは自分の次元の地球の支配だけでは飽き足らず、ウィンチェスター兄弟のいる次元まで侵略しようとしていた。
傲慢で人間を見下す別次元の大天使ミカエルとは異なり、ネイサン・フランクリンは清廉潔白な人物として描かれており、コンパウンドVの依存症のAトレインを叱責している。それだけではなく、ヴォート社の生み出すスーパーヒーローの虚像に関しても懐疑的であり、Aトレインに現在のアメリカで黒人が置かれている状況を変えられるように声をあげるべきだと訴えていた。
スプリンター/チャック 演:ロブ・ベネディクト
トゥルーコンの参加者で、ファイアクラッカーの写真を見て変態的な行為をしていた分裂能力者スプリンターも『スーパーナチュラル』の出演者だ。スプリンターは変態的な行動をしてはいるが、あっさりと退場してしまっている。しかし、『スーパーナチュラル』でのロブ・ベネディクトが演じたチャックは重要なキャラクターとして描かれている。
『スーパーナチュラル』でのチャックは預言者であり、ウィンチェスター兄弟の行動を先読みし、知らず知らずのうちに小説として書いていた人物だ。天使カスティエル曰く、その小説は将来的にはウィンチェスターの福音書と呼ばれるようになり、新たな聖書の一部となるとのことだった。
『スーパーナチュラル』の終盤になるとチャックは預言者ではなく、すべてを計画していた全知全能の神であることが明らかになる。その性格は傲慢なところがあり、すべては自分の物語通りに進まないと気が済まない性分だった。最後はウィンチェスター兄弟たちに敗れ去ったが、それでも『スーパーナチュラル』において最強の存在であった。そのようなキャラクターを演じたロブ・ベネディクトが、変態的行為を行なうスプリンターを演じているのを観て『スーパーナチュラル』のファンは驚いたことだろう。
ブラックノワール/ケルビン 演:ネイサン・ミッチェル
顔を出してはいないが、本名がアーヴィングの初代ブラックノワールと2代目ブラックノワールを演じたネイサン・ミッチェルも『スーパーナチュラル』に出演している。無口でスタン・エドガーに忠実な初代ブラックノワールと、陽気でおしゃべりな2代目ブラックノワールを演じ分けるネイサン・ミッチェルが『スーパーナチュラル』で演じたのは天使ケルビンだ。
ケルビンは神の命令に忠実な天使たちの中で数少ない友好的な天使である。ウィンチェスター兄弟と共に世界を救うべく行動していた天使カスティエルにケルビンは協力してくれた天使だが、ネフィリムであるジャックの誕生を防ぐために行動を起こした
ネイサン・ミッチェルは『スーパーナチュラル』に出演した俳優の中で、最初に『ザ・ボーイズ』のレギュラーになった俳優だ。このキャスティングの時点で、エリック・クリプキは『スーパーナチュラル』に出演した俳優を『ザ・ボーイズ』で集めることを決定していたのかもしれない。
『ザ・ボーイズ』に出演する他のクリプキ組の俳優に注目!
これまで多くの『スーパーナチュラル』出演俳優を紹介してきたが、他にも『ザ・ボーイズ』にはクリプキ組と呼ばれる『スーパーナチュラル』出演俳優が起用されている。例えばブッチャーの母親のコニー・ブッチャーは、『スーパーナチュラル』ではヘンゼルとグレーテルの人食い魔女を演じている。
ライアンを監視していたパーク博士、ヴォート社のプロモーションビデオの兵士、若い頃のケンジ、MMの元妻なども『スーパーナチュラル』に出演していた俳優たちだ。細部に至るまで、エリック・クリプキたちがかつて手掛けたキャラクターたちを再利用して新しいキャラクターにしていると考察できる。そのような作風の中で、ジャレッド・パダレッキがどのような形で『ザ・ボーイズ』に出演するのかにも注目だ。
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