『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』上映中!
2023年1月20日(金)から『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』の上映が開始された。これは2018年にテレビ放送された『SSSS.GRIDMAN』を劇場版として総集編映画に仕立てたもので、今年3月に劇場公開が予定されている『SSSS.DYNAZENON 劇場総集編』、続く完全新作映画『グリッドマン ユニバース』へ連なるSSSSシリーズ映画第1弾となる。
それでは、早速ネタバレありで映画を振り返るとともに来る『グリッドマン ユニバース』の内容を予想してみよう。
以下の内容は、映画『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』の内容に関するネタバレを含みます。
『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』感想
ある日平和な街に怪獣が現れ、日常が崩れ去る。一人の少年がヒーローに変身し、街と怪獣を生み出す少女の心を救う。端的に言えば『SSSS.GRIDMAN』とはそういう話だ。
しかし原典である特撮版『電光超人グリッドマン』(1993~1994)からキャラクターも世界観も一新された為、『電光超人グリッドマン』とはどのような繋がりを持つのか、そもそもどういった世界を舞台として物語は展開されているのかなど全12話を通じて徐々に謎が明かされるストーリー展開に夢中にさせられた。
TVアニメ版の総集編ということで、映画としてどのような角度から纏めるのかを楽しみにしていた。TVアニメ版と同じく青空のシーンから幕明けるが、主人公である響裕太が記憶喪失を自覚する冒頭のシーンはカットされている。この意図について、TVアニメ版助監督であり本作『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』では監督を務めた金子祥之はパンフレットで「裕太たちの主人公感が立ちすぎてしまって、お客さんの気持ちをアカネに向かせられない」と語っている。
「単に短くするための改変や新作はやりたくなかった」と語る金子は、総集編を作るに当たってTVアニメ版主人公である響裕太よりもむしろ敵役である新条アカネにフォーカスして物語を再構築した。その為、冒頭に裕太が記憶喪失であるシーンを入れてしまうとやはり観客の視点が裕太を軸とするものに固定されてしまうということだろう。
新条アカネ視点で見てみると、現実社会に居場所を失った少女が自らが作り上げた仮初の居場所、箱庭を抜け出して「現実」へと帰還するまでを描く王道の成長物語として捉えられる。TVアニメ放送時、筆者は登場人物の心理描写や緩急のついた演出に魅了されたが、改めてこのラストを振り返ってみるとそれは手放しに喜んでいいものなのかということをもう一度考えてみたい。
物語の舞台は新条アカネの手により作られた仮想世界だが、現実のアカネが何に苦しんだが故に自らそこを居場所とするに至ったかというところまでは掘り下げられていない。仮想世界で‟神”となることで癒される傷があるのなら、そこで自らを癒すことは咎められるべきではないのではないか。例えば、ゲームの中でキャラクターを撃ち殺すこととアカネが怪獣で問川を殺したこととの間にはどれ程の距離があるのだろう。
「仮想」ではなく「現実」に帰れ、それこそが成長なのだという結末は珍しくなく、本作『SSSS.GRIDMAN』が作中でもしばしばオマージュする『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996)シリーズや『レディ・プレイヤー1』(2018)でも描かれた。しかしそれが結局は大人社会から押し付けられたものだと、やはり反発したくなる。
だが、『SSSS.GRIDMAN』劇中でアカネは自ら作り上げた意のままにコントロールできる筈のキャラクターたちに反旗を翻されたことで、現実社会と同じ挫折を味わったのかも知れない。その心を癒したのはグリッドフィクサービームのみならず、やはり六花をはじめとするキャラクターたちとの関わりだろう。自らの意に反して自律したキャラクターが、しかし最後は罪も含めて自分を受け容れてくれたからこそ、その経験を糧としてアカネは「現実」へと帰還することができたのだろう。現実社会で負ったアカネの傷を癒したものは、仮想世界におけるまさに‟傷”そのものであるかも知れない。
アカネとの別れ際、六花がアカネにずっと一緒に居たいと想いを告げつつ「この願いがずっと叶いませんように」と言って訣別したシーンはやはり胸に迫る。現実の他者は勿論仮想世界以上に自らの意にならないものだが、その関係に傷付き迷う時、六花の言葉がきっとアカネの背中を押すだろう。
『グリッドマン ユニバース』予想
さて、そうなると気になるのは『グリッドマン ユニバース』へのアカネの登場はあるのかどうかだ。今のところ発表はされていないが、『SSSS.GRIDMAN』でも1、2を争う人気キャラクターであるだけに何らかの形での登場はあるのではないかと予想する。
特撮版『電光超人グリッドマン』では仮想世界に存在した筈の怪獣が現実世界を侵食する描写も見られた。SSSSシリーズ第2弾である『SSSS.DYNAZENON』はどうやら現実世界を舞台としているようだし、もしかしたら『SSSS.GRIDMAN』世界の怪獣が『SSSS.DYNAZENON』の現実世界を侵食し、その原因を解決する為に『SSSS.DYNAZENON』世界(現実)のアカネが再び『SSSS.GRIDMAN』の仮想世界に姿を見せるというような展開も有り得るかも知れない。
本編上映後には新規カットとしてアカネの居ない教室で裕太が内海に電子辞書を借りるシーンが描かれた。窓際に座る六花を囲むのはお決まりのなみことはっすではなく、別の女子生徒二人。これは本編後にクラス替えが起こった後のシーンなのだろうか? 短いながらもこのシーンが『グリッドマン ユニバース』含め映画シリーズにおける最初に完成した新規カットということで、TVアニメ版の映像を再編集した本編よりも更にクオリティの高まった超絶作画を堪能できる。否が応でも期待の高まる『グリッドマン ユニバース』劇場公開までサプライズを楽しみに待とう。
余談だが、『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』入場者プレゼントのボイスドラマ「ひねくれ者でも」では本編で殆ど関わりの描かれなかった内海とはっすの会話がたっぷりと堪能できるのでファンなら必聴だ。劇中では常にマスクをしていたはっすがマスクを外すというファンサービスもあるが、ボイスドラマなのが惜しい……。
『SSSS.GRIDMAN 劇場総集編』は2023年1月20日(金)より劇場公開。
『グリッドマン ユニバース』は2023年3月24日(金)全国公開予定。
アニメ『SSSS.GRIDMAN』はBlu-ray 全4巻セットが発売中。
アニメ『SSSS.ダイナゼノン』最終話のネタバレ感想はこちらから。