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君はベトナムSFを観たか——偏見と闘うゲイのヒーロー『超人X.』がベトナム映画祭で上映

君はベトナムSFを知っているか

『超人X.』がベトナム映画祭で上映!

皆さんは、ベトナムのサイエンスフィクション作品をご覧になったことはあるだろうか。9月1日から横浜のシネマ ジャック&ベティで開催されている「ベトナム映画祭2018」にて、ベトナム生まれのスーパーヒーロー映画『超人X.』(2015)が上映される。『超人X.』は、明日、9月5日(水)に上映される予定となっており、同イベントは年内に大阪、東京、愛知でも開催される予定。アジアを代表するヒーローを生み出した話題作を目にする絶好の機会だ。

ベトナムのニューヒーロー

『超人X.』の見どころ

『超人X.』は、グエン・クアン・ズン監督が指揮を執り、2015年に公開されたアクションコメディSF映画。コメディとはいえ、カンフー、ムエタイ、パルクール、そしてワイヤーアクションを駆使した爽快なアクションシーンも見どころだ。
一方で、『超人X.』は、セクシャルマイノリティーへの偏見やステレオタイプなジェンダー論に対する強いメッセージが込められた作品でもある。主人公のスンは、貧しい母子家庭で育った地方出身の青年だ。ひょんな事からスーパーパワーを手に入れ、友人のマネジメントの下、“副業”としてヒーロー活動を行っている。スンのマネジメントを仕切る社長のフィーは、オフィスにスーパーマン、バットマン、アイアンマンの肖像画を飾り、「ヒーローらしくあれ」と、スンにマッチョなヒーローであることを要求する。

偏見と闘う超人

だが、スンはブティック店の開業を夢見て、男性アイドルに憧れる、心優しいゲイの若者だ。劇中で、繰り返しスンに押し付けられる「タフで洗練された男性」というヒーロー像は、現実社会で押し付けられるステレオタイプなジェンダー意識と重なる。スンは悩みながらも大切な存在を守る為に奮闘する中で、理解のある仲間を増やしていく。そして、ヒーローになるということには、出自や性別は関係ないということを証明していくのだ。

西洋的なヒーロー像を超えて

『超人X.』のアクションシーンや設定には、「マトリックス」シリーズや「仮面ライダー」シリーズからの影響も感じられる。一方で、やたらと英単語を使いたがる現代人への皮肉めいた演出も随所に登場する。それは、様々な国の文化を吸収してきたベトナムという国で、スーパーマンをはじめとする西洋的なヒーロー像への憧れを克服していくストーリーとも結びついている。『超人X.』は、ユーモアに溢れたコメディ作品でありながらも、現代を生きるベトナム人の若者たちへの強いメッセージが込められた作品なのだ。

ベトナム映画界が乗り越えた苦境

15年前から始まった民間映画の歴史

2015年になって、このような良質なベトナムSFが登場した背景には、ベトナムという国の歴史が関係している。1965年から1973年まで続いたベトナム戦争の後、ベトナムの映画産業には、国営映画しか存在していなかった。ベトナム政府が1986年のドイモイ政策によって市場経済を取り入れた結果、海外の商業映画がベトナムの映画興行を席巻する。華やかなハリウッド映画に対して、国営映画では対抗しきれず、2002年になってようやく、ベトナムでは民間の映画製作会社が認可されるようになったのだ。

盛り上がりを見せるベトナム映画界

この頃製作されていた国内映画は、年間でわずか数本程度。それでも、『超人X.』の製作を手がけたBHD社をはじめとする企業の参入や、ベトナムを離れていた映画製作陣のカムバック、若手クリエイターの登場によって、ベトナムの映画界は活性化する。認可制度によって民間主導で映画が製作されるようになってから15年以上が経過し、現在では法改正当時の10倍以上の数の国産映画が制作・公開されるに至ったのだ。

日本の全4都市で映画祭を開催

現在開催されている「ベトナム映画祭2018」は、そんなベトナム映画の勢いを象徴するイベントでもある。「ベトナム映画祭2018」は、日越外交関係樹立45周年記念事業として、横浜、大阪、東京、愛知の4都市で開催される。横浜では一昨日、タイムスリップSFの『仕立て屋 サイゴンを生きる』(2017)も上映された。この機会に、『超人X.』はもちろん、SF作品をはじめとするベトナム映画をチェックしておこう。

 

「ベトナム映画祭2018」の開催スケジュールと会場は以下の通り。

ベトナム映画祭2018(主催:ベトナム映画祭2018実行員会)
横浜 9月1日-9月9日 シネマ ジャック&ベティ
大阪 10月6日-10月19日 シネ・ヌーヴォ
東京 11月10日-11月23日 新宿K’s cinema
愛知 11月24日-12月7日 名古屋シネマスコーレ

ベトナム映画祭2018 公式サイト

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via: ベトナム映画祭2018 © ベトナム映画祭2018実行委員会

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