『室井慎次 生き続ける者』名言を振り返り
映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』が2024年に公開され、「踊る大捜査線」シリーズが再起動。『生き続ける者』は2週連続興行収入1位を記録し、早くも興収10億円を突破するなど、室井慎次のその後を起点に「踊る」の再スタートに注目が集まっている。
今回は、『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』に登場した名言に注目したい。室井慎次の発言に限らず、両作で飛び出した名言をネタバレありで解説しながら紹介していこう。以下の内容はネタバレを含むため、本編を劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
- 『室井慎次 生き続ける者』名言まとめ
- 『室井慎次 生き続ける者』名言まとめ
- 1「何人やった?」(室井慎次)
- 2「責任は俺が取る。」(室井慎次)
- 3「仲間との約束を果たさないまま仕事を辞めてしまいました。自分なりに、その約束を果たせないかと。」(室井慎次)
- 4「恋はした。」(室井慎次)
- 5「お前たちのことを考えたり心配したり悩んだりが楽しい。楽しい。」(室井慎次)
- 6「あなたが青島と交わした約束は、まだ終わっていませんから。」(新城賢太郎)
- 7「室井さんを中に入れてさし上げて。」(沖田仁美)
- 8「分かってくれとは言わんが、俺は間違った道には進ません。」(室井慎次)
- 9「家族でいる時間には限りがある。」(室井慎次)
- 10「風呂沸かしといてくれ。」(室井慎次)
- 11「お菓子、棚に戻そう!」(室井慎次)
- 12「考えてるだけで楽しい。なーんも寒くねぇよ。」(室井慎次)
- 13「え? 戻ります……。」(青島俊作)
『室井慎次 生き続ける者』名言まとめ
1「自分にとっては、永遠に管理官です。」(緒方薫)
『室井慎次 敗れざる者』には元湾岸署の刑事だった緒方薫が登場。警察を辞めた室井慎次のことを「管理官」と呼ぶが、室井からは「もう管理官じゃない」と返される。そこで緒方のこのセリフが飛び出すのだが、実はこのセリフは緒方を演じる甲本雅裕のアドリブだったという。観客と警察関係者が室井を見る視線と、室井の現状が示されたワンシーンだった。
2「君はまず、彼の母親に手を合わせるべきじゃなかったのか。」(室井慎次)
タカの母を殺した犯人を弁護する奈良は、タカから犯人に有利な証言を引き出そうと強引に迫っていた。室井は奈良に被害者遺族の気持ちを尊重するよう告げたのだが、室井自身もドラマシリーズ第1話で父を殺された柏木雪乃に強引な聞き取りを行ったことがある。被害者遺族に寄り添う青島俊作の姿を見て室井は考えを変えることになり、今では若い人に教える立場になったのだ。
3「きりたんぽ、まだ一緒に食ってねぇな。」(室井慎次)
遠山俊也演じる森下孝治と再会した室井が言った一言。『踊る大捜査線』のドラマシリーズ第4話で、立番をしていた森下が同郷だと知った室井は、いつか捜査一課できりたんぽ鍋を食べようと約束していた。その言葉を覚えていたことに森下は感動するのだが、立場に関係なく相手のことを覚えている生真面目さが室井らしさだ。
4「僕はあんた以外の大人を知ってる。僕はその人みたいな大人になる。」(タカ)
自分の母を殺した犯人にタカが放った言葉。後ろに立つ室井慎次のような大人になるという宣言であることは明らかだ。そして、『生き続ける者』ではタカは警察を志すようになる。
5「彼の行動は、キャリアの傲慢さを撃ち抜きました。」(新城賢太郎)
室井家で酒を酌み交わしながら新城賢太郎が青島について述べた言葉。「だけど室井さんは彼に甘すぎた」と続くのが味噌で、新城は青島のことを認めながらも、青島と親密になりすぎた室井に反発心も抱いているのだ。
6「新城、俺は負けたんだ。負け犬だ。」(室井慎次)
『敗れざる者』というタイトルに反し、室井は警察組織での敗北を認める。青島との約束を守れなかったことが、室井にとっての敗北だった。そして、この言葉は新城の心に火をつけ、新城は『生き続ける者』で室井の「負け」を消すための行動に出ることになる。
7「俺は親代わりだが、まだ一年生だ。」(室井慎次)
リクからなぜ自分を怒らないのかと聞かれた室井が答えた言葉。自分は何も知らないということを認め、子どもと対等な目線で話す、それが室井の現在地だった。ギリシャ哲学でプラトンが書いたソクラテスの「無知の知(=知らないということを知っている)」を想起させる態度で、哲人となった室井の姿を印象づけた。
『室井慎次 生き続ける者』名言まとめ
1「何人やった?」(室井慎次)
学校でいじめられたリクがやり返して帰ってきた時、室井がリクに聞いた質問。リクは「背の高いのを一人」と答え、室井はリクを褒めるのだが、それはほかでもない室井自身が常に強い者に立ち向かっていく人生を生きて来たからだろう。
2「責任は俺が取る。」(室井慎次)
室井は杏に猟銃を撃たせてやることに。猟銃免許がない子どもに撃たせるのは違法だが、かつてドラマで青島に「責任を取る。それが私の仕事だ」と、『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』(2012) で青島と鳥飼に言った「俺が責任を取る」と言ったように、ここでも室井は人のために責任を負うことを選んだ。続く「生きる力を持て」という言葉も印象的だ。
3「仲間との約束を果たさないまま仕事を辞めてしまいました。自分なりに、その約束を果たせないかと。」(室井慎次)
予告でも使用された印象的なセリフ。“現場”も青島にとって大事な者だったが、被害者や被害者遺族に寄り添うことも青島が取り組んできたことだった。偉くなって組織を変えるという青島との約束は果たせなかったが、犯罪孤児の里親をやることで、室井は犯罪に巻き込まれた家族のためになろうともがいている。
4「恋はした。」(室井慎次)
映画『容疑者 室井慎次』(2005) では、室井がかつて愛した野口江里子という人物の存在が明かされた。室井が警察になることを諦めてでも寄り添おうとした人物であり、室井の“原点”でもある。室井にとっての最終作『室井慎次 生き続ける者』で野口江里子の存在を想起させるセリフが登場したのはしびれた。
5「お前たちのことを考えたり心配したり悩んだりが楽しい。楽しい。」(室井慎次)
シリーズを通して苦しそうな表情を見せてきた室井慎次が、ようやく「楽しい」という言葉を発した貴重な瞬間。それも、犯罪孤児たちとの里親としての生活の中で生きがいを感じているという。いつか室井に幸せになってほしいと思っていたからこそ、この言葉を聞けたのは良かった。
6「あなたが青島と交わした約束は、まだ終わっていませんから。」(新城賢太郎)
前作での室井の「約束を果たせず負けた」という敗北宣言を拒否する新城賢太郎の力強い言葉。東京に行って沖田仁美に言質をとった上で、勝手に室井の負けを消してしまう強引さが新城らしさでもある。この言葉によって、その前の「警察を舐めないでください」という言葉にも「まだ終わっていない」という意味が加わる。
7「室井さんを中に入れてさし上げて。」(沖田仁美)
警察庁長官官房審議官になった沖田仁美が、警視庁の管仁狩英明管理官に放った“命令”。かつて室井は警視庁の管理官も警察庁長官官房審議官も歴任した。現場の判断を歪めようとする管理官に対し、より上から現場の判断を優先するよう指示を出すという“ムロイズム”の継承を見た場面だった。
8「分かってくれとは言わんが、俺は間違った道には進ません。」(室井慎次)
日向真奈美の信者になっていた容疑者の国見昇に対し、杏を間違った道に進ませないと宣言した室井の言葉。前作では被害者遺族であるタカが母を殺した犯人に対して、室井のような大人になると宣言した。『生き続ける者』では似たシチュエーションで室井の方が加害者家族である杏について「間違った道に進ませない」と宣言した。子ども達への約束であり、自分への宣言だから、室井は「分かってくれとは言わん」と前置きしたのだろう。
9「家族でいる時間には限りがある。」(室井慎次)
こちらも予告編で使われたセリフだ。リクが実の親の元へ戻ることになり、室井はタカ・杏・リクに、いずれは自分の足で歩いていくよう教える。室井は一貫して自分の足で立って人生を生きていけるよう教えてきた。不器用だが優しい、室井らしい教育方針だ。
10「風呂沸かしといてくれ。」(室井慎次)
室井慎次の最後の言葉。実は『敗れざる者』のラストで秘密基地に向かう時と同じセリフになっている。キャリア警察として駆け抜けてきた室井慎次が家族を持ち、最後の言葉が「風呂沸かしといてくれ」になるとは。室井の晩年を象徴する言葉になった。
11「お菓子、棚に戻そう!」(室井慎次)
後に明らかになった、室井が町の若者に言っていた言葉。室井は若者を責めるのではなく、何かをするなと指示するのでもなく、一緒に過ちを償おうと呼びかけるのだ。色々な後悔を背負っている室井だからこそ、若い人今ならまだ取り戻せる、道を戻れると語りかける言葉には説得力がある。
12「考えてるだけで楽しい。なーんも寒くねぇよ。」(室井慎次)
こちらも回想シーンで酔った室井が放った言葉。犯罪孤児の子ども達をもっとたくさん集めて、一緒に生活する。室井は、そんな夢を幸せそうに語っていた。前作ではリクが「室井さんはあったかいから好きだ」と発言しており、「寒くねぇ」と言う室井の心が満たされていることを、子ども達も感じ取っていたはずだ。
13「え? 戻ります……。」(青島俊作)
『室井慎次 生き続ける者』のポストクレジットシーンで登場した青島は、室井慎次の家を訪ねてくるが、電話を受けて踵を返す。この時の渋々の「戻ります」という言葉は、メタ的に青島俊作と織田裕二が「踊る大捜査線」に帰ってくるという宣言とも受け取れるが、果たして……。
以上が、一部ではあるが『室井慎次 敗れざる者』と『室井慎次 生き続ける者』に登場した印象的な名言とその解説だ。あなたの心を震わせたセリフは入っていただろうか。
映画『室井慎次 生き続ける者』は全国の劇場で大ヒット公開中。11月30日(土) からは、スペシャルポストカードが入場者プレゼントとして配布される。
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