ネタバレ解説『イカゲーム』シーズン2 ラストの意味を監督が語る ギフンの二つの壁、シーズン3のテーマは? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『イカゲーム』シーズン2 ラストの意味を監督が語る ギフンの二つの壁、シーズン3のテーマは?

No Ju-han/Netflix

『イカゲーム』シーズン2もヒット作に

Netflixドラマ『イカゲーム』より、シーズン1が配信された2021年以来となるシーズン2が2024年12月より配信されている。『イカゲーム2』は配信されるや否や6,800万再生を記録し、非英語ドラマ作品のジャンルで92ヶ国で1位を獲得した。

世界中のファンが『イカゲーム』シーズン2に注目する中、シーズン1から一貫して『イカゲーム』の監督・脚本・演出を手がけるファン・ドンヒョク監督が、シーズン2のラストについて語っている。『イカゲーム』シーズン2の最後に描かれたアレはどういう意味だったのだろうか。

なお、以下の内容は『イカゲーム』シーズン2の結末についてのネタバレを含むので、必ずNetflixで本編を最後まで視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『イカゲーム』シーズン2の結末に関するネタバレを含みます。

『イカゲーム』シーズン2ラストの意味を公式が解説

『イカゲーム2』ラストは何が起きた?

『イカゲーム』シーズン2のイッキ見が世界で進む中、米Netflix公式が運営するTUDUMで、ファン・ドンヒョク監督がシーズン2最終回のラストの意味について語っている。『イカゲーム』シーズン2ではイカゲームに舞い戻った主人公ソン・ギフンが、ゲームをやめさせて、主催者を倒すことを試みる。

『イカゲーム』シーズン2の特徴は、各ゲームごとにゲームを続行するか、賞金を山分けしてゲームを終了するかを選べる点だ。投票によって過半数を得た選択肢が選ばれ、ゲームの参加者全員がその選択に従わなければならない。

ギフンは参加者を説得してゲームを中止させようとするのだが、これがうまくいかない。ゲームに忍び込んでいたフロントマンことファン・イノの策略や、ゲームを続けたい人々の扇動もあり、“民主主義”によってゲームは続行されるのだ。

相対する二つの派閥による殺し合いが始まった時、ソン・ギフンは運営スタッフの銃を奪って蜂起することを決断。最終回ではプレイヤーvs運営の銃撃戦が始まるが、最後には暴動は鎮圧されてしまうのだった。

ソン・ギフンの二つの失敗

『イカゲーム』シーズン2のラストは、シーズン3へと続いていくものだったが、ファン・ドンヒョク監督はそこにどんな想いを込めたのだろうか。ファン・ドンヒョク監督は、ソン・ギフンの「二つの失敗」についてTUDUMに語っている。

ファン・ドンヒョク監督は「このゲームを終わらせようとするギフンの試みは二つの意味で失敗しました」としている。一つ目は「投票を通してイカゲームを終わらせるための説得」、二つ目は「主催者に対して物理的な力と強さを行使する試み」だという。

つまり、ソン・ギフンは民主主義においても、暴力革命においても目的を達成することができなかったということだ。ギフンは投票での勝利が危機に瀕した時、多少の犠牲は仕方がないと考えて銃を奪うという強硬策に出た。その段階的な試みが共に失敗に終わるというのが『イカゲーム2』のラストで描かれたことだった。

ギフンが失敗した理由

もちろん、本来の民主主義というのは十分な情報と議論の時間があることが前提で、その上で投票を行うものだ。投票以外にもデモやロビイングといった直接行動が行われ、政治に民意を反映させていくことになる。

だが、韓国とアメリカでは強い権限を持つ大統領を市民の投票で選ぶため、日本とは投票に対する感覚が少し異なるところもあるだろう。両国には戦いの末に民主主義を勝ち取ったという歴史もある。

民主主義が機能せず、暴力革命も否定される『イカゲーム』シーズン2のラストは意外なものではあった。一方でイカゲームでは、法による加護や議論する時間がほとんどないという制約の中で、運営側が狙う通りに物語が展開していく。

現実でもSNSでの偽情報の氾濫や選挙における買収がまかり通り、それを取り締まる司法の機能不全が続けば、民主主義が健全に機能する環境が整わないということもあるだろう。そうした限定された状況の中で、ソン・ギフンはシリーズ最大のピンチに立たされたというわけだ。

シーズン3はどうなる?

ギフンは「深い絶望」に

では、『イカゲーム』シーズン3ではどんな展開が描かれるのだろうか。ファン・ドンヒョク監督はソン・ギフンが「深い絶望の状態」にあるとした上で、こう問いかけている。

彼はまだ他の人達を説得してゲームから去ったり、ゲームを終わらせたりできると信じているでしょうか? それとも、降参して全く別の人間になってしまうのでしょうか? 「私に何が変えられるというのだ?」と考えているフロントマンのような人間に?

ファン・ドンヒョク監督は、ソン・ギフンが二つの失敗を経てもまだ諦めていないという可能性と、これらの失敗によって全く別の人間になっているという可能性を挙げている。また、今回のイカゲームで暗躍したフロントマンが諦めの境地にあることにも触れられている。

フロントマンことファン・イノは元々刑事だったが、妻の肝臓移植が必要になり、ある相手から金を借りたことが賄賂を受け取ったみなされて警察を解雇されていた。借金を背負ったイノは2015年にイカゲームに参加して優勝を果たした。

その後、イノはフロントマンとなり、2020年大会の後にオーナーのオ・イルナムが死亡したことで、イカゲームを仕切る立場になっている。ファン・ドンヒョク監督はフロントマンが「私に何が変えられるというのだ?」と考えているということを明かしたが、ソン・ギフンが同じような心境になってしまうとしたら、ソン・ギフンは次のフロントマンになってしまうだろう。

オ・ヨンイルの正体に気づいていた?

『イカゲーム』シーズン2ラストでのソン・ギフンの心情を理解する上でもう一つ大事な要素がある。それは、ギフンはオ・ヨンイルを名乗っていた人物がフロントマンだと気づいているのかどうかということだ。

オ・ヨンイルはソン・ギフンに身の上話もした上で、投票でもうまく立ち回ってゲームの終了を阻止してきた。最後にはギフンの仲間を背後から撃って革命も阻止している。オ・ヨンイルが背負う背番号001は前回オーナーであったことが後に判明したオ・イルナムが背負っていたのと同じ番号だ。

また、韓国語で「ヨン」は「0」、「イル」は「1」を意味し、苗字の「オー(O)」と合わせれば「O01=001」になるというヒントまで用意されていた。内部にゲームを理解した裏切り者がいる可能性について、ギフンは思い至っているのだろうか。

ソン・ギフンを演じたイ・ジョンジェは、この件についてTUDUMでこう語っている。

ギフンはまだ真実を知らないと思います。起きたことの全てが自分のせいだと非難しているのです。

ソン・ギフンはオ・ヨンイルがフロントマンであったことに気づいておらず、シーズン2のラストの状況では自分の責任を痛感しているという。敵に矛先を向けることもできず、多くの死者を出したことで自分を責めているのだとすれば、ギフンの精神状態はかなり厳しい状況にあると考えられる。

ファン・ドンヒョク監督は、シーズン2を「フロントマンがマスクを外して始まり、自分自身に戻って再びマスクをつけて終わる」と説明している。そして、シーズン3を「ギフンとフロントマンの対決の第2章」と呼ぶ。

そう考えると、シーズン1はギフンが勝利するまでの物語で、シーズン2はフロントマンが勝利するまでの物語、そして、シーズン3で二人の間の決着がつくという構成になっているのかもしれない。絶望に直面したソン・ギフンが選ぶ道は——。2025年の夏から秋にかけて配信されるという『イカゲーム』シーズン3の到着を楽しみに待とう。

ドラマ『イカゲーム』シーズン2は2024年12月26日(木) よりNetflixで独占配信中。

『イカゲーム』配信ページ

Source
TUDUM

『イカゲーム』シーズン2ラストの解説&考察はこちらから。

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監督は『イカゲーム3』で終わりではないと語った。詳細はこちらから。

『イカゲーム』英語版制作についての情報はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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