ネタバレ解説『イカゲーム2』ラストの意味、シーズン3は? 民主主義の課題からトランス差別まで描くシーズン2を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『イカゲーム2』ラストの意味、シーズン3は? 民主主義の課題からトランス差別まで描くシーズン2を考察

Netflix

『イカゲーム』シーズン2配信開始

2021年に配信され、世界的な人気ドラマとなった『イカゲーム』のシーズン2が2024年12月26日(木) よりNetflixで配信を開始した。主人公のソン・ギフンを演じたイ・ジョンジェは、その演技力によってドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』(2024) でジェダイマスターのソル役に抜擢されるなど、活躍を見せている。

シーズン1の配信開始から3年後、ついに『イカゲーム』シーズン2の配信が開始。全世界が注目を集める中で、どのような物語が描かれたのだろうか。今回は、『イカゲーム』シーズン2の内容に触れつつ、ラストの展開とシーズン3について解説&考察していこう。

なお、以下の内容は『イカゲーム』シーズン2の結末についてのネタバレを含むため、必ずNetflixで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ドラマ『イカゲーム』シーズン2ネタバレ解説

民主主義の難しさ

ドラマ『イカゲーム』シーズン2は、前作ラストでソン・ギフンがアメリカにいる娘に会いに行くことをやめた、その2年後から幕をあける。前回のゲームが開催されてから3年後である。ソン・ギフンはイカゲームで得た賞金をもとにゲームを主催する者を追っている。

行方不明の兄を探していたファン・ジュノ刑事は前作で兄ファン・イノの正体がイカゲームのフロントマンであることを突き止めたが、そのフロントマンから胸を撃たれていた。『イカゲーム』シーズン2では、このファン・ジュノ刑事が漁師のパク船長の船に拾われて生きていたことが明らかになっている。

ソン・ギフンは軍隊を組織し、ファン・ジュノと共にイカゲームが行われている島を襲撃することを企む。だが、ソン・ギフンの歯に仕込んでいたGPSは外されており、イカゲームが開催される場所に潜入してそこを叩くというソン・ギフンの計画は暗礁に乗り上げることになる。

ソン・ギフンの方は、優勝経験者としてイカゲームでなるべく死者が出ないようにリーダーシップをとるが、欲に支配された人々を前に苦戦する。また、今回はゲームごとにゲームを続行するか、ゲームを終了して賞金を山分けするかの投票が行われ、“民主主義”もソン・ギフンを苦しめることになる。

ゲームごとに◯(=継続)か×(=終了)を選ばせ、投票で分断が生まれる展開は、韓国が選挙で元首を選ぶ大統領制を敷いていることを反映していると考えられる。大統領制はアメリカでも取られている制度だが、特にSNSを通してどちらの側につくのかが明白になる現代社会における分断が分かりやすい形で示されていた。

韓国では2022年に大統領選が行われ、わずか0.73%差で国民の力の尹錫悦(ユン・ソンニョル)が勝利したばかりだ。わずかな差で集団の未来が変わるという状況を直近で経験しているのだ。そして、もちろん制作時期とはズレるが、その尹錫悦は2024年12月3日に非常戒厳令を宣布し、鎮圧後の14日には弾劾決議案が可決された。

投票による多数決では、“選ばなかった側”も強制的にそのゲームに巻き込まれてしまう。だからこそ、現実では投票以外の行動が大事になってくるのだが、『イカゲーム』シーズン2では投票だけで人々の命運が決まってしまう民主主義の脆さも描かれていた。

また、『イカゲーム』シーズン2では、危ない方に進む人々が抱く「自分たちだけはなんとかなるのでは」という心理も示されており、今回も現代資本主義のメカニズムをしっかり示していた。資本主義の闇を描くシリーズとしての『イカゲーム』は健在だったと言える。

三人の女性達

それに加えて、『イカゲーム』シーズン2では女性たちの共闘も描かれる。男たちの戦いが描かれる第1話&第2話から一転し、イカゲームの中に入ると、妊娠しているジュニ、朝鮮戦争を経験しているクムジャ、そして、トランス女性のヒョンジュの戦いに焦点が当てられる。

シーズン2のエピソード5ではヒョンジュがカミングアウトした後に女性として生きたいと言い出した時点で全てが変わったと明かす。ヒョンジュはお金を手に入れてタイで手術を受けるともりだといい、手術が受けられたらタイの小さい家で暮らしたいと明かす。ヒョンジュはただ自分のアイデンティティと適応した身体になり、平穏に暮らしたいと願っているだけであり、それはお金があれば実現できることだった。

韓国ドラマ『梨泰院クラス』(2019) では、トランス男性のマ・ヒョニのストーリーが描かれて話題となった。『イカゲーム』シーズン2ではシス男性のパク・ソンフンがトランス女性を演じるということで批判もあった。一方で、韓国ではまだまだトランスジェンダーの人々へのバックラッシュが大きく、トランスの人々がオープンに当事者を演じられる状況ではないという指摘もある。

いずれにせよ、『イカゲーム』シーズン2は、ジェンダーというテーマにおいても、資本主義と民主主義というテーマにおいても、現在のハリウッドにはできないテーマ設定を行なっているように思えた。

運営スタッフ側の物語

もう一つ、『イカゲーム』シーズン2の特徴は、運営スタッフの側が描かれるという点だ。第1話では、コン・ユ演じる“メンコの男”ことヤン・ボクナムが元々は◯△×のマスクを被る運営スタッフをやっていたことが明らかになった。ボクナムはやがて銃を与えられるなど出世していったものと思われる。

運営スタッフは死刑の執行人だが労働者だ。ゲームの招待者となったボクナムも運営者の犬に過ぎないとソン・ギフンは看破する。そして、ヤン・ボクナムの退場と共に『イカゲーム』シーズン2で登場するのが脱北者のノウルだ。幼い娘を北朝鮮に残したままというノウルは、シーズン1に登場したカン・セビョクを思わせる設定だ。

だが、ノウルはゲームへの招待状を手渡された後、運営スタッフのユニフォームに袖を通す。ノウルが抱える問題は、お金では解決できないのだ。『イカゲーム』シーズン2では、参加者全員で生き延びようとするソン・ギフンの戦いと共に、運営スタッフとしてのノウルの姿も描かれていく。

無機質な兵隊のように感じられた運営スタッフにも背景があることが明かされると同時に、シーズン1でも描かれた運営スタッフによる臓器密売の“副業”にももう一度焦点が当てられる。シーズン1ではゲームの参加者に手伝わせていたためにフロントマンにバレて、関わった運営スタッフは始末されていた。

シーズン2では、参加者に手伝わせることをやめて、運営スタッフだけで臓器密売を継続している。だが、この“不正”に一人抵抗するのがノウルなのだ。運営スタッフは臓器を取り出すために臓器を傷つけずに脱落者を撃ち、それによって脱落者は生殺しの状態で運ばれることになる。ノウルはそれを許さず、臓器に致命傷を負わせて脱落者を運ばせるのだ。

ノウルは北朝鮮の元兵士であり、かつて体制を逃れて韓国に来たはずが、今も新しい体制内の腐敗に手を貸すことを迫られている。ノウルにはそれを受けれることができなかったのだろう。

『イカゲーム』シーズン2ラストをネタバレ解説&考察

分断された「◯」と「×」

『イカゲーム』シーズン2では、ゲームを継続するかどうかの投票が行われ、イ・ビョンホン演じるフロントマンが正体を隠してゲームに加わり、参加者たちを撹乱していく。シーズン1では参加番号001番のオ・イルナムがイカゲームの主催者であったことが最終回で明かされた。

オ・イルナムは、フロントマンに「参加する方が楽しい」と告げており、今回フロントマンはその言葉の通りに自らゲームに参加することになっている。フロントマンことファン・イノはシーズン1のオ・イルナムと同じく背番号001番を背負っている。

ゲームの継続意思を示す「◯」と「×」で分断された参加者たちは第6話から最終回の第7話にかけて殺し合いに発展。直前に配布されたキンパには武器となるフォークが同封されており、この殺し合いも主催側が脱落者を増やすために仕掛けた罠だと考えられる。

再投票前に死者が出たことで、「×」陣営が数で1人上回ることとなり、無事に投票を迎えればこのイカゲームは幕を閉じるものと思われた。しかし、ソン・ギフンは夜間に「◯」陣営から攻撃される可能性を考慮した上で、戦うべき相手はプレイヤーではなく主催者だと仲間たちを説得するのだった。

まさかのラスト

ここでソン・ギフンは重要な決断を下す。夜に争いが起きれば銃を持った運営スタッフが鎮圧にやってくるので、その時に銃を奪って蜂起するという策を提示したのだが、争いで生まれる犠牲については目を瞑ると言うのだ。

「多少の犠牲を払ってでもこのゲームを終わらせる」と語るギフンが、ダークサイドに片足を突っ込む瞬間だ。この辺りの演技は、『スター・ウォーズ:アコライト』で見せたダークな表情が生かされている。

争いで死にゆく人々を見殺しにしながら、運営スタッフの銃を奪ったギフンたちは本部への突入を呼びかける。ゲームを終わらせるために戦う仲間を募り、蜂起を進めるのだが、フロントマンことファン・イノはこの計画に積極的に加担している。

ファン・イノは、銃を奪う際に運営スタッフを撃ってギフンを助けてもいる(ジャージ姿でマシンガンを発砲するイ・ビョンホンの姿が素晴らしい)。もちろんフロントマンとしての立場は忘れていないはずだが、ゲームの中でソン・ギフンに惚れ込み、どこまでやれるかを見たくなったのかもしれない。

軍隊出身のヒョンジェが銃の扱いを教える場面では、ヒョンジェが特殊戦司令部にいたことが明かされる。特殊戦司令部というのは韓国に実在する陸軍組織で、朝鮮戦争の教訓から設立されたゲリラ戦に対応できる特殊部隊だ。

激しい銃撃戦が繰り広げられる中、マガジン(弾倉)を取りに行ったカン・デホが帰ってこなかったことが反乱部隊の致命傷に。だが同時に、デホがビビって戻れなかったことで、様子を見に行ったヒョンジェが生き延びるという結果も生み出している。

ソン・ギフンは旧友のチョンベと管理者区域まで辿り着き、ファン・イノ達も追いつくが、ファン・イノはここで仲間を文字通り背中から撃ち、無線でギフンに作戦は失敗したと伝えたのだった。弾もなくなり、反乱部隊は降参を申し出るが、メンバー達は運営スタッフによって撃ち殺されてしまう。

そして、ファン・イノはフロントマンの姿で現れると、「お前のヒーローごっこの結果」としてチョンベを撃ち殺してしまう。途中で死んだことにして運営側に戻るというのは前作のオーナーと同じ振る舞いだが、いつでも立場を切り替えられる遊びというのは、実に子どもっぽい遊び方でもある。

そして、チョンベが背負っていた「390番」が「脱落」となったことが告げられる。「だるまさんがころんだ」のヨンヒ人形が男の子の人形と向かい合い、物語が次のゲームへと進んでいくことが示唆されて『イカゲーム』シーズン2は幕を閉じる。最後には、シーズン3が最終シーズンとなり、2025年に配信されることが予告されている。

『イカゲーム』シーズン2ネタバレ考察&感想

クムジャが助けた命

シーズン1よりも2話少なかった『イカゲーム』シーズン2は、シーズン3へと続く形で幕を閉じた。おそらくシーズン2とシーズン3は前後編で製作されており、シーズン2は中盤の山場で幕を閉じたということだろう。

『イカゲーム』シーズン2では多くのキャラが登場したが、同時に命を落としてもいる。マガジンを取りにデホの元へ行ったヒョンジュは、なおも戦おうとしたが老婆のクムジャに止められて生き延びた。その息子のヨンシクもクムジャに止められて反乱には加わらなかった。戦争を生き延びたクムジャは、戦いによって命を落としては何にもならないということを理解していたのだ。

フロントマンは反乱を鎮圧してソン・ギフンの心を折るつもりであり、おそらくギフンをゲームに戻すのだろう。イカゲームは興行であり、VIPの客に見せるところまでやる必要がある。ギフンのおかげで序盤のゲームでは脱落者が最小限にとどまってしまったため、反乱で死者が出たことは、ゲームにとってはむしろ都合が良かったのかもしれない。

シーズン3はどうなる?

大会の流れで言うと、フロントマンは元々2015年大会の優勝者であり、フロントマンになった後、オーナーのオ・イルナムの死後に新たなオーナーになった。フロントマン自身もオ・イルナムと同じようにゲームに参加したため、今回のゲームは黒いコスチュームを着た運営スタッフが実質的にマネージャーを担当していたようだ。

ということは、たとえフロントマンが死んだとしても、黒コスの運営スタッフが新たなオーナーになり、ゲームは運営されていくのだろう。その輪廻を止めうるのがソン・ギフンであり、運営スタッフの中で孤立しているノウルだ。ノウルの目的や、どんな形で物語に絡んでくるのかは不明のままだったが、シーズン3のキーキャラクターになることは確かだろう。

そして、忘れてはいけないのがフロントマンとなった兄ファン・イノを追う刑事のジュノだ。シーズン2ではソン・ギフンの歯に忍ばせたGPSが見破られ、イカゲームが行われている島に辿り着くことができなかった。

ギフンが組織した軍隊の内部にスパイがいる可能性に触れられていたが、シーズン2の最終回ではパク船長が裏切り者であることが分かった。パク船長はシーズン1で兄イノに撃たれたジュノを助けた人物とされていた。船長は島を探すジュノのために船を出してやっていたが、島が見つからないまま3年が経過している。

おそらくイノは弟を見捨てることができず、パク船長にジュノを助けさせたのだろう。その後、島を探すジュノに対して、パク船長はわざとゲームが行われている島に辿りつかないように船を動かしていたものと考えられる。

パク船長が裏切り者だということが分かればジュノもソン・フミンの元に辿り着けるかもしれないが、問題はジュノがフロントマンの正体についてフミンに対しても隠し続けているということだ。最後にフミンがフロントマンを殺そうとすれば、ジュノは兄の方を取るかもしれない。この微妙な対立関係がシーズン3のポイントになるだろう。

英語版シリーズの計画も

『イカゲーム』シーズン2は、韓国から新たな世界的スターとなったイ・ジョンジェと、既に大スターであるイ・ビョンホンの演技合戦が見られるだけでも贅沢な作品だった。ファン・ドンヒョク監督は公式のコメントで「(ギフンとフロントマンの)二つの世界の熾烈な衝突は、来年お届けする予定の最終シーズン、シーズン3へと続いていきます」と語っている。『イカゲーム』シーズン1からシーズン3までは、ギフンとフロントマンの戦いを描く三部作だったと考えてもいいだろう。

ストーリーの評価はシーズン3に持ち越しとさせてもらいたいが、『イカゲーム』は既に英語版のドラマ製作についても報じられている。英語版は本家と世界観を共有する見込みということで、本家『イカゲーム』がシーズン3で完結しても、まだまだ物語は続いていきそうだ。次はどんなゲームが待っているのか、そしてギフンはゲームを終わらせることができるのか、シーズン3の配信を楽しみに待とう。

ドラマ『イカゲーム』シーズン2は2024年12月26日(木) よりNetflixで独占配信中。

『イカゲーム』配信ページ

監督が語ったシーズン2ラストの意味についての解説はこちらから。

『イカゲーム』シーズン2で明かされたフロントマンの過去についての解説&考察はこちらから。

イ・ビョンホンが語ったフロントマンのギフンへの想いはこちらから。

新キャラクターのノウルについての解説&考察はこちらから。

『イカゲーム』英語版制作についての情報はこちらの記事で。

『イカゲーム』シーズン3についての情報はこちらから。

監督は『イカゲーム3』で終わりではないと語った。詳細はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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