ネタバレ考察『イカゲーム2』フロントマンはなぜ…? ギフンにこだわる理由、演じた俳優が語った背景とは | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『イカゲーム2』フロントマンはなぜ…? ギフンにこだわる理由、演じた俳優が語った背景とは

Netflix

『イカゲーム』シーズン2配信中

2021年に配信され、Netflixを代表する人気作となったドラマ『イカゲーム』は、2024年12月にシーズン2の配信を開始。同時に完結編となるシーズン3が2025年に配信されることも発表され、高い注目を集めている。

『イカゲーム』では、借金を抱えた人々が一ヶ所に集められ、大金をかけたデスゲームに挑む。主人公のソン・ギフンは前回の大会を生き延びたが、シーズン2で再びイカゲームに舞い戻る。ゲームを指揮するフロントマンと対決するために。

一方のフロントマンも、シーズン2ではソン・ギフンに対して執着を見せるようになる。今回は、主人公ギフンのライバルであるフロントマンの心理について、演じた俳優のコメントを見ながら、ネタバレありで考察してみよう。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『イカゲーム』シーズン2の内容および結末に関するネタバレを含みます。

『イカゲーム』シーズン2のフロントマン

ソン・ギフンとフロントマンの再会

『イカゲーム』シーズン1では、ゲームのマネジメントを担当するフロントマンの正体が元警察でファン・ジュノの兄であるファン・イノであることが明らかになった。イノは2015年大会の優勝者で、その後行方不明となりゲームに運営側として戻っていたのだった。

シーズン1の最後には、ゲームのオーナーだったオ・イルナムが死亡。イカゲームは幕を閉じたかに思われたが、ソン・ギフンはゲームの招待者であるメンコ男の姿を見つけてゲームが続いていることを知った。シーズン2では、ギフンはゲームを終わらせるためにゲームに舞い戻ることになる。

『イカゲーム』シーズン2では、第2話でソン・ギフンはフロントマンと接触。二人が対話するのはシーズン1最終回第9話以来だ。この時もリムジンの中で話していたが、ゲームが終わった直後のギフンは目隠しをされた状態だった。

シーズン2第2話では金の豚のスピーカーを通して話をするが、フロントマンは意外にもソン・ギフンに対して「幸せになってほしい」と語りかける。飛行機に乗って娘の待つアメリカへ向かうことが最善の選択だったのに、と悔やむのだ。

自分が元プレイヤーだったという過去もあってか、フロントマンはソン・ギフンに同情的でもある。あるいは、同じ優勝者経験者という思いもあるのだろうか。そして、フロントマンが「言いたいことを言え」とギフンに望みを聞くと、ギフンはゲームをやめることを要求している。

ぶつかるギフンとフロントマンの理論

このシーンはフロントマンの考えが分かる重要な場面だ。フロントマンは、ゲームの参加者達は自分の意思で参加していると主張し、どうせ参加者は敗者だと言い張る。社会はゴミで溢れており、世界が変わらない限りゲームは終わらない、とも。

これに対してギフンは、世の中はそういうものだと受け入れろという考えを拒否し、ゲームに参加させろと要求。フロントマンはギフンを『マトリックス』でレッドピルを飲むヒーロー気取りと罵り、ギフンは世の中はあんたらが思う通りにならないと宣言し、フロントマンが挑発に乗る形でギフンのゲームへの参加が認められることになる。

この時、ギフンはフロントマンにオ・イルナムのように負けることを怖がっているのだろうとも指摘した。オ・イルナムは最期に、クリスマスに道端で凍死しかけている人間を通りすがりの人が救うかどうかという賭けをしてギフンに敗れた。人間は資本主義の理論から外れて利他的に振る舞うことができるということが証明された瞬間だった。

オ・イルナムもまたかつては貧しい暮らしをしていたが資本主義社会で成り上がった人物だった。フロントマンとオ・イルナムは、「資本主義社会はこういうもの」と現状を受け入れる立場だったが、ソン・ギフンは人の心によってそれは変えられると挑戦状を叩きつけたのだ。

イ・ビョンホンが語ったフロントマンの素顔

フロントマンがゲームに参加した理由

ソン・ギフンが新たなイカゲームに参加すると、フロントマンはオ・イルナムを倣って自身もゲームに参加する。オ・ヨンイルという偽名を使い、ゲームを中止させようとするギフンに様々な妨害を行うのだ。

一方で、フロントマン=ヨンイルは積極的にギフンを手伝ってもいる。最後の反乱では運営スタッフを殺しているし、すぐにギフンを潰すのではなく、ギリギリのところでギフンに挫折を味わわせるようにゲームを操作している感じすらある。

『イカゲーム』シーズン2では、フロントマンはどのような意図で動いていたのか、米Netflixが運営するメディアのTUDUMで、フロントマンを演じたイ・ビョンホンがその背景について語っている。

まず、イ・ビョンホンはフロントマンを「世界にも人類にも全く希望がないと信じている」人物だと前置きした上で、フロントマンがシーズン2でゲームに参加した理由をこう語っている。

フロントマンはギフンを啓蒙するためにゲームに帰ってくるんです。つまり、ギフンに教えを与え、世界や人間について、自分と同じように考えるようにしたいと思っているのです。

確かにフロントマンはギフンを倒すよりも、“分からせる”ことに挑んでいるように見える。冷静な参謀役を装って事実を指摘することで、ギフンが葛藤を抱くように仕向けているのだ。

ギフンを追い込むフロントマン

シーズン2第3話では、ゲームを続行するか中止するかの投票で、ヨンイルは最後の「◯」の票を投じた。第4話ではギフンはそれを責めるが、ヨンイルは自分以外にも「◯」を選んだ人々が182人おり、最後が自分だっただけだと正論を突き返す。

さらにヨンイルは、あそこでゲームを中止にしたら、いずれ参加者と外で再会した時に「助けてくれてありがとう。今は幸せです」と言うだろうか、と問いかける。ゲームの参加者達には外の世界に戻れても希望はないと指摘しているのだ。

この言葉が説得力を持つのは、他でもないソン・ギフン自身がシーズン1で一度ゲームが中止になって外に出た後にゲームに戻ってきたからだ。シーズン1第2話ではゲームが中断になり外に出たギフンは母の糖尿病が悪化したことを知り、手術費用を稼ぐためにゲームに戻っていた。

シーズン2最終回では、投票の前に反乱を起こすという結論に至ったソン・ギフンに対し、ヨンイルは「大義のために小さな犠牲には目をつぶろうと?」と問いかける。少数が犠牲になっても多数が幸福になればよいという考え方は、資本主義の根幹となった功利主義の考え方だ。

ギフンは暴力革命に臨んではいるが、その精神は他者の犠牲の上に成り立つ考えの上に成り立っていることをヨンイルは認めさせたのである。この時点でフロントマンの今回の目的は大方達成されたものと考えられる。故にフロントマンは反乱を鎮圧すると共にここでゲームを降りて再びマスクを被ったのだろう。

フロントマンは最後に共に戦ってきたチョンベを撃ち殺す。この行動について、イ・ビョンホンは「フロントマンの最大の目的は、ギフンに自分が間違っていたと思い知らせることですから、それを証明するために可能な限り極端な手段をとりたかったのでしょう」と語っている。

それでも、フロントマンはギフンを殺さなかった。フロントマンの目的はギフンを屈服させることであり、世界と人類は変えられるという考えが間違っていたと認めさせることだからだ。

フロントマンは自身が優勝した2015年大会で人類に対する希望を失い、フロントマンになった。フロントマンは同じく優勝者であるソン・ギフンに、自分のようになり、次のフロントマンになってほしいという思いがあるのかもしれない。

フロントマンの変化

一方、イ・ビョンホンはフロントマンにも変化が訪れていることを示唆している。

ある時点では、彼が純粋にゲームを楽しんでいる瞬間があるのが分かると思います。興奮し、緊張しているんです。彼はギフンの世界の見方を変えたいと思いゲームに戻りましたが、いつの間にか無意識のうちに、人類への希望を捨てないギフンの姿を見て、かつてのイノ自身を思い出しているのです。

ファン・イノは元々警察官であり、正義感の強い人物だったはずだ。妻が病気になると同時に妊娠していることが分かり、治療費を工面するために借りてはいけない相手から金を借りて警察をクビになったというのがフロントマンが最初にイカゲームに参加した理由だ。

その家族思いのイノは、シーズン2第4話でも顔を覗かせている。ヨンイルは喧嘩するサノスを叱責するが、サノスは「家で自分の子どもでもしつけてろ」と言い放つ。ヨンイルはこの言葉に激昂し、サノスを打ちのめすのだ。

元警察としての戦闘力の高さと共に、家族を守れなかった過去に対する後悔が顔を覗かせた瞬間だ。イノは2015年以降、死んだ妻の墓も訪ねていなかったが、フロントマンが本当に世界に絶望していたとすれば、死んだ家族を持ち出されても感情を爆発させなかっただろう。フロントマンの中にはまだファン・イノが生きているのである。

イ・ビョンホンは、「フロントマンのほんの一部には、ギフンを応援している部分もある」と語り、チョンベを撃ったときには「複雑な気持ち」を抱いていただろうと予想している。チョンベも離婚しているとはいえ、元妻と子どもがいることを明かしていた。

フロントマンはギフンを変えるためにフィールドに降りてきたが、フロントマンには変化の兆しも確かにあった。シーズン3で正しかったことが証明されるのは、ギフンか、フロントマンか……。完結編の配信を楽しみに待とう。

ドラマ『イカゲーム』シーズン2は2024年12月26日(木) よりNetflixで独占配信中。

『イカゲーム』配信ページ

Source
TUDUM

『イカゲーム』シーズン2ラストの解説&考察はこちらから。

シーズン2ラストの意味について監督と主演俳優が語った内容はこちらの記事で。

フロントマンの過去についての解説&考察はこちらから。

めんこ男ことスカウトマンの過去、パンの意味の解説&考察はこちらの記事で。

新キャラクターのノウルについての解説&考察はこちらから。

 

『イカゲーム』シーズン3についての情報はこちらから。

監督は『イカゲーム3』で終わりではないと語った。詳細はこちらから。

『イカゲーム』英語版制作についての情報はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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