科学を最優先せよ——ドラマ『スノーピアサー』シーズン2がコロナ禍で放つメッセージ【レビュー】 | VG+ (バゴプラ)

科学を最優先せよ——ドラマ『スノーピアサー』シーズン2がコロナ禍で放つメッセージ【レビュー】

©️TNT

ドラマ『スノーピアサー』シーズン2公開

経済格差を扱った社会派作品として知られるTNTのSFドラマ『スノーピアサー』(2020-)。『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞作品賞を受賞したポン・ジュノ監督が初めての英語作品に挑戦した映画『スノーピアサー』(2013) のドラマ版で、フランスで刊行されたコミック (バンド・デシネ) を原作としている。

ドラマ『スノーピアサー』は2021年1月よりシーズン2の放送とNetflixでの配信を開始し、既にシーズン3の製作が決定した人気作品。温暖化を無理矢理阻止するために散布した化学物質によって地球が氷河期を迎え、生き残った人類は永久機関列車“スノーピアサー”に乗り込んでいる。前方車両には富裕層が、最後尾には貧困層が住み、厳格な階級社会が形成される中、下層の乗客たちは革命を目指す。更にシーズン2では、コロナ禍のアメリカの状況を思わせる展開が続く。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『スノーピアサー』シーズン2第3話までの内容に関する若干のネタバレを含みます。

『スノーピアサー』シーズン2のメッセージ

『スノーピアサー』シーズン2では、帰ってきたウィルフォード氏が、革命を成就させたスノーピアサーの車両に、もう一つの列車“ビッグ・アリス”でドッキングし、乗っ取りを画策する。シーズン2第1話では、スノーピアサーのエネルギー系統を掌握したウィルフォードに対し、メラニーはスノーピアサーとビッグアリスを分離不可能な状態にし、二つの列車を運命共同体にすることで危機を脱する。

ショーン・ビーン演じるウィルフォードのモデルは、明らかにアメリカのドナルド・トランプ前大統領。崇拝者を集めて分離・分断を企てるウィルフォードに対し、ジェニファー・コネリー演じるメラニーと、ダヴィード・ディグス演じるアンドレは第2話で敢えて共闘を持ちかける。外の世界に氷河期終結の予兆が見られ始めたのだ。

だが、ウィルフォードは列車内の権力を掌握することに固執する。これは、「アメリカ・ファースト」を掲げて他国への扉を閉ざしたトランプ前大統領の姿と重なる。人類の希望よりもスノーピアサー内の政治に混乱をもたらすことを優先するウィルフォードだが、メラニーとアンドレはより大きな視点で、人類が列車を降りて再び外で生きるという目標のために、ビッグ・アリスとの共闘を目指すのだった。加えて、メラニーは自身が命を賭して観測基地に向かうという自己犠牲を払う。

“信仰”の影

このスノーピアサーの決断は、コロナ禍で人類が危機にさらされる中で、民主党と共和党が結束して“一つのアメリカ”としてこの危機に対処するという姿勢を想起させる。そんな中で、『スノーピアサー』シーズン2の核にあたる問題になりそうなのが、人々のウィルフォードへの“信仰”である。

シーズン2の序盤、ウィルフォードのエネルギーの根源は、性欲や食欲を超えた異常な“支配欲”であると指摘する場面が登場する。ウィルフォードが支配するビッグ・アリスは、実は資源に乏しく、スノーピアサーよりも遥かに貧しい。それでも、乗客の間にはウィルフォードの支配下にあればより良い世界が訪れるという根拠のない信仰が存在している。ウィルフォードがかつて与えてきた富や恐怖、分断の結果は、スノーピアサーの中に想像よりも深い影を落としていた。

最優先は“科学”

『スノーピアサー』シーズン2の前半戦で最も印象的だったセリフは、第3話「大いなる旅路」でジェニファー・コネリー演じるメラニーと、ダヴィード・ディグス演じるアンドレが交わす以下の会話である。

メラニー「優先順位は分かってる?」
アンドレ「君の前で声に出して言えと? 科学だ」
メラニー「最優先事項だよ」
アンドレ「そのために俺は、あの権力好きの創造主を止める。崇拝者もひっくるめて」

科学が最優先——コロナ禍で陰謀論が渦巻くこの時代に、主人公チームが科学を優先しなければならないとはっきり発言することには、大きな意義がある。それも、エンジニア=技術者であるメラニーが、革命家でありリーダーであるアンドレに言わせているという点がポイントだ。人々の信仰心に惑わされず、科学を優先した判断を下すことを、前のリーダーであるメラニーは、次のリーダーであるアンドレに託すのだ。

科学が分断を食い止める場面は、シーズン2第2話で既に示されている。地球の気温が下がりつつあるという事実を聞かされた時、ウィルフォードはこの説を否定しようとするが、サキナ・ジャフリーとダミアン・ヤングが演じるビッグ・アリス側の科学者・ヘッドウッド夫妻に制され、この説を認めざるを得なくなる。

大統領選を巡る証拠のない陰謀論に、新型コロナウイルスの影響力を認めない言論が拡散していく現代社会で、『スノーピアサー』シーズン2は重要なメッセージを届けようとしている。混沌の時代にあって、SFにできることは少なくない。

ドラマ『スノーピアサー』シーズン2は2021年1月26日(火)より、Netflixで毎週最新話を更新している。2月16日(火) には第4話が配信開始。

ドラマ『スノーピアサー』(Netflix)

なお、『スノーピアサー』のショーランナーであるグレーム・マンソンは、SFは進むべき未来を描くものではなく、自分たちの世界の上に築かれるものと話している。詳細はこちらの記事で。

ドラマ『スノーピアサー』のみどころはこちらの記事から。

ドラマ『スノーピアサー』はシーズン3の製作も決定している

ポン・ジュノ監督が格差社会を描き出した映画版『スノーピアサー』の解説はこちらの記事から。

VG+編集部

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