第4話ネタバレ解説 ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』新たな星、モデルは日米関係? 考察&感想 | VG+ (バゴプラ)

第4話ネタバレ解説 ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』新たな星、モデルは日米関係? 考察&感想

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『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』第4話はどうなった?

ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』は2024年6月から配信された『スター・ウォーズ:アコライト』に続くシリーズ最新作。ドラマ『マンダロリアン』(2019-) と同じ新共和国時代を舞台に、ジュード・ロウ演じるフォースを操る人物と4人の子ども達の冒険が描かれる。

『スケルトン・クルー』は全8話で構成されている。今回は、その折り返し地点に当たる第4話についてネタバレありで解説&考察、そして感想を記していこう。なお、以下の内容はネタバレを含むので必ず本編をディズニープラスで鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『スター・ウォーズ/スケルトン・クルー』第4話の内容に関するネタバレを含みます。

『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』第4話ネタバレ解説

アト・アクランの光景

ドラマ『スケルトン・クルー』第4話「アト・アティンは記憶にねぇ」は、アカデミー賞作品賞と監督賞を含む7部門を制覇した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督として知られるダニエルズがエピソード監督を務める。ダニエルズはダニエル・クワンとダニエル・シャイナートからなるユニット。『エブエブ』では「スター・ウォーズ」のオマージュも見られたが、『スケルトン・クルー』ではどんな演出を見せてくれたのだろうか。

前話でジョッド・ナ・ナウッドの旧友キムが弾き出したアト・アティンの座標に向かった一同だったが、到着したのはアト・アティンとそっくりな荒廃した惑星だった。自分たちが知っている日常の風景が荒廃したバージョンに変わっているというのもホラーの一つの形だ。

ちなみに上陸時にジョッドは、「灰の味がする」として自分の故郷の惑星に似ていると発言している。“灰の惑星”といえば『マンダロリアン』(2019-) でグリーフ・カルガが治めている惑星ネヴァロだが、両者に関係はあるのだろうか。

4人の子ども達は探索に出かけ、ジョッドとSM-33は船に残ることになり、第4話の体制が決定。子ども達は第1話に登場したファーンの家と同じ作りの家を見つける。ウィムは自分達が100年間眠っていた説を唱えるが、実際にはこの惑星は人工的にアト・アティンと同じ作りに設計されたのだろう。個人の家まで同じつくりというのは、何らかの“社会実験”以外に考えにくい。

前回キムは、「旧共和国の宝石」と呼ばれた惑星が一つを除いて破壊されたと話していた。第4話で登場した惑星は、アト・アティン以外の破壊された惑星ということなのだろう。キムはアト・アティンの特徴を聞いて惑星を探したため、アト・アティンとそっくりなこの惑星の座標が出たということである。

船の方ではジョッドがウィムのクレジットを盗んでおり、それを見つけたSM-33との会話の中で、この惑星がアト・アクランという名であることが分かる。アト・アティンとそっくりな名前であり、やはり人為的な何かが背景にあることが示唆されている。

SM-33は「アト・アクランにいると記憶が乱れる」「俺はよく知ってる」と発言し、かつてアト・アクランに来たことを示唆してもいる。一方で、ジョッドがアト・アティンについて聞いても「アト・アティンは記憶にねぇ」と答えるばかり。ミステリーは深まっていく一方だ。

トロイクとハッタン

『スケルトン・クルー』第4話では、4人が“首なし王”の像を見つけたところでアト・アクランの住民が登場。アト・アクランではトロイクという名の民族が、ハッタンという名の別の民族と争いを繰り広げていた。トロイクの少女ヘイナを演じるのはハラ・フィンリーで、直近では『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(2024) でエコー・ムーン役を演じている。

ヘイナが外に出たのはハッタンがトロイクからイオピーを盗んだことを確認するためだった。イオピーというのは「スター・ウォーズ」シリーズにおいてタトゥイーンに生息していたラクダのような生き物だ。幼い頃のアナキンやクワイ=ガン・ジンが使っていた他、直近ではドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(2022) でオビ=ワンが大事に飼っていた。

戦場に飛び込んでしまった4人は、ヘイナにトロイクの拠点に匿ってもらうことに。トロイクが拠点にしていたのは、アト・アティンでは学校として使われていた建物だった。環境が変われば同じ場所でもガラリと姿を変えるというものだ。ここでは子どもも戦士として扱われるということで、ファーン達は“異文化”を経験することになる。

アト・アティンは“真綿で首を絞める”ような綺麗なディストピアだったが、アト・アクランでは子ども達が戦争に参加させられている。アメリカではフィクションでも子ども達が戦うストーリーが受け入れられやすい土壌があるが、『スケルトン・クルー』第4話ではそうした“住んでいる世界の違い”が描かれていくことになる。

日米の姿に重なる二人

トロイクの首領ストリックス将軍によると、“落ちた聖域”には座標が彫られているというが、4人は戦士として鍛えられ、勇気を示すことができればその場所に案内してもらえることに。なお、ストリックス将軍を演じるのは映画監督としても活躍したマチュー・カソヴィッツだ。

一方のジョッドはここに来た記憶があるSM-33に案内してもらおうと外に出ると、ハッタンの人々に捕まってしまう。何とか財宝のありかを聞き出そうとするジョッドと、ヨボヨボで会話も噛み合わないSM-33はなんだか介護中の親子のようでもある。

『スケルトン・クルー』第4話はニールの回でもある。鼻を震わせて怖がったり、ヘイナに鼻を引っ張って連れていかれたりと、様々なニールの姿を見ることができる。4人の中でも人一倍怖がりなニールだが、配給の食事を自分より小さな子どもにあげる優しさを見せる。

ヘイナは次期リーダーとして一族を勝たせることを考えているが、ニールは争いはよくないと思っている。ヘイナがアナログなレーザーキャノンのような兵器を見せると、こんなものを使うのはフェアじゃない、戦い続けることになる、と意見するのだ。

ちなみにこの場面では字幕は「旧共和国時代」の兵器となっているが、英語では「Old Days」と頭文字が大文字で表記されている。アト・アティンでは共和国に新旧という概念がなかったが、アト・アクランでは新共和国時代という概念があるのだろうか。

ニールはさらに、自分が来た世界は管理官から仕事をもらえる平和な社会だと意見するが、ヘイナからは「弱そうな一族」と言われてしまう。アト・アティンは争う必要がない社会で、アト・アクランは戦わなければ生き延びらない社会だ。管理社会と闘争状態、幸せなのはどちらなのだろうか。

平和を重んじ、戦わずに謝ると主張するニールの立場は、日本という国の立場にも重なる。日本は敗戦後、平和憲法のもとに平和を至上の価値として置いてきた。

一方、アメリカ合衆国は独立戦争で建国された後、すべての世代が戦争を経験している。米国は平和よりも自由を重んじる社会だ。ニールはこうした考え方の違いを学び互いに主張をぶつける留学のような体験をしているようでもある。

異文化交流の結果

ストリックス将軍は4人を先陣に置いてハッタンと向かい合うことに。子ども達の勇気を試すのだ。ヘイナはニールについていく優しさを見せるが、これはニールからの影響だろう。一方でニールは「これは間違いだ」「本当に勇敢なのは平和を求めることだ」と唱え続ける。「ピーターパン」のように子ども達が大人と戦う展開もあり得る中で、この危機を救ったのはジョッドだった。

ジョッドはウィムから盗んだクレジットでハッタンからイオピーを買い戻しており、そのイオピーをトロイクに返すことで子ども達の解放を取り付けたのだった。ジョッドは金は盗むが命は助けるダメなパパ感が出ているが、一方で4人の子ども達を必要だと言ったことにも何か裏がありそうだ。

ちなみにこの時ジョッドは、どこで身につけたのか、イオピーを呼ぶための特殊な発声を披露している。これまでイオピーがタトゥイーンで登場していたことを考えれば、ジョッドの出身惑星がタトゥイーンという可能性もあるだろうか。タトゥイーンは灰っぽくはないが、砂っぽくはある……。

4人は勇気を認められて“落ちた聖域”の場所を教えてもらうことに。アト・アティンでは監理官の塔であり立ち入り禁止とされていたそうで、アト・アティンでも座標のような重要な情報が隠されている可能性が高い。

ここでニールはヘイナを一緒に来ないかと誘うが、ヘイナはこれを断った上で、将来自分がトロイクの首領になれば平和にも目を向けると約束する。ニールは弱いから優しいのだとも。異文化と、違う考え方と出会ったことで成長する、これぞ異文化交流の醍醐味だ。

SM-33の記憶

“落ちた聖域”の塔にはアト・エイトゥアト・アクランアト・アリッシアアト・アラヴィンアト・アコダ、そしてアト・アティンの座標が記されていた。「アト・ア〜」という名前が一つの型になっているようで、“旧共和国の宝石”は「世界三大〜」のようにバラバラに存在していたわけではなく、セットであったことが示唆されている。

ところが、アト・アティンの座標はえぐられており、かつてSM-33が前の船長とやってきた時に破壊していたことが明らかになる。船長としての不甲斐なさに苦悩して涙するファーン役ライアン・キエラ・アームストロングの演技は見事。『スケルトン・クルー』配信開始時点で14歳というのだから将来有望だ。

そして、ファーンはSM-33がアト・アティンについて聞かれたら「アト・アティンは記憶にねぇ」と答えるようにプログラミングされていたことに気が付く。『スケルトン・クルー』第1話ではファーンは自宅のメイドドロイドのメモリーを上書きして、自分が家にいたように記憶を書き換えていた。

ファーンは船長としてSM-33のプログラムの上書きし、アト・アティンに関する情報を復活させる。SM-33曰く、船長は座標を見た船員を皆殺しにし、SM-33の記憶からもアト・アティンの情報を忘れさせたという。また、宝の場所を探す奴らが現れたら、八つ裂きにするようにSM-33に命令していた。

この場面で、子ども達を襲うSM-33をニールが石を投げて止め、勇敢な姿を見せたのは、ニールがヘイナから受けた影響だろう。専守防衛という一線は守りながら、危機に陥った時には反撃する勇気を得たと捉えることができる。

SM-33は、ジョッドが軽いアクションを見せてスイッチをオフに。子どもの危機は大人が助けるというのは真っ当な倫理観だ。助けられたニールは勇気を讃えられながらも気を失い、『スケルトン・クルー』第4話は幕を閉じる。

ドラマ『スケルトン・クルー』第4話ネタバレ考察&感想

アト・アティンは新しい都市?

ドラマ『スケルトン・クルー』第4話では、新しい惑星を探索して新しい文化に出会うという「スター・ウォーズ」シリーズの定番をこなしつつ、『スケルトン・クルー』に固有のミステリーがさらに深まる展開が描かれた。

加えて、子ども達が主人公ということで、子ども達の成長譚としても楽しめる作りになっている。ジョッド役のジュード・ロウの活躍があまり見られないのは寂しい点だが、ジョッドが持っているフォースの力も含めて、どこかで深掘りされることになるのだろう。

今回登場したアト・アクランの惑星は、アト・アティンに似ているが異なる末路を辿った星だった。同じ世界の異なる姿を描くエピソードの監督がダニエルズに託されたのは、『エブエブ』でマルチバースを見事に描き出したからだろうか。

「アト・ア〜」の惑星はいずれも人工的に作られた実験都市であり、それぞれに異なる要素を与えた時にどのような末路を辿るかということが試されていたのかもしれない。そんなことをやるにはかなりの予算がかかりそうだが、唯一平和な街となったのがアト・アティンで、他の惑星は「失敗作」として廃棄されたということだろうか。

第4話では、SM-33はかつてアト・アクランに行ったことがあったということが分かった。船とSM-33はアト・アティンに眠っていたのだから、前船長が部下達を殺したあと、アト・アティンへ向かったのだろう。気になるのは、なぜ船は山の下に埋まっており、アト・アティンの監理官からも存在に気づかれずに放置されていたのかということだ。

実はアト・アティンはまだ新しい都市であり、SM-33の船がアト・アティンに到着した時にはまだ何もなかったという可能性もあるだろうか。アト・アクランでは古い兵器が使われていたが、アト・アティンのテクノロジーが最先端であったことを考えると、「旧共和国の宝石」は現在進行形のプロジェクトという可能性もある。

一体その裏にはどんな人物が暗躍しているのか、そしてジョッドの正体とは……。『スケルトン・クルー』は後半戦も目が離せない。

ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』は2024年12月3日(火) よりディズニープラスで独占配信。

『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』配信ページ

絵本『STAR WARS マンダロリアンとグローグー』は2025年1月20日発売で予約受付中。

2025年のウォールカレンダーも発売中。

『スケルトン・クルー』第5話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。

第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。

4月23日配信開始の『キャシアン・アンドー』シーズン2の情報はこちらから。

【ネタバレ注意】『スター・ウォーズ:アコライト』最終話の解説&考察はこちらから。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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