『デアデビル:ボーン・アゲイン』マルチバース展開は「不誠実だと思われた」 Netflix版からの変化はなぜ起きた? | VG+ (バゴプラ)

『デアデビル:ボーン・アゲイン』マルチバース展開は「不誠実だと思われた」 Netflix版からの変化はなぜ起きた?

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人気ドラマとなった『デアデビル:ボーン・アゲイン』

2025年3月から全9話が配信され、高い評価を受けたMCUドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1。デアデビルことマット・マードック役をチャーリー・コックス、キングピンことウィルソン・フィスク役をヴィンセント・ドノフリオが再演し、シーズン2は2026年3月に配信されることが予定されている。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』のベースにあるのは、ABC製作で当初はNetflixで配信されていたドラマ『デアデビル』(2015-2018) だ(現在はディズニープラスで配信中)。MCUに含まれるかどうかが曖昧だった『デアデビル』の3シーズンが正式にMCU作品としてカウントされ、『ボーン・アゲイン』は同シリーズの正統続編として制作された。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』には、デボラ・アン・ウォール演じるカレン・ペイジ、エルデン・ヘンソン演じるフォギー・ネルソン、ジョン・バーンサル演じるパニッシャーことフランク・キャッスルなど、『デアデビル』でお馴染みのキャラクターも登場し、大きな話題を呼んだ。

マルチバース展開が計画されていた

Deadlineのポッドキャスト番組では、『デアデビル:ボーン・アゲイン』の主演を務めたチャーリー・コックスが、元々は異なる計画があったことを明かしている。曰く、当初はマルチバース展開でシリーズを“リセット”することを予定していたという。

オリジナルのチームがやりたかったことの一つは、(フィスク役の)ヴィンセントと私を残すことでした。私たちを残したかったが、旧作を見ていない視聴者を置き去りにしたくないと考えていたんです。ある意味での“リセット”を求めていました。

ですから、この件については変異体のような設定にしようという会話がありました。『ロキ』では変異体を扱いましたよね。私たちは「変異体」とは呼ばないけれど、変異体のようなものにしようと。ですから、(当初の計画では)違う世界にいる別のバージョンのキャラクター達だったんです。

ドラマ『ロキ』(2021-) では、分岐した時間軸の別バージョンのキャラクターを“変異体”と呼び、異なるユニバースに各キャラクターの別バージョンが存在するというマルチバース展開をMCUにもたらした。『デアデビル:ボーン・アゲイン』では、本作とNetflixで配信された『デアデビル』のユニバースを別のものとし、マット達を“変異体のようなもの”として描くことが計画されていたという。

このチャーリー・コックスの証言は、これまでに出ていた情報と矛盾しない。ドラマ『ホークアイ』(2021) 配信時点では、同作で共同監督を務めたバードがウィルソン・フィスクについて「彼らが来たユニバースについて扱うのではなく、キャラクターの物語を扱う」と発言。旧作から任意のキャラクターだけがMCUに合流する方針を示唆していた。2024年11月には、チャーリー・コックスが「やり直すという話もあった」と明かしている。

Netflix版と違う理由?

確かに、Netflix版をリセットしつつ、ほぼ同じキャラ設定で同じキャストを起用する手段としては、“変異体”というコンセプトは都合が良い。だが、チャーリー・コックスによると、この設定の採用は見送られることになったという。

有効な選択肢でしたし、楽しいアイデアでもありました。問題は、私が過去の作品で言ったことと対照的なことを言うたびに、私が嘘をついているように思われてしまったことでした。変異体だと思われるのではなく、不誠実だと思われてしまったんです。良いアイデアでしたが、うまくいきませんでした。

詳細は不明だが、このチャーリー・コックスの発言は、『シー・ハルク:ザ・アトーニー』(2022) でのデアデビル/マット・マードックに対する視聴者の反応を受けてのものだろうか。『デアデビル:ボーン・アゲイン』の配信以前には、マットは映画『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』(2021) と『シー・ハルク』、フィスクはドラマ『ホークアイ』と『エコー』(2024) で登場している。

思えば、『シー・ハルク』ではやや陽気なマットが西海岸でスーツを新調する姿が描かれた他、『エコー』ではフィスクが幼少の頃から持っている金槌の形状が『デアデビル』のものとは違うなど、“変異体”という設定だったと言われれば納得できるような演出もあったように思える。

ただ、「変異体」はTVA(時間変異取締局)が使っている言葉である上、作中のキャラ達がマルチバースの概念を知らない以上は、作中で出ているキャラが変異体なのかどうかという点に触れることはできない。「変異体だと思われるのではなく、不誠実だと思われてしまった」というチャーリー・コックスの言葉の背景には、そうした演出上の困難があったのかもしれない。

様々な紆余曲折を経て、『デアデビル』をはじめとする《ザ・ディフェンダーズ・サーガ》のMCU合流と共に配信された『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1。ジョン・パーンサル演じるパニッシャーの単独ドラマスペシャルも2026年配信を予定している他、シーズン2ではドラマ『ジェシカ・ジョーンズ』(2015-2019) からクリステン・リッター演じるジェシカ・ジョーンズが登場することが2025年5月に発表された。

シーズン2ではどんな展開が待っているのか、そして、ルーク・ケイジ、アイアン・フィストら、他のザ・ディフェンダーズメンバーの合流はあるのか。まだまだ『デアデビル:ボーン・アゲイン』から目が離せない。

ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』はディズニープラスで独占配信中。

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Source
Deadline

『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1最終回の解説&考察はこちらから。

『パニッシャー』の単独ドラマスペシャル作品についてはこちらの記事で。

『デアデビル:ボーン・アゲイン』を含むMCUフェーズ5の時系列の解説はこちらから。

【ネタバレ注意】ドラマ『エコー』最終回のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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