ネタバレ解説&感想『トイ・ストーリー3』ラストの意味は? ウッディのメモについても考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『トイ・ストーリー3』ラストの意味は? ウッディのメモについても考察

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アンディとウッディの友情はどうなる?

一大フランチャイズと化した「トイ・ストーリー」シリーズにおいて、アンディとウッディの友情の結末を描いた『トイ・ストーリー3』が2010年に公開された。オモチャからの卒業をテーマにした『トイ・ストーリー3』は、『トイ・ストーリー2』(2000)よりももっと子供とオモチャの関係を掘り下げている。

本記事では、『トイ・ストーリー3』のラストについて解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容は『トイ・ストーリー3』のラストのネタバレを含むため、本編を視聴後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『トイ・ストーリー3』の内容に関するネタバレを含みます。

『トイ・ストーリー3』ラストネタバレ解説

オモチャからの卒業

『トイ・ストーリー2』のラストから時は流れ、アンディは17歳になり、大学へ進学することになった。大学への進学に伴い、アンディは大学の寮に引っ越すことになる。それはウッディたちオモチャとの別れを意味していた。

ウッディたちもアンディが成長してオモチャで遊ばなくなってから数年が経っており、多くの仲間が失われ、孤独を経験しているためか、どうにかしてアンディに遊んでもらおうと必死になっていた。アンディの携帯電話を隠して遊んでもらおうとするウッディたちだったが、その計画は失敗に終わる。

「子供はいずれ大人になり、オモチャから去っていく」というテーマは『トイ・ストーリー2』でも描かれたが、『トイ・ストーリー3』ではウッディたちはそのテーマに正面から向き合うことになる。

バラバラになる仲間たち

『トイ・ストーリー2』ではウッディはアンディがオモチャを卒業するときまで今を精一杯楽しむという結論を出したが、とうとうその時がきてしまったのだ。『トイ・ストーリー2』のラストで仲間になったジェシーは、かつての持ち主のエミリーに捨てられた経験から「アンディもオモチャを捨てる」と言って過呼吸になってしまう。

ウッディは恋人だったボー・ピープが他人に譲られたことにより暗い思いを抱えていたが、それでもアンディは自分たちを捨てないとみんなを奮い立たせる。ウッディのその言葉は自分自身に向けて言っているように感じられ、ウッディも不安でいっぱいであることが伝わってくる。

アンディは思い入れのあるウッディを大学に連れていき、他のオモチャは屋根裏に置くことを選ぶ。しかし、アンディの母親の手違いでオモチャたちは捨てられそうになってしまう。その結果、オモチャたちはアンディに見捨てられたと考え、サニーサイド保育園行きの箱に入るのだった。

サニーサイド保育園とボニー

ウッディはアンディを信じるように言うが、仲間のオモチャたちにその言葉は届かない。仲間のオモチャたちが行き着いたサニーサイド保育園は捨てられることのないオモチャの楽園のように思えた。だが、それは表の顔であり、実際はロッツォ・ハグベアによる独裁政権に支配されていた。

オモチャを丁寧に遊んでくれる年長のチョウチョ組は、文字通りオモチャの楽園だった。その楽園に入れるのはロッツォ・ハグベアの寵愛を受けたオモチャだけであり、そうでないオモチャはオモチャを乱暴に扱う年少のイモムシ組で使い古されることになった。

サニーサイド保育園をオモチャの墓場だと話すウッディだが、保育園を墓場と考え絵里宇理由として、ウッディのオモチャ観が影響していると考えられる。ウッディは「君はともだち」で歌われている通り、オモチャは子供にとっての親友であり、相棒だと考えていることが考察できる。

そのため、特定の子供に寄り添うのではなく、多数の子供と遊ぶことをオモチャとして子供の相棒になっていないと考えたのではないだろうか。だが、ラストにかけてウッディのオモチャ観と相棒への想いは変化していくことになる。

しかし、それはラストでの話であり、このときのウッディはロッツォ・ハグベアの独裁支配を知る前にアンディのもとに帰る道を選んでしまった。悪戦苦闘してサニーサイド保育園から抜け出すウッディだったが、帽子を落した末にアンディの近所に住む女の子のボニーに拾われてしまう。

ボニーのもとで数年ぶりに遊んでもらえたウッディは感動を覚える。ボニーたちのもとにいるオモチャは自分たちを役者だと考えており、ボニーのごっこ遊びを演劇だと思っていた。はからずも幸福を味わうウッディだったが、ロッツォ・ハグベアとかつて仲間だったピエロ人形のチャックルズからサニーサイド保育園の真実を知る。

子供の成長を見守る親友であり相棒であるはずのオモチャが、正しく使われていないというサニーサイド保育園の真実。それがウッディをより一層、アンディのもとに仲間たちを連れ戻さないといけないと思わせたと考えられる。ウッディにとってアンディは相棒であり、オモチャの仲間たちはアンディの親友なのだ。

その一方で、ボニーと遊ぶ中でウッディは久しぶりにオモチャとしての充実感を味わった。それによりラストでロッツォ・ハグベアにも言われたことだが、もうオモチャで遊ばなくなったアンディにとって自分たちオモチャの役目は終わったとウッディの頭の隅に過ったのではないだろうか。

アンディのもとに帰る前に仲間を助け出そうとするウッディだったが、その頃、バズ・ライトイヤーはロッツォ・ハグベアによって図書館”で拘束されていた。そしてバズ・ライトイヤーは説明書をもとにデモ・モードにされてしまうのだった。

ロッツォ・ハグベアの過去

ロッツォ・ハグベアはかつてチャックルズ、ビッグ・ベイビーと共にデイジーという少女のオモチャだった。ロッツォ・ハグベアはデイジーのお気に入りのオモチャで、毎日デイジーと遊ぶ幸せな日々を過ごしていた。

その日々は突然終わる。ピクニックに行ったデイジーがロッツォ・ハグベアたちを忘れて帰ってしまったのだ。ロッツォ・ハグベアは何とかしてデイジーの家まで帰るが、時すでに遅し、デイジーは新しいロッツォ・ハグベアを買っていたのだ。

オモチャと子供の友情の終わりは『トイ・ストーリー2』で、エミリーがジェシーを捨てるという形で一度描かれた。しかし、ロッツォ・ハグベアの体験は捨てられたのではなく、自分には代わりがいるというより強烈なものだった。その体験はロッツォ・ハグベアのアイデンティティを破壊するのに十分だったと言える。

オモチャのアイデンティティについては「トイ・ストーリー」シリーズで度々語られる題材であり、第1作『トイ・ストーリー』や『トイ・ストーリー2』では流行した作品のオモチャであり、大量生産されているオモチャであるバズ・ライトイヤーがアイデンティティ問題に直面している。

上記の通り、ロッツォ・ハグベアは自分の代わりがいること、そして自分は捨てられたことによってアイデンティティと共に、心の中の何かが壊れてしまった。ロッツォ・ハグベアはチャックルズとビッグ・ベイビーの代わりもいると考え、デイジーの家を去り、サニーサイド保育園に辿り着くと独裁者となってしまったのだった。

サニーサイド保育園からの脱出

ウッディは仲間たちを助けるべく、ボニーのバッグに入り込み、サニーサイド保育園へと向かう。サニーサイド保育園の警備と監視は刑務所よりも厳しくなっていた。それに加えて、アンディの引っ越しは明日に迫っている。ウッディは時間とも戦いながら、バズ・ライトイヤーをもとに戻し、サニーサイド保育園から脱出しなければならなかった。

ウッディはこの時点で自分たちオモチャはもうアンディにとって必要ないと考えていたかもしれない。それでも、ウッディはアンディの子供時代を支えた親友であり、相棒として、アンディにきちんと別れを告げなければならないと考えていたことが考察できる。

ウッディたちは脱出計画と並行してバズ・ライトイヤーをもとに戻そうとするが、誤ってスペイン語状態にしてしまった。そんなバズ・ライトイヤーを連れて、唯一の脱出口である廃棄用のゴミ箱に向かうウッディたちだったが、ロッツォ・ハグベアに見つかってしまう。

ロッツォ・ハグベアは「オモチャは捨てられる運命だ」と語るが、ウッディはアンディとの別れを既に覚悟していた可能性が考えられる。それでもウッディはアンディのもとに戻らなければならない。何故ならば、ウッディはアンディの相棒なのだから。

問い詰められたウッディは切り札を持ち出す。それはデイジーの話だった。デイジーが代わりを用意したのはロッツォ・ハグベアだけであり、ビッグ・ベイビーとチャックルズは帰れたかもしれないとウッディは返す。デイジーに置いていかれた話はロッツォ・ハグベアだけではなく、ビッグ・ベイビーの心の琴線にも触れた。

その真実を知ったビッグ・ベイビーは戸惑うが、ロッツォ・ハグベアは怒りのあまりデイジーの名前が書かれたネームプレートを砕く。ビッグ・ベイビーの持つネームプレートはデイジーからの愛の印であり、自分の代用品を買われたロッツォ・ハグベアにとっては嫉妬の対象でもあったと考察できる。ネームプレートを破壊されたことに激昂したビッグ・ベイビーはロッツォ・ハグベアをゴミ箱に投げ捨て、ロッツォ・ハグベアの長きに渡る支配は終わった。

命の恩人、感謝永遠に

ロッツォ・ハグベアによるサニーサイド保育園の支配が終わり、すべてが丸く収まると思われたが、ウッディの足をロッツォ・ハグベアがつかみ、ゴミ箱の中に引きずり込んでしまう。仲間たちはウッディを助けようとするが間に合わず、ゴミ収集車の中に全員落ちてしまった。

ウッディたちはゴミ処理場に辿り着き、幾多の困難に直面する。その最中、ロッツォ・ハグベアをオモチャ仲間として救うウッディとバズ・ライトイヤーだったが、焼却炉を前にしてロッツォ・ハグベアはウッディを裏切った。ラストでもロッツォ・ハグベアは改心することのないディズニーヴィランだったのだ。

オモチャとしてアンディやサニーサイド保育園と向き合う覚悟を決めていたウッディやバズ・ライトイヤーたちとは異なり、ロッツォ・ハグベアは子供を見下しており、あくまでもサニーサイド保育園は独裁国家でしかなかったのだ。ロッツォ・ハグベアとウッディの間の大きな溝とは、子供を親友であり相棒として考えているかどうかだったと考察できる。

赤々と燃える炎を前に、諦めて手を取り合うウッディたち。ウッディは最後までもがいていたが、仲間から手を差し伸べられたときに覚悟を決める。覚悟を決めた理由としてもうアンディにとって自分たちが必要なくなったことで、アンディを支えなければならないという役割が終わったことが関係していると考察できる。

仲間たちが死を覚悟したがそのとき、クレーンによって救われる。クレーンを操縦していたのは、リトルグリーンメンたちだ。リトルグリーンメンはもともとクレーンゲームの景品であり、クレーンを神として崇めている。そのリトルグリーンメンの“信仰”にみんな救われたのだった。

ウッディは助かったことに安堵しつつも、自分だけ大学に一緒に行き、他の仲間たちは屋根裏に行くことを心配していた。ウッディはロッツォ・ハグベアの言っていた通り、もうアンディに自分は必要ないことに気が付いていたと考えられる。そのように迷っていてもアンディが引っ越しする時間は迫ってくる。ゴミ処理場からアンディのもとにどのように帰るか考えていると、アンディの家の前をいつも回ってくるゴミ収集車を見つけるのだった。

この冒頭からラストまで登場するゴミ収集車の運転手は、髑髏のTシャツやその言動からもわかるが『トイ・ストーリー』(1995)でオモチャの天敵と呼ばれていたシドである。アンディが大人になったように、シドもまたオモチャをいじめる子供から手に職を持った大人に成長している。すべてが時間の経過を感じさせる場面だ。

ウッディの残したメモ

ラストでは、アンディの家に帰ることに成功したウッディは、屋根裏に向かう仲間と別れの挨拶を交わすことになる。オモチャの仲間たちは大学生になったアンディを頼むとウッディに告げるが、ウッディは古い写真を見ると、屋根裏行きの箱の上にボニーの家の住所を書いたメモを残すのだった。

それはアンディにはもうウッディたちがいらなくなったことを意味していた。いらなくなったというのは、単に不要になったというわけではない。それはアンディがウッディたちオモチャの手助けが無くても一人で歩いていけるように成長したことを意味していた。

ウッディも大学粋の箱からこっそり屋根裏行きの箱に入り、ボニーのもとに向った。アンディはウッディをボニーへ渡すことを躊躇うが、これまで自分がウッディに助けられていたことを語ると大事な相棒であるウッディをボニーに託し、最後のごっこ遊びをするのだった。

ラストでウッディが相棒であったアンディに別れを告げたことで、第1作『トイ・ストーリー』からはじまった長い、本当に長いアンディとオモチャの友情物語は終わりを告げた。アンディはオモチャから卒業し、ウッディという相棒がいなくても独り立ちできるようになった。

ロッツォ・ハグベアがいなくなったサニーサイド保育園は改革がなされ、ラストシーンではオモチャたちはイモムシ組とチョウチョ組を交代制で担当する様子が描かれた。ボニーのバッグを通してそのことを知ったウッディたちは安堵し、ボニーのオモチャとして新たな人生を歩み始めたのだった。

『トイ・ストーリー3』ラストネタバレ考察&感想

子供とオモチャの友情の終わり

これまでの「トイ・ストーリー」シリーズでは、オモチャが子供のためにどうあるべきかという問題を描いてきた。その問いの中でも最も重要で、根源にある問いが「オモチャからの卒業」という問題だ。

子供はいずれオモチャで遊ばなくなる。そのとき、オモチャの役割はどうなるのだろうかという問題は、『トイ・ストーリー2』のジェシーとエミリーの関係でも描かれていた。『トイ・ストーリー3』はその問題と観客が向き合えるように10年も時間を置いて制作された作品だ。

「トイ・ストーリー」シリーズが出した答えとは、オモチャは子供にとっての相棒であり、幸せな形で卒業していくというものだった。そして、オモチャは次の世代の子供に受け継がれていく。オモチャはそうして子供たちの成長を見届けてくれる守護聖人のような存在として、『トイ・ストーリー3』では描かれていると考えられる。

自由な発想

『トイ・ストーリー3』のラストの演劇の場面でもわかる通り、ボニーのオモチャたちは、自分たちは役者だと考えており、ボニーのことを主演兼監督だと考えている。そしてボニーは幅広いオモチャで遊んでおり、その内容も多岐にわたる。

この想像力の豊かさは幼い頃のアンディに通じており、『トイ・ストーリー3』のテーマとして自由な発想があると考察できる。ボニーは男の子向けのオモチャでも好きな設定を考えて遊ぶ少女として描かれており、それは『トイ・ストーリー3』のラストのその後を描いた短編『トイ・ストーリー 謎の恐竜ワールド』(2014)でも顕著に描かれている。

オモチャと遊ぶには自由な発想が必要であり、オモチャで遊んでいく内に自然と自由な発想が子供の中で育っていく。『トイ・ストーリー3』ではアンディからボニーへとラストでオモチャが受け継がれる過程でそれを描いていると考えられる。

この自由な発想力は後の「トイ・ストーリー」シリーズでも描かれていくことが考えられ、2026年夏公開の『トイ・ストーリー5』で掘り下げられていくことが考察できる。今後の「トイ・ストーリー」シリーズにも注目だ。

映画『トイ・ストーリー3』はDVDとBlu-rayが発売中。

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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