「トイ・ストーリー」シリーズ第2弾
劇場用長編映画として世界初のフルCGアニメーション作品である『トイ・ストーリー』(1995)。その続編であり、「トイ・ストーリー」シリーズという一大フランチャイズの第2弾となった『トイ・ストーリー2』(1999)では前作で描かれた子供の成長物語から一歩進み、『トイ・ストーリー2』では、子供とオモチャの幸せな関係とは何かを問いかけている。
2026年6月には『トイ・ストーリー5』が公開されることが予定されている。今も続編が作られ続けている「トイ・ストーリー」シリーズの中で、1つの命題になっている、子供の成長に伴うオモチャの幸せについて描かれた『トイ・ストーリー2』を観直すことで、「トイ・ストーリー」シリーズ全体を振り返ることができるのではないだろうか。最新作に向けて「トイ・ストーリー」シリーズの1つの転換点になった『トイ・ストーリー2』を振り返ると新しい発見があるかもしれない。
本記事では、映画『トイ・ストーリー2』について解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容には映画『トイ・ストーリー2』のラストのネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『トイ・ストーリー2』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『トイ・ストーリー2』ネタバレ解説
親友になったウッディとバズ・ライトイヤー
シドの家からの脱出とアンディの引っ越しを経て、絆を深めたオモチャたち。宇宙飛行士のアクションフィギュアのバズ・ライトイヤーとティラノサウルスのオモチャのレックスは、『バズ・ライトイヤー』のゲームを楽しんでいる。バズ・ライトイヤーが宇宙の皇帝ザークのエネルギーを狙うという設定は、『トイ・ストーリー』シリーズ作中作という設定のスピンオフ映画『バズ・ライトイヤー』(2022)でも描かれている。
一方、カウボーイの姿をしたおしゃべり人形のウッディは、持ち主のアンディと一緒に出かけるべく準備をしていた。今週末、アンディのカウボーイキャンプがあるのだ。しかし、ウッディの腕がほつれ、綿が飛び出してしまう。そのせいでカウボーイキャンプに行けなくなってしまったウッディは落胆し、挙句の果てにはアンディに捨てられる夢を見るようになってしまう。
悪夢にうなされる日々を過ごすことになったウッディは、棚の上で埃をかぶっているオモチャと出会う。ウィージーだ。ウィージーは音の出るペンギンのオモチャだが、部品が壊れてしまっていた。修理に出される予定だったが忘れ去られていたのだ。そんな折、オモチャたちにとって最大の危機が訪れる。不用品を処分するためのガレージセールだ。
オモチャの恐怖、ガレージセール
オモチャたちはガレージセールに出されるのではないかと怯えている。容赦なく、アンディの部屋のオモチャやボードゲームをガレージセールの箱に入れるアンディの母親。ウィージーも25¢の箱に入れられてしまう。ウィージーを助けに行ったウッディだったが、逆にウッディはガレージセールに巻き込まれてしまう。売り物の中に紛れ込んだウッディに目を付けたのは「トイ・バーン」というオモチャ屋を開いているアルという男だった。
さすがにアンディの母親もウッディを売るつもりはなかったが、アルは隙を突いてウッディを盗み出してしまったのだった。残された手がかりは車のナンバーと鳥の羽根。それをもとにアンディのオモチャたちは「トイ・バーン」のCMで、アルが鶏に扮していることを思い出すのだった。
ウッディのラウンドアップ
その頃、アルに連れ去られたウッディはカウガールのジェシーとジェシーの愛馬のブルズアイ、金鉱掘りのプロスペクターと出会う。そこでウッディは本当の自分を知ることになる。ウッディはアメリカ西部を舞台にしたモノクロの人形劇『ウッディのラウンドアップ』の主人公のオモチャだったのだ。
『ウッディのラウンドアップ』はソ連による人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げ成功による社会現象、通称“スプートニク・ショック”のあおりを受けたことで打ち切られてしまった。しかし、熱狂的なファンは多く、ウッディを手に入れたことで、アルの手元に『ウッディのラウンドアップ』の人形がすべて揃ったことになる。彼はウッディたちをまとめて日本のオモチャ博物館に売却しようと考えていたのだ。
ウッディはバズ・ライトイヤーにオモチャであることの意義や、子供の傍にいて友人であり続ける重要性を説いてきた。その価値観が自分は「レアグッズ」であるという事実によって揺らぐ。そんなことは露知らず、バズ・ライトイヤーはCMを手がかりにウッディを攫った「トイ・バーン」の住所を探していた。
『トイ・ストーリー2』ラストをネタバレ解説
ジェシーの過去
仲間が自分を探していることを知らず、ウッディは修理工のゲーリーじいさん(1997年の短編映画、『ゲーリーじいさんのチェス』の主人公でもある)によって新品同様に修理されていく。その過程で足の裏に書かれたアンディの名前が塗りつぶされてしまう。ウッディは喜びと同時に複雑な感情を抱く。その頃、ウッディを探しに来たバズ・ライトイヤー一行だったが、トラブルに見舞われ、アンディのバズ・ライトイヤーが別の新品のバズ・ライトイヤーと入れ替わってしまっていた。
ウッディはアンディのもとに帰ろうとしているが、ジェシーはそれによって『ラウンドアップ』の仲間がまた欠けてしまい、倉庫に逆戻りさせられることを恐れている。「アンディのもとに帰っても幸せになれない」と語るジェシー。ウッディは不思議に思うが、その答えがジェシー本人から語られる。ジェシーもかつてはウッディのように愛されていた。しかし、持ち主のエミリーが成長してジェシーというオモチャ遊びから卒業したことにより、ジェシーは捨てられ、ガレージセールに売られてしまった。それがジェシーの心に深いトラウマを植え付けたのだった。
ジェシーの過去を知ったウッディは、アンディの元に帰らず、『ラウンドアップ』のみんなと一緒にいることを決める。その決断にバズ・ライトイヤーは「子供たちを支える存在として傍に居続けるオモチャの意味を教えたのはウッディだ」と返すのだった。一度は『ラウンドアップ』の仲間たちと一緒にいる道を選んだウッディだったが、それによってまた悩んでしまう。
ディズニーヴィラン、プロスペクター
ウッディは『ウッディのラウンドアップ』の劇中歌として「君はともだち」を歌う自分の姿を見て考えを改める。そして、ジェシーとブルズアイを誘い、「アンディのもとで一緒に遊ぼう」と誘うのだった。それを阻んだのは、なんとプロスペクターだった。これまでの妨害行為はすべてプロスペクターによるものだったのだ。『ウッディのラウンドアップ』のオモチャの中で唯一新品のまま売れ残り、遊ばれた経験を持たないプロスペクター。日本のオモチャ博物館行きは彼にとって、最大の日の目を浴びるチャンスだったからだ。
海外発送のために箱詰めにされてしまったウッディを助けようとするバズ・ライトイヤーたちだったが、その前に新たな敵が立ちふさがる。宇宙の悪の帝王ザーグだ。新しいバズ・ライトイヤーと同様、サーグも自分の設定を本当のことだと信じている。ザーグはあっさりと倒されて、父親だと明かした新品のバズ・ライトイヤーと仲良くキャッチボールをしている。あくまでも『トイ・ストーリー2』のディズニーヴィランは、プロスペクター1人なのだ。
ウッディやジェシー、ブルズアイを救出しようとするバズ・ライトイヤーたちだったが、プロスペクターによる妨害を繰り返し受ける。プロスペクターは番組打ち切りのきっかけになった人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げ成功による“宇宙ブーム”が相当気に入らなかったようだ。しかし、最後はオモチャたちのカメラのフラッシュ攻撃により、ウッディたちが発送される空港の倉庫で、プロスペクターの撃退に成功する。
アンディの成長
プロスペクター撃退後、箱に取り残されていたジェシーを救出しようとしたウッディは、自ら飛行機の貨物室に乗り込む。ウッディはジェシーを『ウッディのラウンドアップ』の幻の最終回を自分たちでつくろうと奮い立たせ、すんでのところで離陸直前の飛行機から脱出して、バズ・ライトイヤーの乗ったブルズアイに飛び乗るのだった。アンディの家に帰ったウッディたちはキャンプから返ってきたアンディを迎え入れる。
アンディに腕を修理してもらったウッディだったが、ぼそりと「これでよかったんだな」と呟く。ウッディはジェシーの経験やプロスペクターの言葉によって、いずれアンディが自分を卒業することを知ったのだ。それでも、ウッディはアンディの傍にいることを選んだ。
音を出す部品を取り換えてもらったウィージーの「君はともだち」を聞きながら、ウッディはアンディの成長について考える。バズ・ライトイヤーに「心配か」と問われるも、ウッディは今を精一杯楽しむと返し、自分にはバズ・ライトイヤーという親友がいることを再確認するのだった。
『トイ・ストーリー2』ネタバレ感想&考察
ピクサーの遊び心
ハムが「トイ・バーン」のCMを探すためにテレビのチャンネルを高速で切り替えるが、そこでテレビ番組として「トイ・ストーリー」シリーズの製作のきっかけになったアカデミー短編アニメ賞作品『ティン・トイ』(1988)が放送されている。他にもピクサーの短編作品が放送されている。このように『トイ・ストーリー2』はピクサーのスタッフの遊び心があふれている。
例えば、「トイ・バーン」は前作にCMとして登場するオモチャ屋だ。それはバズ・ライトイヤーのアクションフィギュアのCMで、それを見てバズ・ライトイヤーは自分がオモチャだと自覚することになった。バズ・ライトイヤーがオモチャだと自覚するきっかけになったオモチャ屋のCMを放送している販売店で、バズ・ライトイヤーはかつてのじぶんそっくりな新品のバズ・ライトイヤーに出会うことになっている。
バズ。ライトイヤーと宇宙の帝王ザーグの関係性が親子関係なのも「スターウォーズ」シリーズのルーク・スカイウォーカーとダースベイダーのパロディなのは明らかだ。この設定はスピンオフ映画『バズ・ライトイヤー』で掘り下げられているが、流石にそのままではまずいとおもったのか、少し変更が加えられている。『トイ・ストーリー2』はスタッフの遊び心によって、前作との繋がりや名作映画へのパロディを探す楽しみが存在しているのだ。
オモチャからの卒業
『トイ・ストーリー2』でジェシーが語る過去は、「子供の成長とオモチャからの卒業」という、『トイ・ストーリー3』や『トイ・ストーリー4』でも共通のテーマを描き出す。子供たちは成長して、いずれオモチャ遊びから卒業してしまうのだ。オモチャにとって子供は一生の友人だが、子供にとってオモチャは幼少期の友人でしかない。それが『トイ・ストーリー2』では明確に語られることになる。
ウッディもアンディが成長していくことを心配し、自分が捨てられるのではないかと不安になるが、最後は今を精一杯楽しむことを選ぶ。オモチャたちは子供たちの友人というだけではなく、親のように成長を見守る、という側面も持つ。つまり、いずれその子が自分の元を巣立っていくことを受け入れ、送り出す覚悟を決めなければならないのだ。
しかし、アンディにもオモチャ卒業のときは訪れる。それを真正面から描いたのが『トイ・ストーリー3』だ。『トイ・ストーリー2』から11年後に公開された『トイ・ストーリー3』ではアンディは17歳となり、大学生になって家を出ることになる。そのとき、ウッディたちはどのようなことを思い、どのようにオモチャ卒業という現実を受け入れて前に進むのだろうか。『トイ・ストーリー2』を観た後には、ぜひとも『トイ・ストーリー3』を観てほしい。
オモチャの幸せとは
オモチャの幸せとは「子供に遊んでもらうこと」だとこれまでウッディは語ってきた。それに対して遊ばれたことのないプロスペクターは、いずれ子供がオモチャを卒業し、捨てられるのだったら永遠に展示され続ける方が幸せだと説いている。
この「オモチャの幸せ」とはなんなのか。この命題は、「トイ・ストーリー」シリーズという一大フランチャイズに通底するテーマになっている。この後、前述のようにオモチャ遊びからの卒業を描いた『トイ・ストーリー3』、また「子供に遊んでもらうこと」以外の「オモチャの幸せ」がテーマの『トイ・ストーリー4』、さらには数々のスピンオフ短編で「オモチャたちの幸せ」は繰り返し提示され、掘り下げられていく。「オモチャの幸せ」という視点から『トイ・ストーリー2』を観ると、また新しい発見があるかもしれない。
2026年6月には『トイ・ストーリー5』が公開される。『トイ・ストーリー4』ではウッディはこれまでバズ・ライトイヤーたちが信じていた「オモチャの幸せ」とは違う幸せを手に入れた。その後、ウッディはオモチャであることにどのようにして向き合うのだろうか。「トイ・ストーリー」シリーズの今後の展開に注目していきたい。
映画『トイ・ストーリー』はDVDとBlu-rayが発売中。
映画『トイ・ストーリー2』はDisney+で配信中。
映画『トイ・ストーリー』のラスト解説&考察はこちらから。
ピクサー『リメンバー・ミー』のラスト解説&考察はこちらから。
ピクサー『インサイドヘッド2』が続編制作されることで6つ目のフランチャイズになることの解説はこちらから。
アンディが観てはまったという設定の『バズ・ライトイヤー』の解説&考察はこちらから。