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ヒューゴー賞2024発表!
現地時間2024年8月11日(日)、世界SF大会(ワールドコン)に参加するSFファンによって選ばれるSF賞・ヒューゴー賞の授賞式が、スコットランドはグラスゴーで開催されている第82回ワールドコンで行われた。
2022年の発表作品のうち40,000語以上のものを対象としたヒューゴー賞の長編小説部門には、エミリー・テッシュのSome Desperate Gloryが選ばれた。マーサ・ウェルズやアン・レッキー、ジョン・スコルジーを抑えての受賞となった。
エミリー・テッシュ(Emily Tesh)はロンドン出身の作家。ケンブリッジのトリニティカレッジやシカゴ大学で学び、現在はハートフォードシャー在住で、創作の傍ら子どもたちにラテン語や古代ギリシア語を教えている。これまでにSilver In the WoodとDrowned Countryの中長編二部作を発表し、アスタウンディング新人賞や世界幻想文学大賞を受賞している。今回受賞したSome Desperate Gloryは著者初めての長編作品である。作品はいずれも未邦訳。
17,500〜39,999語の作品が対象であるヒューゴー賞中長編小説部門に選ばれたのは、T.キングフィッシャーのThornhedge。昨年Nettles and Bonesでヒューゴー賞長編を受賞した著者だ。日本では『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』(原島文世訳、早川書房)が刊行されている。
7,500〜17,499語の作品を対象とした中編小説部門はThe Year Without Sunshine、また7,499語以下の作品が対象となるヒューゴー賞短編小説部門はBetter Living Through Algorithmsで、ナオミ・クリッツァーがダブル受賞。アメリカの作家で、過去にもヒューゴー賞を受賞している他、エドガー賞、ローカス賞、ネビュラ賞などかずかずの受賞歴がある作家だ。邦訳は短編「怪物」(桐谷知未訳、『S-Fマガジン』2022年8月号掲載)がある。
ヒューゴー賞シリーズ部門にはアン・レッキーの〈叛逆航路〉シリーズが選ばれた。シリーズ部門は3作品以上かつ24万ワード以上が発表され、対象年中に新作が刊行されたシリーズが対象になる。〈叛逆航路〉三部作は完結済みだが、世界観を同じくするTranslation State が昨年発表されたことで対象になった模様。
グラフィックストーリー部門はSAGA Vol.11が受賞。異種族間の愛と居場所を求める戦いを描いたスペースオペラの最新刊が受賞となった。
長編映像部門には『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ:アウトローたちの誇り』、短編映像部門には『ラスト・オブ・アス』シーズン1第3話「長い間」が選ばれている。
今年からボードゲームも対象となったゲーム&インタラクティヴワーク部門は『バルダーズ・ゲート3』が受賞した。
過去2年にデビューした小説家を対象とするアスタウンディング新人賞は、『鋼鉄紅女』のシーラン・ジェイ・ジャオが受賞。昨年のヒューゴー賞で最終候補者から除外されたことを受けて受賞資格が1年延長された。
授賞式では、長編賞受賞者のエミリー・テッシュをはじめ、シーラン・ジェイ・ジャオ、ファンジン部門受賞のNerds of a Feather, Flock Togetherメンバー、セミプロジン部門受賞のStrange Horizonsメンバーなどが、受賞スピーチの時間を使ってガザ、ウクライナ、スーダンの情勢、またトランスヘイトの蔓延について言及し、周縁化され、命を脅かされている人々への連帯を示した。
授賞式のアーカイブはここから見ることができる。
2024年のヒューゴー賞受賞作および受賞者は以下の通り。
2024年 ヒューゴー賞受賞作/受賞者一覧
長編小説部門
- Some Desperate Glory by Emily Tesh (Tordotcom, Orbit UK)
中長編小説部門
- Thornhedge by T. Kingfisher (Tor, Titan UK)
中編小説部門
- “The Year Without Sunshine” by Naomi Kritzer (Uncanny Magazine, November-December 2023)
短編小説部門
- “Better Living Through Algorithms” by Naomi Kritzer (Clarkesworld May 2023)
シリーズ部門
- Imperial Radch by Ann Leckie (Orbit US, Orbit UK)
関連書籍部門
- A City on Mars by Kelly Weinersmith and Zach Weinersmith (Penguin Press; Particular Books)
グラフィックストーリー部門
- Saga, Vol. 11 written by Brian K. Vaughan, art by Fiona Staples (Image Comics)
長編映像部門
- Dungeons & Dragons: Honor Among Thieves, screenplay by John Francis Daley, Jonathan Goldstein and Michael Gilio, directed by John Francis Daley and Jonathan Goldstein (Paramount Pictures)
短編映像部門 (90分以内)
- The Last of Us: “Long, Long Time”, written by Craig Mazin and Neil Druckmann, directed by Peter Hoar (Naughty Dog / Sony Pictures)
ゲーム・インタラクティヴワーク部門
- Baldur’s Gate 3, produced by Larian Studios
短編編集者部門
- Neil Clarke
長編編集者部門
- Ruoxi Chen
プロアーティスト部門
- Rovina Cai
セミプロジン部門 (半商業誌)
- Strange Horizons, by the Strange Horizons Editorial Collective
ファンジン部門(非商業誌)
- Nerds of a Feather, Flock Together, editors Roseanna Pendlebury, Arturo Serrano, Paul Weimer; senior editors Joe Sherry, Adri Joy, G. Brown, Vance Kotrla.
ファンアーティスト部門(非商業アーティスト)
- Laya Rose
ファンライター部門(非商業ライター)
- Paul Weimer
ファンキャスト部門(非商業オーディオ・ビデオ部門)
- Octothorpe, by John Coxon, Alison Scott, and Liz Batty
アスタウンディング新人賞
- Xiran Jay Zhao (eligibility extended at request of Dell Magazines)
ロードスター賞(ヤングアダルト小説)
- To Shape a Dragon’s Breath by Moniquill Blackgoose (Del Rey)
Source
The Hugo Awards