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ヒューゴー賞2022発表!
米時間2022年9月4日(火)、世界SF大会(ワールドコン)に参加するSFファンによって選ばれるSF賞・ヒューゴー賞の授賞式が米シカゴで開催されている第80回ワールドコン Chicon 8 で開催された。コロナ禍にあって、2020年のヒューゴー賞授賞式はリモートで、2021年の授賞式は現地開催ながら12月に時期をずらしての開催となった。2022年は夏に現地開催といういつもの形式で開催されている。
2021年の発表作品を対象としたヒューゴー賞の長編小説部門には、アーカディ・マーティーン『A Desolation Called Peace』が選ばれた。ネビュラ賞を受賞したP・ジェリ・クラークの『A Master of Djinn』や、日本でも大きな話題を呼んだアンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を破っての受賞となった。
本作は〈テイクスカラアン〉シリーズの第二弾にあたり、第一弾の『帝国という名の記憶』は日本でも内田昌之による翻訳で早川書房より刊行されている。こちらも2020年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞している。
アーカディ・マーティーン『A Desolation Called Peace』は『平和という名の廃墟』の邦題で、同じく内田昌之による日本語訳版が早川書房より2022年10月18日(火)に刊行される予定となっている。
ヒューゴー賞中長編小説部門に選ばれたのはベッキー・チェンバーズ『A Psalm for the Wild-Built』。同作は新シリーズ〈Monk & Robot〉シリーズの第一弾。ベッキー・チェンバーズは日本でも創元SF文庫から『銀河核へ』(細美遥子 訳) が刊行された〈ウェイフェアラー〉シリーズで2019年のヒューゴー賞シリーズ部門を受賞している。今回の新シリーズにも期待しよう。
中編小説部門はスザンヌ・パルマー『Bots of the Lost Ark』が受賞。スザンヌ・パルマーは2018年の『The Secret Life of Bots』に続く二度目のヒューゴー賞中編小説部門受賞になる。本作はシオドア・スタージョン記念賞の短編部門にもノミネートされている。
ヒューゴー賞短編小説部門にはサラ・ピンスカー「Where Oaken Hearts Do Gathe」が選ばれた。同作はネビュラ賞短編小説部門も受賞しており、ダブル・クラウンとなった。サラ・ピンスカーは2021年も『Two Truths and a Lie』で中編小説部門のダブル・クラウンを達成しており、これで2年連続のダブル・クラウンになる。
サラ・ピンスカーはスピーチで、「あなたに何ができて何ができないか教えようとする他人の声は全て無視してください」と人々にエールをおくった。サラ・ピンスカーの邦訳はネビュラ賞長編小説部門受賞作の『新しい時代への歌』(村山美雪 訳) とフィリップ・K・ディック賞受賞作の『いずれすべては海の中に』(市田泉 訳) が竹書房から発売されている。
なお、掲載誌のUncanny Magazineはヒューゴー賞セミプロジン部門を受賞している。
ヒューゴー賞シリーズ部門には、ショーニン・マグワイアの〈Wayward Children〉シリーズが選ばれた。本シリーズは日本でも原島文世による翻訳で創元推理文庫から『不思議の国の少女たち』『トランクの中に行った双子』『砂糖の空から落ちてきた少女』が刊行されており、〈不思議の国の少女たち〉シリーズとして展開されている。
ショーニン・マグワイアは自身がリー・モイヤーと共に手がけた『Small Gods』でファンジン部門も受賞した。
グラフィックストーリー部門は、コミックス『Far Sector』が受賞。かつて長編小説部門で 〈破壊された地球〉三部作が前人未到の3連覇を達成したN・K・ジェミシンがストーリーを手がけており、はDCコミックスの「グリーン・ランタン」シリーズ最新作に当たる。
長編映像部門には『DUNE/デューン 砂の惑星』、短編映像部門には『エクスパンス -巨獣めざめる-』(2015-2022) シーズン5最終話の「復讐のとき(原題:Nemesis Games)」が選ばれている。
2022年のヒューゴー賞受賞作および受賞者は以下の通り。
2022年 ヒューゴー賞受賞作/受賞者一覧
長編小説部門
- A Desolation Called Peace, by Arkady Martine (Tor)
中長編小説部門
- A Psalm for the Wild-Built, by Becky Chambers (Tordotcom)
中編小説部門
- “Bots of the Lost Ark”, by Suzanne Palmer (Clarkesworld, Jun 2021)
短編小説部門
- “Where Oaken Hearts Do Gather”, by Sarah Pinsker (Uncanny Magazine, Mar/Apr 2021)
シリーズ部門
- Wayward Children, by Seanan McGuire (Tordotcom)
関連書籍部門
- Never Say You Can’t Survive, by Charlie Jane Anders (Tordotcom)
グラフィックストーリー部門
- Far Sector, written by N.K. Jemisin, art by Jamal Campbell (DC)
長編映像部門
- Dune, screenplay by Jon Spaihts, Denis Villeneuve, and Eric Roth; directed by Denis Villeneuve; based on the novel Dune by Frank Herbert (Warner Bros / Legendary Entertainment)
短編映像部門 (90分以内)
- The Expanse: “Nemesis Games,” written by Daniel Abraham, Ty Franck, and Naren Shankar; directed by Breck Eisner (Amazon Studios)
短編編集者部門
- Neil Clarke
長編編集者部門
- Ruoxi Chen
プロアーティスト部門
- Rovina Cai
セミプロジン部門 (半商業誌)
- Uncanny Magazine, publishers and editors-in-chief Lynne M. Thomas and Michael Damian Thomas; managing/poetry editor Chimedum Ohaegbu; nonfiction editor Elsa Sjunneson; podcast producers Erika Ensign & Steven Schapansky
ファンジン部門(非商業誌)
- Small Gods, Lee Moyer (Icon) and Seanan McGuire (Story)
ファンアーティスト部門(非商業アーティスト)
- Lee Moyer
ファンライター部門(非商業ライター)
- Cora Buhlert
ファンキャスト部門(非商業オーディオ・ビデオ部門)
- Our Opinions Are Correct, presented by Annalee Newitz and Charlie Jane Anders, produced by Veronica Simonetti
アスタウンディング新人賞
- Shelley Parker-Chan
ロードスター賞
- The Last Graduate, by Naomi Novik (Del Rey Books)
Source
The Hugo Awards