映画『ザ・ウォッチャーズ』“見えないこと”への恐怖、それに向き合う人間の物語【ネタバレなしレビュー】 | VG+ (バゴプラ)

映画『ザ・ウォッチャーズ』“見えないこと”への恐怖、それに向き合う人間の物語【ネタバレなしレビュー】

©2024 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

『ザ・ウォッチャーズ』6月21日公開

2024年6月21日(金) より公開の映画『ザ・ウォッチャーズ』(配給:ワーナー・ブラザース映画)は、イシャナ・ナイト・シャマラン監督の長編デビュー作。同監督の父であり、映画『シックス・センス』(1999) や『オールド』(2021) といった作品で知られるM・ナイト・シャマランが製作を務めた作品としても注目を集めている。

映画『ザ・ウォッチャーズ』は、A・M・シャインの同名小説をベースにした作品。アイルランドの森の中に迷い込んでしまった一人の女性が“鳥カゴ”と呼ばれる家に辿り着き、そこで暮らしていた3人の人物と共に、“ウォッチャーズ”と呼ばれる謎の生物から毎晩監視されることになる。その生き物の正体とは、そしてこの4人は森の中から逃げられるのか……。今回は、6月最注目の洋画の一つとして公開される映画『ザ・ウォッチャーズ』のレビューをネタバレなしでお届けしよう。

『ザ・ウォッチャーズ』レビュー(ネタバレなし)

“見えないこと”への恐怖

『ザ・ウォッチャーズ』の主演を務めるのはダコタ・ファニング。28歳の主人公ミナはアメリカからの移民で、アイルランドのゴールウェイで孤独に暮らしている。ペットショップで働いているミナは店主からオウムの配達を依頼され、車で森を抜けることに……。ここから思いもよらない不思議な経験が始まる。

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ミナが迷い込む森は、歩いても歩いても外にたどり着くことができない。ロケはアイルランドにあるウィックローの森で行われたといい、スクリーンに映し出される「絶望的」とすら言える森の深さは“見えないこと”に対する恐怖心をかき立てる。イシャナ・ナイト・シャマラン監督は、『ザ・ウォッチャーズ』では原作小説を読んだ時に頭に浮かんだものを忠実に映像化したと話している。この新感覚のホラー体験を最大化しているのが、アベル・コジェニオウスキが手がける音楽だ。序盤の展開では、その音楽が「森林版ジョーカー」とも呼べる不気味さを作品にもたらしている。

4人の駆け引きが見どころ

もちろん、音楽や視覚効果に加えて、森の中の鳥カゴで登場する個性的なキャラクターたちも『ザ・ウォッチャーズ』のミステリーを牽引していく。ようやく他者と出会えたということが決して安心につながらないのが人類の哀しいところ。ミナが出会った3人は、壁の一面が巨大な鏡が鏡となっているこの建物で謎ルールに従って生活していた。

まあまあまともそうに見えるキアラは、けれど数日前から夫が行方不明になっていると話す。リーダー格のマデリンは、厳格な彼女のルールに従うことを求めるが的を射たことも言う。一番若いダニエルは、危なっかしくはあるが漏らす不満には一理ある。かくいう主人公のミナも、主観では一番まともなのだが、相手に心の壁を作る性格は褒められたものではない。

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疑心暗鬼の中で生活する4人に課せられたルールの一つは、夜になったら鳥カゴの鏡の前に立ち、“ウォッチャーズ”から見られること。夜になるとウォッチャーズは鳥カゴの前に集まってきて、マジックミラーになっている鏡の向こうから4人のことを監視するのだ。この部屋の鏡は日が昇ると透明なガラスになり森の様子が見えるが、日が暮れると鏡になり、こちらからウォッチャーズの姿を見ることはできない。ウォッチャーズが何者なのかという謎が本作のミソであり、4人の間の信頼関係と駆け引きも見どころだ。

SFファンタジーファンにもおすすめ

『ザ・ウォッチャーズ』では鏡や鳥カゴといったモチーフが巧く使われており、自分や他者と向き合うこと、自由の意味や心理的なバリアなど、扱われているテーマは王道的だ。また、本作はスリラー/ホラーとして制作されているが、作品を観た印象ではSFファンタジーのファンも満足できるであろう仕上がりになっている。

イシャナ・ナイト・シャマラン監督の長編デビュー作としては上出来と言える『ザ・ウォッチャーズ』。予算の問題か(本作の予算は非公開)、意図的なものか、CGは少々安っぽく見えるところもあったが、同監督がビッグバジェットの作品を手掛ける未来に期待できるほどには、監督の個性が良い方向に出ている作品だった。

意外な展開を迎える『ザ・ウォッチャーズ』のラストは、ぜひ劇場で体験してほしい。米国では少々複雑なストーリーラインが減点評価の対象となったようだが、振り返って語り合ったり、観直したり、情報を深掘りしたりして補完していく楽しさもある。あなたは、ウォッチャーズの謎とクライマックスの意外な展開を見抜けるだろうか。

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映画『ザ・ウォッチャーズ』は2024年621日(金)公開。

映画『ザ・ウォッチャーズ』公式サイト

『ザ・ウォッチャーズ』作品情報
■監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
■製作:M・ナイト・シャマラン、アシュウィン・ラジャン、ニミット・マンカド
■製作総指揮:ジョー・ホームウッド
■脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン
■出演:ダコタ・ファニング、ジョージナ・キャンベル、オルウェン・フエレ、アリスター・ブラマー、オリバー・フィネガン

◇あらすじ
地図にない森、ガラス貼りの部屋、見知らぬ3人ー
28歳の孤独なアーティスト ミナは、
贈り物を届けるだけのはずだったが、
そこに閉じ込められ“謎の何か”に毎晩監視されているー
“監視者”は何者なのか?そして何故…?

 

【ネタバレ注意!】『ザ・ウォッチャーズ』ラストのネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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