ネタバレ解説&感想『ショウタイムセブン』ラストの意味は? 犯人は誰? メディアの功罪、小説との違いを考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『ショウタイムセブン』ラストの意味は? 犯人は誰? メディアの功罪、小説との違いを考察

©2025 SHOWTIME7 FILM PARTNERS

映画『ショウタイムセブン』公開

韓国映画『テロ、ライブ』を阿部寛主演で日本でリメイクした映画『ショウタイムセブン』が2025
年2月7日(金) より劇場で公開された。本作は、2021年にはインドのNetflixでもリメイクされた人気作品だ。

映画『ショウタイムセブン』で監督・脚本を務めるのは、ドラマ『岸辺露伴は動かない』(2020-)、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(2023) で知られる渡辺一貴。元人気キャスターの折本眞之輔がテロリストからの脅迫を受け、犯人との通話をスタジオから生放送するというストーリーは、日本ではどのように描かれたのだろうか。

今回は映画『ショウタイムセブン』のラストの展開をネタバレありで解説&考察し、感想を記していこう。なお、以下の内容は結末部分のネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ショウタイムセブン』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『ショウタイムセブン』ネタバレ解説

阿部寛と竜星涼が魅せるトゥーフェイス

映画『ショウタイムセブン』では、阿部寛演じる主人公・折本眞之輔が「ウスバカゲロウ」を名乗るテロリストと交渉することになる。折本眞之輔は人気報道番組『ショウタイム7』のキャスターだったが少し前に同番組を降板し、今ではNJBラジオのキャスターを務めていた。

シリアスな政治問題を扱う『ショウタイム7』の裏で、折本は「あなたは犬派? 猫派?」というほのぼのとしたテーマを扱っている。髪もセットせず、髭も伸びっぱなしの堕ちた元人気キャスターと、その後の変身っぷりを演じる阿部寛のさすがの演技力に唸らされる。

現在の『ショウタイム7』のメインキャスターである若手の安積征哉を演じたのは竜星涼。爽やかでヒーロー的な姿と折本を追い込むヴィラン的な姿まで演じ分けられるのが竜星涼の魅力だ。同じく阿部寛演じる折本も、時に犯人を追及する正義の姿と、犯人の暴力をバックに他者を追及するヒールの姿の両面を見せることになる。

前半と後半の逆転劇

城東火力発電所を爆破し、交渉相手に折本を指名した犯人の要求は、大和電力社長の謝罪、水橋総理の謝罪、折本眞之輔が真実を語ること、と移り変わっていく。6年前、犯人の繁藤寛治の父が大和電力の城東火力発電所で次世代発電所の工事の仕事をしていたが、同時期にG20が開催され海外要人の視察のために無理なスケジュールで働かされていた。

結果として、現場で事故が起きて父とその仲間は死んだが、大和電力から謝罪はなかったという。微々たる口止め料が支払われて事故はもみ消され、病気を患っていた母親も半年後に死んでしまったという。

繁藤寛治の標的は大和電力、そして大和電力と癒着している政府だった。スタジオとイヤホンに爆弾を仕掛けられた折本は、テレビを使ったリアルタイムの世論調査を行い、「水橋総理は謝罪するか」を視聴者に問い、水橋総理に圧力をかけようとする。

ところが、『ショウタイムセブン』の後半では、逆に犯人から折本の収賄疑惑の資料を受け取った安積が折本を追い込む。犯人による世論調査「折本が真実を告白するか」が問いかけられるのだ。

映画『ショウタイムセブン』の前半では、折本が繁藤寛治のテロを利用し安積を押し除けて『ショウタイムセブン』に返り咲き、世論を利用して首相に迫った。だが、後半では折本が繁藤寛治からのタレコミを利用した安積に迫られ、世論調査によって不信任が突きつけられる。

「メディア」の語源は「中間」を意味するラテン語の「medium」だ。権力と世論の狭間に立ち、その力を笠に着ることができてしまうのがメディアの恐ろしいところだ。

『ショウタイムセブン』ラスト ネタバレ解説

犯人の正体は…

映画『ショウタイムセブン』の終盤では、折本が追及をやめた製薬会社から2,000万円の賄賂を受け取っていたかどうかという問題に焦点が当てられる。折本がこの疑惑を否定し、スタジオが爆破される緊張感が高まる中、折本は一つの真実に気がつく。

犯人の繁藤寛治の高校時代の教師として登場し、マイクを爆破され倒れていた城大作が、序盤にスタジオの廊下ですれ違っていた清掃員であることに気がつくのだ。城が特徴的なメガネを落としたことを折本は思い出したのである。

共犯者だった城の芝居がバレて、折本が犯人に人を傷つける意図はないと見破ると、犯人がスタジオに登場。犯人の繁藤寛治を演じていたのは錦戸亮だった。錦戸亮は映画『ショウタイムセブン』公開まで完全に名前が伏せられていたシークレットゲストで、感情的な通話では想像がつかなかった意外なキャストの登場には驚かされた。

また、順番は前後するが、電話で出演する内閣官房危機管理審議官の兼子健祐の声は内山昂輝が演じていた。内山昂輝はアニメ『DEVILMAN crybaby』(2018) の不動明や『呪術廻戦』(2020-) の狗巻棘の声などで知られるが、『ショウタイムセブン』では官僚のキャラクターらしい演技を見せていた。

城の本当の正体は繁藤寛治の父方の祖父で、スタジオの清掃員に就職して繁藤寛治の計画を助けていた。繁藤の職業は爆破作業に従事する発破技師であり、繁藤が作った爆弾を祖父が清掃員としてスタジオに潜入して仕掛けていたのだろう。

折本が語った真実

繁藤と対峙した折本は真実を語ることを決意。実は、折本は6年前の発電所の事故を取材調査しており、遺族である繁藤の母にインタビューを取っていたのだ。折本は“真実”を掴んでいたが、テレビ局のスポンサーである大和電力と、与党自由党から圧力をかけられて情報を握り潰してしまっていた。

そして、折本がその見返りとして手に入れたのが『ショウタイム7』のメインキャスターの座だった。大企業・政府与党・マスメディアという権力の癒着、そしてそれに目を瞑ることによって利益を得た個人……。繁藤がテレビで告発したのはその全てだった。

折本は製薬会社からの賄賂は受け取っていなかった。だが同時に『ショウタイム7』を降ろされたことで戦うのをやめてしまった。折本には確かにジャーナリズムがあったが、それ以上に「大きな舞台でなければ意味がない」という名誉欲のようなものに駆られていただけだったのかもしれない。

折本は犯人の繁藤に謝罪し、繁藤は警察に拘束されるが、折本はその上で正直な気持ちを吐露する。この『ショウタイム7』の2時間が「最高に楽しかった」と言うのだ。折本は、これぞショウタイムであり、テレビの醍醐味だという興奮を味わっていたのである。

ラストの意味は?

そして、視聴者は安全なところにいて、だからこそ楽しめたと、映画を観ている私たちへの指摘にも聞こえる呼びかけが行われる。確かに『ショウタイムセブン』には、悪の権力者、背景を持ったテロリスト、メディアの人間の謝罪と、世間が求めるストーリーが詰まっていた。

だが、折本はこれで引き下がらない。もう一つの権力である世間に最後の“ショウタイム”を仕掛けるのだ。それは、折本がこの先どうすべきかという問いで、選択肢は「LIVE(生)」か「DIE(死)」かだった。「ザ・世論調査」がスタートし、テレビのリモコンを使ったリアルタイムのアンケートが進む。

その結果は画面上に表示されることはなかったが、画面奥のモニターの中で赤いバーに「95」という数字がついているのが見える。つまり、世論の95%は折本の「DIE」を選んだのである。

この結果を受けた折本は、爆弾が仕掛けられていると言われていたイヤモニをつけ直す。そして、繁藤が公安の園田に体当たりをして爆弾のリモコンを落とさせると、それを拾ったのは折本だった。

折本は「私たちは、公正かつ公平な姿勢で真実に迫ります」とカメラに向けて言い放つと、笑顔でスイッチを押したのだった。このスイッチを押したことで何が起きたのかは明確には描かれなかった。普通に考えれば折本がスイッチを押して爆弾が起爆、少なくともイヤモニが爆発して折本が死ぬ姿が全国に中継されたはずだ。

だが、その後に映るのは他局の報道で、そこでは折本が生中継中に流した「大和電力、自由党、NJBは一蓮托生」という発言がスクープとして報じられている。最後の事件はなかったかのようだ。

そんな中、ニュース速報のテロップでは、ロンドンの地下鉄で爆発テロが起きたことが報じられる。ニュースはその件に切り替わり、すぐにPerfumeの新曲「Human Factory – 電造人間 -」が紹介され、そのライブ映像が流れる中で『ショウタイムセブン』は幕を閉じるのだった。このラストはどういう意味なのか、ここから考察していこう。

『ショウタイムセブン』ネタバレ考察&感想

ロンドンのテロとの関係は?

映画『ショウタイムセブン』のラストで報じられたロンドンでの爆発テロとPerfumeのパフォーマンスは、大きな事件があってもテレビはすぐに違う話題に切り替わるということの揶揄だと見るのが真っ直ぐな見方だろう。全世界に人生が中継されていた人物の半生を描いた映画『トゥルーマン・ショー』(1998) も、エンターテインメントの残酷さを暴きながら、最後には視聴者が次の番組を求めるというオチだった。

だが、あのロンドンでのテロと、『ショウタイム7』の最後に折本が押したスイッチは関係しているのでは、と考えた方もいるだろう。折本がスイッチを押してNJBで爆発が起きたとすれば、流石に他局の報道はその事件一色になっていたはずだ。

爆弾は仕掛けられておらず、スイッチを押しても何も起きなかったとも考えられる。だが、それだと犯人の繁藤が園田に体当たりをしてまで爆弾のリモコンを折本に拾わせたことに説明がつかない。スイッチには何らかの仕掛けがあるはずだ。

では、あのスイッチがロンドンの地下鉄につながっていたとして、繁藤の動機はどこにあるのだろうか。実は、『ショウタイムセブン』の中で唯一回収されていない6年前の事件関係者が存在する。それは、6年前のG20で来日していた海外の要人達だ。

G20にはイギリスも参加している。もし繁藤がロンドンに爆弾を仕掛けていたのだとすれば、狙いはイギリスというよりも、国際関係の強化を目的に父に過酷な労働を課した大和電力と日本国政府への復讐だったのかもしれない。ロンドンで日本人によるテロが起きれば、国際関係には亀裂が入るだろう。

一方で、小説版の『ショウタイムセブン』のエピローグでは、このロンドンでの爆発テロは、ある人物の視点から無関係の事件であるように語られている。だが、巻末の渡辺一貴監督のインタビューでは、「ノベライズが唯一の正解ではない、ということです」「読んだ方に想像力を羽ばたかせてもらえたら」と語られている。捉え方は、私たちに委ねられているということである。

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繰り返し観たい凝った構成

いずれにしても、折本が最後に視聴者に投げかけた選択は『ショウタイムセブン』のハイライトだったと言える。冒頭での「犬派? 猫派?」という問いかけから、最後の「生か? 死か?」という問いかけに至るまでの流れは見事だった。

冒頭のラジオスタジオで、折本は無責任に、やれるもんなら爆破してみろと繁藤を煽った。その指示を実行したのが最初の火力発電所での爆発だった。最後に折本は、無責任にこのショウを楽しんでいた視聴者に選択肢を委ねた。そして、テレビリモコンのボタンひとつで行われた無責任な意思表示が現実になることを突きつけたかったのだろう。

最後に繁藤が園田に体当たりをしてリモコンを落とさせたことで、繁藤と折本は真の意味で“共犯”となった。だが、折本はラジオスタジオからの中継の時点で、繁藤が訴える6年前の事故が実際にあったことを知っていたはずだ。

もし繁藤も折本が母を取材していたことを知っていたとすれば、二人は文字通り“ショウ”を繰り広げていたことになる。誰がどの時点で何を考え、何を隠し、何をテレビで見せることにしたのか——この辺りは『ショウタイムセブン』を繰り返し観て楽しめる部分だろう。

終盤の阿部寛演じる折本眞之輔による“逆ジョーカー”とも呼べるショーマンっぷりも見事だった。その一方で、組織と権力の卑劣さそこに抗えない個人の矮小さがより弱い立場にある人々を犠牲にするという社会的なメッセージは、フジテレビが現在のような状況になっている中で、大きな社会的意義を持っていたように思う。

メディアの功罪と、大衆の無責任さと残酷さをも抉り出した『ショウタイムセブン』。私たちがこれをただのエンタメとしてしまわないことが、折本への手向けになるかもしれない(死んでいれば、だが)。

映画『ショウタイムセブン』は2025年2月7日(金) より劇場公開中。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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