ネタバレ考察『ショウタイムセブン』原作との違いと共通点は? 3つのポイントを解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ショウタイムセブン』原作との違いと共通点は? 3つのポイントを解説

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映画『ショウタイムセブン』公開

NHK出身で「岸辺露伴は動かない」実写シリーズを成功に導いた渡辺一貴監督の最新作『ショウタイムセブン』が2025年2月7日(金)より劇場で公開された。『ショウタイムセブン』は2013年に韓国で公開されヒットを記録した『テロ、ライブ』を原作とした映画で、阿部寛を主演に据えた日本リメイク版となっている。

今回は、原作映画『テロ、ライブ』と日本リメイク版の映画『ショウタイムセブン』の共通点と違いについて考察&解説していこう。原作の展開と重ね合わせることで、『ショウタイムセブン』の内容についても理解を深められるだろう。なお、以下の内容は映画『テロ、ライブ』と『ショウタイムセブン』の結末に関する重大なネタバレを含むのでご注意を。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『テロ、ライブ』および『ショウタイムセブン』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『ショウタイムセブン』原作との違いは?

原作へのオマージュと共通点

映画『ショウタイムセブン』の冒頭では、原作の韓国映画『テロ、ライブ』への多大なオマージュが見られた。例えば、阿部寛演じる折本眞之輔が着る橙色のセーターや、スタッフへのセリフや態度などは、原作でのハ・ジョンウが演じた主人公ユン・ヨンファのそれを見事に再現している。

犯人についても、ラジオ番組に電話をかけてきて、建設作業員を名乗り、電気代への不満を語り出すという展開は原作と一致する。主人公が犯人に暴言を吐き、テロが起きたことをきっかけにテレビ業界に返り咲こうと動く点も原作の通りだ。

細かいところで言うと、主人公が口に含んだ液体で口をゆすぐクセも踏襲している。主人公がトイレでテレビプロデューサーに電話をかけるシーンでは、会話を聞いている人がいないかトイレの個室を一つずつチェックする動作も一致している。

ここまで原作と一致していると、『テロ、ライブ』を観たことがある人は、『ショウタイムセブン』も原作と同じように進んでいくと算段をつけることになる。だが、原作の『テロ、ライブ』と『ショウタイムセブン』には三つの大きな違いが存在する。ここからはその三つの違いについて考察していこう。

違い①テレビ番組

『ショウタイムセブン』と原作『テロ、ライブ』の最大の違いは、主人公のキャスターが『ショウタイム7』という報道番組に執着していることだ。だから原作は終始ラジオスタジオの中で進むが、『ショウタイムセブン』では早々に舞台が『ショウタイム7』が放送されているテレビスタジオに移る。

この改変によって、犯人が情報提供を行う相手が他局のキャスターから『ショウタイム7』の現メインキャスター安積征哉に変更され、局内の権力闘争にもスポットライトが当てられる。また、人気テレビ番組を利用したアンケート「ザ・世論調査」も『ショウタイムセブン』オリジナルの要素だ。

違い②アンケート

映画『ショウタイムセブン』の冒頭では、折本がラジオ番組『トピック・トピック』で「あなたは犬派? 猫派?」というアンケートを取る。一方、原作の『テロ、ライブ』では、税制改正についての議論がトピックになっている。後者は最初から政治をテーマにしていたのだ。

だが、『ショウタイムセブン』では「犬派か猫派か」という日本的なほのぼのとしたアンケートが「ザ・世論調査」でエスカレートしていく。「首相は謝罪するか」「折本は真実を話すか」という不信任を突きつけるツールとなり、最後には折本の生死までアンケート=世論で決定することになる。

この改変は、テレビと世論という二大権力を物語に持ち込む上手い改変だった。メタ的に映画を観ている視聴者も、「安全圏から分かりやすい構図の争いを消費すること」について考えさせられる作りになっている。

違い③犯人の“敵”

テレビと世論というテーマが持ち込まれると共に、『ショウタイムセブン』では犯人の“敵”にあたる存在も変更された。原作の『テロ、ライブ』では犯人は2年前の麻浦大橋の工事中に起きた崩落事故への賠償と韓国大統領の謝罪を要請していた。

『テロ、ライブ』では警察庁長官が中継に登場してこれを断固拒否。長官は犯人にイヤモニを爆破されて死んでしまった。結局犯人は事故に巻き込まれた建設労働者ではなくその息子だったのだが、原作では最後まで政府だけが犯人の“敵”として設定されていた。

原作では事故があったのは橋の補修工事という公共事業だったが、『ショウタイムセブン』では電力会社という企業も犯人が責任を問う相手となっている。その上、最後には政府・企業のメディアとの癒着、メディアと世論の関係にまで争点は波及していくのだ。

『ショウタイムセブン』ラストは原作とどう違う?

原作ラストとの最大の違い

こうした改変によって、『ショウタイムセブン』のストーリーは複雑さが増したが、奥行きも生まれた。原作の『テロ、ライブ』では、政府によって主人公のユン・ヨンファもテロリストに指定され、特殊部隊がスタジオに迫る。

スタジオの隣のビルが爆破され、スタジオが入っているビルも崩落する中、ユンは政府の不正の犠牲となった若い犯人に手を差し伸べるが、犯人は政府によって射殺されてしまう。ユンにも部隊が迫る中、ユンは犯人が持っていたスタジオが入っているビルに仕掛けられた爆弾のスイッチを押し、ビルが崩壊していく中で『テロ、ライブ』は幕を閉じる。

『テロ、ライブ』は政府を徹底的に悪役として描いた作品であり、真実を報じようとしたキャスターが犯人の遺志を継ぐ形で一矢報いるという結末だった。一方で、日本でリメイクされた『ショウタイムセブン』では、この流れとは少し違うラストが待っていた。

原作では中継に登場した警察庁長官は本当に殺されてしまったが、『ショウタイムセブン』では中継に登場して殺されたかに思われた犯人の高校時代の教師は生きていた。しかも、高校の教師というのは嘘で、その老人は犯人の祖父であり、今回の事件の共犯者だった。

この展開は原作からの大きな改変ポイントの一つだ。また、原作で橋を爆破した際には犠牲者が出ていたが、リメイク版では犯人は発電所を爆破して電力供給に影響を与えただけだった。この二つの改変によって、犯人は「人を殺す気はなかった」という論が成り立つようになっている。

暴力表現については原作よりも穏やかになったが、『ショウタイムセブン』ではメディアと政府の癒着、世論の残酷さを見せるという方向でバランスを取っていく。折本が視聴者に「平和ボケ」を問いかけるまでの間に死者が出ていなかったという展開も含めて、「視聴者が見たいもの」を見せた上で、「それでいいのか?」と問いかける演出だ。

原作と繋げて見るラスト

『ショウタイムセブン』のラストは、原作と同じく主人公が爆弾のリモコンを手にする。だが、折本は自分の選択ではなく世論に従って爆弾のスイッチを押す。『ショウタイムセブン』のラストが少々難解なのは、折本がスイッチを押したことで爆発が発生したかどうかが明確に描かれていないからだ。

『ショウタイムセブン』では、ボタンを押したが何も起きなかったのかボタンを押してスタジオが爆発したのか、それとも最後のテロップで流れるロンドンでのテロとリンクしているのか、あえて曖昧に描いて終わらせているのだ。

だが、原作『テロ、ライブ』のラストと重ね合わせると、主人公がスイッチを押したのに何も起きなかったとは考えにくい。本作の醍醐味はキャスターである主人公が最終的には犯人に共感し、共犯者となることだからだ。スタジオかロンドン、少なくともどちらかの爆弾があのスイッチで起動したはずだ。

「犯人は誰も傷つける気がなかった」という仮説は、私たち視聴者が心地よくなることを狙った“嘘”であり、劇中の視聴者の投票によって折本が共犯者になったと考えれば腑に落ちる。原作では主人公を追い込んだのは政府だったが、『ショウタイムセブン』では政府・企業・メディア、そして世論が主人公を追い込んだのである。

他にも、原作では主人公の元妻という設定のイ・ジス記者は、『ショウタイムセブン』では井川遥演じる伊藤記者として登場する。原作ではイ・ジス記者は崩落しかける橋に取り残されており、主人公ユンにとって気がかりな要素の一つとして機能している。『ショウタイムセブン』では元夫婦という設定はなくなったようだが、かつて共にキャスターとレポーターとしてスクープを連発したコンビ、故に二人の間には信頼関係があるという設定になっている。

こうした点も含めて、『テロ、ライブ』と『ショウタイムセブン』は違いと共通点を見出していくことで各作品のテーマも浮かび上がってくる。両作とも見返すことで新しい発見があるかもしれない。

映画『ショウタイムセブン』は2025年2月7日(金) より劇場公開中。

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『ショウタイムセブン』ラストの解説・感想・考察はこちらから。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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